69.テンプレ的展開とマリンの切り札
いつもお世話になりますアリス工房(仮)です
獣王ガディウス・ギルベルト!
百獣の王ライオンの雰囲気そのままの出で立ち、歴戦の修羅場をくぐり抜けてきたであろうその覇気は王そのもの。分厚い胸板に太い二の腕、多少なりとも人間味ある顔つきだが眼光鋭い目つきが俺達を一別する。
横に控えているのは英雄騎士ゼラード・ガルム!
獣王の右腕と呼ばれるこの男は獅子そのもの。王に負けず劣らず屈強な体躯もさることながら優に二メートルはあろう身長が更なる強さを語る。
「本日は女王ゲネス・ロゼッタの銘により此方の書状を持って参りました」
恭しく畏まった台詞を述べ近くにいる騎士に書状を渡すとそのまま王ではなく英雄騎士に手渡される。
書状を読む目が厳しい。その時間は数分足らずなのに、何時間もたっている気がするぐらい空気は重苦しい。
「ふむ、そなたらは魔族との戦いにおいて我ら獣王国と連合軍を率いて戦うための協定を結ぶべく参ったと言う事で宜しいか?」
レイチェルさんが静かに頷いたのを確認すると厳しい表情を崩さず話を続ける。
「エルフ国の申し入れは大変ありがたいことではあるが、現状魔族相手に我が国はさして苦戦を強いられて居らぬ。この協定を結ぶことにより我が国にどの様なメリットがあるのかお聞きしたい」
やはり、言葉こそやわらかく言っているがエルフと組むつもりは毛頭ない感じが英雄騎士からヒシヒシと伝わってくる。
ここで、レイチェルさんが先の移動要塞の驚異とそれを迎撃できる戦力がある術を説明した。勿論、俺達の事は伏せての内容だ。
「なるほど。魔族はその様な兵器を持ち出してきたか…………では、何故?エルフ国はそれを撃退できる装備があるにも関わらず我が国と協定を結ぼうとする」
「それは、今のままでは魔族軍と対等に戦えないからであります。エルフ国は魔導に優れた人種でありますが近接戦闘に至ってはあなた方には引けを取る。魔族との戦いは遠距離からの攻撃だけでは倒せません」
「そなたは、人族ではないか?何故エルフ族に肩入れする?」
俺の言葉を聞いていた英雄騎士が疑問に思って質問する。
「私は魔族を倒すべくこの大陸にやって参りました。ですが、私一人ではとてもかないません。そこで両国へ協力を煽るべくエルフ国へ訪れ今に至ります」
英雄騎士に何やら耳打ちする男がいる。その言葉を聞くと驚きの表情で此方を見据える。
「ナツメ殿と申したな。そなたらはマリン商会の者では無かろうか?」
「はい。私と後ろにいる仲間は全員マリン商会所属です。それからこちらは…………」
俺が紹介しようとしたらマリンさんに言葉を止められる。
「私の紹介はもう少しまって下さい」
未だ深く被られるフードからは顔色が見えない。
今まで俺達の話し合いを静かに聞いていた獣人国の王が威厳たっぷりの仕草で玉座から立ち上がり口を開く。
「魔族共ごときワシ自ら赴けば容易く葬れる。エルフ国の力など借りずとも問題ない。そもそもワシ等は誇り高き獣人族!何者をも恐れぬ気高き種族よ相手が誰であろうと討ち滅ぼすのみぞ」
高らかに笑う獣王を前に小さく溜息を吐く。王様自ら脳筋かよ………これは説得に骨が折れそうだ。そんな考えをしているとついにあの御方が仰っていた切り札が満を持して発動される。
「その様な言葉を発するからこの国は衰退するのです。王はもっと周りをご覧になって下さい。我々だけの力では魔族に勝利するのは不可能です。あなたは何故それが解らないのですか?」
立ち上がったマリンさんが獣王に向かって叫ぶ。
部屋の中は凍り付いたかのように静まりかえる。笑っていた獣王も発言者を威圧たっぷりの眼差しで睨みつける。ふと我に返った騎士団の隊長らしき男が激昂して剣を抜き去り向かってくる。
「貴様!こともあろうに獣王様に向かって何という口の聞き方」
一瞬にして間合いを詰め振り下ろされた剣劇は………マリンさんに届かない。とっさの反応を見せたユーリが誰よりも早く最強の盾を召還しそれを受け止める。
「マリンさんには指一本触れさせません」
立ち塞がったユーリは力任せに押し返すとあっけなく吹き飛ばされた騎士は勢いそのままに激しく壁に激突し昏倒する。
「ほう、中々やるではないか人族の女。次は私がお相手致そう」
大剣を抜き去り静かに近づく英雄騎士。
「やめなさいガディウス!王の御前であります。これ以上は私が認めません」
マリンさんはフードを脱ぎ去り自分の姿をさらけ出すと力強い言葉が王の間に響きわたる。
その姿を見た騎士王は顔を青ざめ剣を床に置きすぐさまひれ伏す。
「マ、マーリン王女!何故貴方様がエルフ族達と……」
んっ……………………………王女?
