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義賊伝  作者: TK
第一章 出会い
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2.そして青年はこの世界を知る

 啓志が緊張を解き、構えていた剣を下ろしかけたその時、上から一人の少年とも少女とも見えるような、中性的でとても整った顔立ちをした若者が飛び降りてきた。


「な、なんだお前?!」

そう叫ぶ啓志に対し、若者は一言「ついてきて!」と小さく綺麗な声で告げると歩き始めた。

啓志は若者が味方かどうか判断しかねたが、先程兵士を攻撃した所を見ると、どうやら敵ではないみたいだ。啓志はそう思い、彼女について行く事にしたのであった。

 啓志は森を進む中で、何度かこちらを探しているのであろう王国兵を遠巻きに見ることはあったが、幸い気づかれることもなく、啓志と若者の二人は無事森を抜けることができたのであった。

先頭を走る彼女の後ろに続いていた啓志。彼女が急に立ち止まったことで思わず啓志はよろけそうになる。しばらくふらつきながらも、バランスを取り戻した啓志が顔を上げると、目の前には視界全体に広がる大草原。啓志はその光景に感嘆の声を漏らしていると、隣に立つ若者が口を開いた。


「ここはアレス大草原っていうんだ。さっきまで僕たちがいたのがタゴ大森林。」

その声は少し女性的で、啓志はこの若者は女性なのだろうと考える。


「親切に教えてくれてありがとな。あとさっき助けてくれて。」そう言って頭を下げながら言葉を続ける。


「俺の名前は花木啓志ってんだ。アンタみたいに綺麗な女は初めて見たよ。」

啓志の言葉を聞いて、若者は目を丸くする。そして数秒の沈黙の後に盛大に吹き出して笑い始めた。


「あっはははは!」

その笑い声に今度は啓志が目を丸くするのであった。


「何か可笑しな事言ったか?」


「ごめんね、だって僕男の子だよ?」

その言葉に再び啓志は目を丸くした。


「僕の名前はアルトゥール。みんなからはアルって呼ばれてる。君の事はケージって呼べばいいのかな?よろしく!ケージ!」

一方的なアルトゥールの言葉に、驚きで上手く言葉が返せない啓志であった。


「お、おう。よろしく。」



その後、啓志はアルトゥールと名乗る少年に、とりあえず自分が違う世界から来たことを隠し、自分が森の中で目を覚ましたこと、この世界についての知識・常識がないことを説明し、ある程度の知識を手に入れていた。

ここはシェルジン大陸南東部に存在するフォリンド王国であること。

この国の北西にコテンボルグ教国、南西にベルデン帝国が存在すること。

この国では庶民に姓は無く、貴族と王族にしか許されないことなど。

この世界には戦技と呼ばれる特殊な技や魔術・妖精魔術といった魔法の類が存在することなど。

地理から始まり、この国の制度や文明レベルに至るまで、様々な知識をアルトゥールは教えてくれた。


一通りの情報を聞き、啓志はこれからの事を考える。

行く宛てもない以上、まずは街へ向かい、とりあえずの食事なり寝床なりを確保するべきだろうと啓志は考える。

アルトゥールの話しによると、ここから一番近い街は王都・アレスパンだという。

(とりあえずアレスパンを目指すか…。)

啓志は心の中でそう決めると、その旨をアルトゥールへと伝える。


「じゃあ俺、アレスパンを目指すことにするわ。さっきはありがとな。」


「待って、ケージ!アレスパンなら僕もこれから向かうとこなんだ!一緒にどう?」

思わぬアルトゥールの誘いに、啓志は断る理由もないのでアルトゥールと行動を共にすることにした。


「じゃあよろしく頼むわ、アル。」


幸い王都まではそう遠くなかった。日が傾き始める頃には、二人の前に王都アレスパン西検問所が見えてくる。


「あれが検問所だよ。ケージの服装がどう見られるかはわかんないけど、多分大丈夫だと思うよ。」

それにしても見たことない服装だなぁ、とアルトゥールは啓志を見る。

啓志は元の世界で着ていたままの学ランの姿である。今までのこの世界の人々の服装を見るに、自分の服装は珍しい物であることは明らかだろう。


そうして二人で歩いているうちに、検問所へと到着する。

検問所の兵士も、啓志の服装を珍しいと呟きながら観察するが、特に問題もなく二人は王都への門を潜る。


そこに広がる光景に、啓志は息を呑む。


王都アルスパンは多くの人々で賑わっていた。

大通りには多くの店が立ち並んでおり、多くの食材や武器、本から服といった幅広い商品を取り扱っている。

様々な店からは商品を買わせようと勧める声、値引き交渉をする声などの多くの声が聞こえてくる。

啓志がその賑わいに目を輝かせていると、隣に立つアルトゥールが話し出す。


「王都は毎日こんな感じさ。庶民や冒険者で溢れてる。」

と言うと、ふと何かを思い出したかのようにポケットから何かを取り出し、啓志に差し出す。


「はいこれ。少ないけど、お金が無いと何もできないでしょ?」

差し出された物を受け取る。それは何やら人の顔が彫られた金貨だった。


「いくら俺が金を持ってないって言っても、こんなに貰っちまっていいのか?1G(ゴールド)って言えば、この世界じゃ中々の大金だろ?」


この世界では金貨(G)(ゴールド)、銀貨(S)(シルバー)、銅貨(C)(カッパー)の三種類の硬貨が存在する。

1G=100S、1S=100Cである。

そのため、今啓志が受け取った1Gというのはそこそこの大金である。


「大丈夫だよ。僕こう見えてそこそこ金銭に余裕はあるから。」

にこっと微笑むアルトゥールの姿は誰が見ても少女そのものであった。


「ごめんケージ。僕はどうしても外せない用事があるからここでお別れしなきゃ…。またどこかで会えるといいね。」

そう言い残してアルトゥールは人混みの中へと消えていった。


一人になった啓志はこれからの事を考える。


「とりあえず貰った金で当面の食事と宿はなんとかなるだろう。問題はどうやって金を維持するか。明日からは仕事を探す必要があるな。」

などと考えていた時、ぐーっと腹の虫が鳴った。


「一先ずどこか食事を取れる場所を探そう…。」

そう言うと啓志は人混みの中を歩き始めるのであった。

進むのが遅いとは思いますが、どうかお付き合い下さいませ。

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