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義賊伝  作者: TK
第一章 出会い
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3.そして青年はこの世界の悪を知る

なかなか文を書くというのは難しいものですね。

日も沈み、騒がしかった人々の声も聞こえなくなった夜。

アルトゥールから金貨を受け取った啓志は、食事を済ませ、本日宿泊する予定の宿へと向かっていた。


辺りに人の気配はなく、街灯からの光のみが一定の間隔で夜道を照らしている。

啓志は、明日から生活の拠点となるであろう、ここ王都・アレスパンの街中を下見がてらに、遠回りしながら歩く。


王都の道は石畳になっており、立ち並ぶ建物は、啓志にイギリスの街並みを思い起こさせる。

そんな通りの一角にある、細い路地裏。啓志はその路地裏に違和感を抱く。


「こういう路地裏には決まって何かあるもんだよなぁ…。元の世界じゃよくヤンキーがたむろしてるもんだし。」

そう呟くと啓志は、路地裏へと進み始めた。


しばらく進むと、夜の王都の静寂には似合わない、男たちの話し声が聞こえてきた。


「今日の商品はなかなか上玉らしいじゃねぇか?」


「そうなんですよ旦那ァ。よかったらご覧になってって下せぇ。」

そう言って二人の男は近くの建物の中へと姿を消す。


「これ普通の奴の会話じゃねぇよな…。」

啓志は男達を不審に思い、後を追おうとするが扉は閉められている。


どうしたものか、と周囲を見回してみる。すると啓志の頭上、建物の二階にあたるであろう部分の窓が開いている事に気がつく。


「あそこからしか入れないか…。」

なんとかして二階に上る方法を模索する啓志。その時啓志は近くの木箱に気がつく。


「これで行けるか…?」

啓志は近くにあった木箱を踏み台にし、なんとか二階へとよじ登る。室内に灯りは点いておらず薄暗い。

物音を立てないように一階へと降り、入口から部屋を覗くが男たちの姿はない。

室内にはテーブルや椅子といった家具が置かれているだけ、のように見えるが一箇所壁の色が不自然な部分を発見する。


啓志は壁に近づくと、少し力を入れてその部分を押してみる。すると、壁は内側に開き、その先に隠された階段が姿をあらわした。

ゆっくりと階段を降りて行くと、複数の声が聞こえてくる。

先程の二人の男達の他にも人がいるようだ。

啓志は部屋の入り口に近づき、中の様子を伺う。

その部屋は一階や二階の部屋より数倍広く、中には十五人から二十人程の男女が部屋の中心にあるステージを囲むように立っている。

啓志がその様子に首を傾げていると、一人の男の声が部屋に響く。

「ご来場の紳士淑女の皆さんお待たせいたしました!本日の奴隷市を始めさせていただこうと思います!」


奴隷?啓志は顔を顰める。アルトゥールの話によれば、フォリンド王国では奴隷は禁じられていたはず。

そのことを考えれば、今啓志の眼前で行われていることは、法を無視した紛れもない犯罪行為である。


「ではまず商品No.01、隣国・ベルデン帝国から仕入れたこちらの少女!親に売られてこのような境遇に!あぁなんと嘆かわしいことでしょうか!」

オヨヨと呟きながら、男はハンカチで涙を拭う仕草を見せる。その姿はいかにもわざとらしく、啓志は自らの怒りが徐々に高まっていくのを感じる。


「この少女!言われたことならなんでもやります!掃除洗濯からあなたの夜のお供まで!えぇ、なんでもね。さぁ皆様!この少女お値段50G(ゴールド)から!さぁ張った張った!」