(((えーーーーーーーー!)))
(ナ、ナツメ君!今あの人、王女って言ったわよね?)
(私もそう聞こえました。マリンさんに向かって確かに王女って言いました)
(マリンさんの切り札ってこれのことだったのか)
かろうじて念話で話せたのは成長したのでは無かろうか。危うく声に出てしまう所であった。二人のエルフ騎士に至っては目まぐるしい状況を目の当たりにして完全に石化している。そんな中、一人平然としている天使を目で捕らえる。
(おいるるえもん!お前、何時から知っていた)
(……………)
吹けもしない口笛をフーフーさせながら明後日の方向を向く。
(そうね、今回ばかりは聞かせて頂戴)
おねいさん必殺の超至近距離圧迫質問の前にあっさりと陥落するちょろいさん。
(も、ももうし訳ありません。マリン様から堅く口止めさせられたおりました)
(お前は最初から分かっていたんだな?)
涙目全開でブンブン頷きながら肯定する天使さん。
この野郎!せめて俺だけでも教えてくれればもう少しオブラートに話は進められていたのでは。そんな思いとは裏腹に話は国家間の話し合いから親子喧嘩に発展する。と言うかマリンさん改めマーリン王女の一方的とも言える言葉の波状攻撃を受けた獣人国の獣王と呼ばれたガディウス・ギルベルトはサンドバックの如く打ちのめされれ憔悴していく。
「……………だから私は嫌になって城を出たのです。なのにお父様は全く考えを改めません!」
「だがマーリンよ。ワシにも大義名分がーーー」
「ーーーはぁ!今何と仰いました。お母様はこのことについて………」
汚物を見る目で一蹴するマーリン王女。その出で立ちは獣王の覇気を遥かに凌駕し今尚拡大している。
完全に置いてきぼりをくらった俺達はしばらくの間、王女様のお叱りを聞かされる羽目になった。途中から巻き沿いを貰った英雄騎士並びに何故か?俺まで今までの無茶ブリを指摘され気が付けば三人がそれぞれ正座させられてのお説教タイム!他のメンバーは取り敢えず別室にて今後の話し合いを進める為移動するのであった………理不尽すぎやしませんか?
ーーお説教タイムから数刻後!