男が言葉を終えるの皮切りに、客たちは我先にと手挙げ金額を口に出す。やがて争いも下火なるなか、司会の男は最後に金額を言い終えた男を指差すと大声で終了を告げる。


「はい17番さんの270G以上でお買い上げの方はいらっしゃいませんね?では、17番さん270Gでお買い上げです!」

部屋の中は拍手に包まれる。

その拍手の中、啓志は静かに部屋へ足を踏み入れると、客を押しのけ司会の男へと近づいていく。


「さぁ次の商品のご紹介に…なんだね君は?」


男が次の商品の説明に入ろうとした時、啓志は男の目の前へと歩み寄る。


「おい、お前何やってんだよ?」と啓志は告げる。

「何って…奴隷売買だが?見て分からんのかね。」と男は言う。

「ふざけんじゃねぇよ!この国じゃ奴隷は禁止されてんだろうがよ!」啓志は男を睨み怒鳴りつける。

「はぁ…分からんかね君。バレなければ犯罪ではないのだよ。」男はにやりと笑みを浮かべながら言う。


その瞬間、啓志の怒りは限界に達した。


渾身の右ストレートを男の頬に叩き込む。

ふぎぃ!と奇妙な呻き声を上げながら、男は床を転がる。


「な、なんだこの男は?!」


「早くこの野蛮な男を何とかしてよ!」

客はざわめき出し、数人の女が悲鳴を上げる。


「申し訳ございません皆様!すぐにこの騒ぎを収めますので…。おい!お前たちな、何をやっている!早くその男を捕まえて叩きのめせ!」

殴られた男は頬を押さえながら叫ぶ。

その声を聞き、司会の男の後ろから、手に角材を持った七人の男が現れる。

その中の一人が啓志に殴りかかる。


啓志は男の拳を上体を反らして避けると、一歩踏み込んだ状態で男の胸倉を掴み、

「邪魔すんじゃねぇ!」と叫びながら男の顔面に頭突きを入れる。

鼻血を吹き出しながら倒れる男を投げ捨てながら、次々に襲ってくる男を薙ぎ倒す。


七人目の男に回し蹴りをお見舞いした所で啓志は他に襲ってくる人間がいないことに気がつく。


「はぁ…はぁ…。」

客たちは既に逃げてしまったようで、司会の男が慌てふためいている姿だけが目に入る。

啓志は荒げた息を落ち着かせながら男に近づく。

司会の男はひぃ、っと小さく悲鳴を上げると啓志に向かって叫ぶ。


「か、金か?!いくら欲しい?た、頼むから命だけは…!」


「金?そんな物はいらねぇうよ。」


「なっ?!」


「その代わりここにいる奴隷を今すぐ解放しろ!」


「わ、分かった。だ、だから少し待ってくれ!」と男は目に涙を浮かべながら答える。

啓志はさっさと行け、とばかりに男を蹴り飛ばそうとした時、啓志の頭に鈍い痛みが走った。

啓志は痛みに耐え切れず、その場に倒れる。

倒れ行く中、啓志が目にしたのは、先程倒したと思っていた、手に角材を持った男の一人だった。


「畜生が…。不意打ちなんて卑怯じゃねぇか…。」

啓志は薄れ行く意識の中、自らを殴った人物を睨みつけることしかできなかった。




俺は冷水を顔に叩きつけられて目を覚ました。

思うように手足が動かせない。目をやれば両の手足は縄でガチガチに縛られている。

どうやら椅子に縛り付けられて動きを封じられているようだ。


今、俺の目の前には男が二人いる。さっきまで司会をしていた男と俺の頭を殴りつけた男だ。

司会の男の顔には怒りの表情が浮かんでおり、手には俺の頭を殴りつけた角材が握られている。


司会の男は俺に近づくと、ありったけの力で俺の顔面に角材を叩きつける。

何度も何度も何度も何度も。

こいつは恐らく満足したんだろう。司会の男は角材を放り捨てると、傍に立っていたもう一人の男に俺を殺せと言っている。

男は先程までとは違い、手に剣を握っている。

男は俺の横に立ち、首元に刃を合わせると頭の上まで持ち上げる。。

俺は死を覚悟し目を瞑る。まさか転生して1日目でまた命を失うなんてと心の中で嘆きながら。

そうして男は剣を振り下ろす。


しかし、振り下ろされたはずの剣は、俺の首へと届くことはなくカランと音を立て地面に転がる。

そして数秒遅れてさっきまで俺を殺そうとしていた男が床へと倒れた。

首元を見ると矢が突き刺さっており、そこから流れ出る血が床を真っ赤に染め、俺の足元まで流れて来た。


その直後、部屋の外から叫び声が聞こえた。


「全員突入!捕まっている奴隷達の保護を最優先に!抵抗する奴は殺しても構わん!」

声と共に複数の足音が聞こえ、身軽そうな服装に胴当てを付けた男たちが走って来た。部屋の中に入ってくる男たちはそれぞれが武装していて、一人が司会の男を取り押さえると、残り男達はステージの奥へと進んでいく。


その姿を見ていた俺の元へ見覚えのある影が近づいて来た。

そして、俺の手足の縄を外し、顔を覗き込んできた。その顔は俺の知っている顔だった。

恐らく俺も彼と同じくらい驚いた顔をしていただろう。

俺は驚きのあまり、今まで少しも出さなかった声をついに漏らす。


「ア…アル…?なんでお前がこんな所にいるんだよ…?!」

少しは進展したと思います。

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