「ごほん!では正式にエルフ国の申し入れを受ける事を此処に約束致します。細かな協定につきましてエルフ国に伺うので女王へお伝え下さい」
先程の威厳はどこへやら、憔悴しきった英雄騎士様はゲッソリとしながら職務を遂行する。因みに、先程劇昂して剣を振るった隊長さんはユーリの前で土下座しながら謝った。このまま自害しようとした所を他の部隊の隊長が必死に止めに入り事なきを得た。
そして話し合いも一段落した後、応接室にて軽い談笑をしていると俺達は再び王の間へ召還される。
目の前には大変お美しい姿の王女様が俺達の前に現れる。 薄いピンク色の煌びやかなドレスは彼女が国の王女だといわしめる確かな風格が見られる。
「お顔を挙げて下さい。何時も通りの接し方で構いません」
「ですが、知らなかったと言え一国の王女様に対して数々の非礼。何と申し上げたら良いのやら」
「その様な言葉遣いナツメさんらしくありませんよ。私は獣人国王女の前に、マリン商会の代表取締役です」
ニッコリと微笑むその姿は初めて出会った時の愛くるしいネコミミがチャームポイントなマリンさんそのままであった。
「此度は我が娘が大変世話になったと聞いておる。これは国の王としてではなく一人娘の父であるワシからの言葉だ」
王からの一礼に恐縮する中、獣王は新たな申し入れをする。
「時にそなたの名は何と申す」
目線の先にいる内のお子さまがビクっとしながら見つめている。
「……ユ、ユーリと申します」
「ユーリ殿か。そなたは小さき体にそぐわぬ力を秘めている。先程打ち倒した騎士は我が軍が誇る屈強な戦士。たった一撃で倒した力是非ワシと勝負しては貰えないだろうか?」
その発言にギロリと睨みつける王女様………怖いです。
「ハハハ、冗談だマーリン。そんな目で睨まないでくれ」
王女様相手にさすがの獣王も形無しである。
「ナツメさん。母が是非貴方に会いたいと言っているのですが一緒に来ては貰えませんか?」
「ええ、かまいません。皆も良いよな?」
快く頷いたのを確認すると侍女を引き連れ王妃がいる場所へ案内される。
王の寝室へ案内された俺達はその豪華さと広さに圧巻された。高そうな調度品が飾られ床は大理石が敷かれている。天蓋付きの寝台には気品に溢れる女性の姿が見て取れる。獣人国王妃セニア・ギルベルト!その姿は大人なネコミミさん。容姿はマリンさんのお母さんだけあって大変お美しい。ただ、閉じられた目が王妃が何らかの病に冒されているのを印象づける。
マリンさんの話によれば彼女を生んだ当初から原因不明の病にかかり、今尚病床に伏せている。これは俺の考えだが恐らくマリンさんが城を抜け出し商業ギルドへ名前を変えてまで潜り込んだのは王妃の病を治す薬や道具、魔法技術を探していたのでは無かろうか?彼女の性格からして獣王に愛想が尽きたから家出したと世間はいっているがどうやら違うらしい。
「あなた方がマーリンが手紙で言っていた方達ね、皆さん綺麗な魔力を感じるわ。このような場所からですが今後とも娘をお願いします」
深々とお辞儀する姿は一国の王妃と言うよりは、娘を思う母の姿が思わせる。
「お顔をお上げ下さい王妃様。私たちはマリンさん。いえ、マーリン王女のお陰でここまで来ることが出来ました。偏に王女様の人柄があってこそだと思います。今後とも私達は良き友人となり力になることお約束致します」
「そうなのです。マリンさんは出来る女性なのです」
「み、皆さん………ありがとうございます」
「良い友人に恵まれましたね」
「……はい」
涙を浮かべながら答える王女の姿は、普段のマリンさんそのものであった。
「お母様。体調の方は如何ですか?」
「あなたがくれた回復ポーションのお陰様で普段よりも調子が良いわ」
「それは良かったです。ですが、回復ポーションを持ってしても目のご病気は治りませんか……」
ヒドく落ち込んだ表情は落胆の色を隠せないでいる。
「ナツメ君。王妃様のご病気何とかならないかしら?いつもの不思議パワーで……ねっ」
「そうなのです。ナツメさんのお仲間さんは病気を直せませんか?」
「二人とも期待してくれるとこ申し訳ないが流石に俺の仲間もそこまで万能ではないぞ。一応ダメもとで聞いては見るが期待しないでくれ」
「そうですか、残念です」
ショボクレてしまうお子さまを必死に宥めていると横から願ってもない言葉が発せられる。
「あの〜……あるにはあるのですが………」
小さく挙手をしながら申し訳無さそうにする姿はらしいと言えばらしい。先程のおねいさん必殺!至近距離尋問のダメージが未だ抜けていないのか。
「ーールルベル君!詳しく聞かせて貰おうか!」
華奢な体をがっちりとホールドした俺は、イスに座らせ取り敢えず彼女の好物?どら焼きをありったけ召還させた。全員が見守る中、彼女の出した答えがこれまたメンドクサい事この上ない話になるのだとはこの時の俺は未だ知る由も無かった。
紅騎士団結成です!エルフ族と獣人族の狭間で奮闘します。
皆様の暇つぶしに少しでもなれれば幸いです
それではまた次回




