61.王都ベルティーユ
いつもお世話になりますアリス工房(仮)です
王都ベルティーユ!先代の国王ベルティーユ・ロゼッタの名がそのまま名前になった都市。町の中心部にはロゼッタ城が君臨する。エルフ国最大の都市である。
都の外側が商業地区になっていて、内壁を挟んで住民地区になり城壁の内側がロゼッタ城となっている。東西南北に門から通ずる大きな道があり、すべての道が城に繋がっている。
城全体が大地より高く作られていて周囲は濠に囲まれている為、跳ね橋を渡らないと城に入れない作りになっている。濠の深さも五メートル程あり水が流れている為、進入も用意ではない。城壁の四つ角には見張り塔が設置され常に監視の眼を光らせている。
騎士団に連れられた俺達はそのまま城内を案内され現在は応接室のような場所に通された。部屋の広さは優に三十人は座れるであろう大きさで中央にテーブルが設置されていて周りを椅子が囲っている場所だ。予め城のメイドさんらしきエルフの女性に席を勧められた。しばらく待っていると部屋に入ってくる二人のエルフとリムルが姿を現し上座へ座った。
正面に見据えて左から、騎士団長のユリシーズさん。中央に宰相のリゲル・ロゼッタさん。この人は女王の叔父にあたる人だ。最後にリムルの三人だ。後ろにはメイドさんらしき女性が控えている。
簡単な自己紹介とここに呼ばれた経緯をユリシーズさんから説明を受けた。
「そうですか。レイチェルさんの紹介ですか………」
「それだけでは無い。此方の勇者殿のたっての希望で迎え入れた」
頷きながら腕を組んでドヤ顔の勇者さん。
「私達にお話とはどの様なご用件でしょうか?」
「単刀直入に言おう。君達の力が欲しい!」
まどろっこしい搦手では無く随分とストレートに来たな。その方が話が進めやすい。
「勇者殿!それは、行き成りすぎやしませんか?部下が彼達の戦いを見たとは言え、一概に判断しかねますぞ」
団長さんが話しに割り込む。
「彼らでは力不足だと」
鋭い目つきで睨むリムルさん。魔力がダダ漏れですよ。
勇者の覇気に気圧されながらも言い返す団長様は健気です。
「ですが、この目で確かめないと納得できないです」
尚も二人の言い合いが続く中、念話での声が聞こえる。
(話がおかしな方向に向かっている様な気がするけど、ナツメ君はどうするつもり?)
(ある程度は成り行きに任せますが、先陣切って戦うつもりは今の所ありません。それに、肝心な話が未だ聞けていないので考えるのはその後ですね)
(魔族に負けた理由ね)
おねいさんを見つめ頷く。
「でしたら、模擬戦など如何でしょうか?」
俺の提案にあっさり了承するお二人さん。先ほどからずっと黙っていた宰相が口を挟む。
「模擬戦は構わないが本当にこの人族は使えるのか?魔族相手にそこそこの強さに意味は無いぞ」
「おもしろい挑発ですね。人族はエルフ族よりも劣ると………良いでしょう。見せて差し上げますよ人族の力を」
(ちょっ、ナツメ君!)
(すみません。挑発と解っていたのですが、イラッとしました。)
(んもう!どうするのよ)
(取りあえずブチのめします)
ニッコリ答えると、口を尖らせるおねいさん。美人が台無しですよ。
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城内にある訓練所へ案内された。サッカー場位の広さがあるエリアでは騎士達が訓練に勤しんでいる。団長が訓練中の騎士達に模擬戦の話をするといの一番に手を挙げた守衛部隊の男が俺の相手のようだ。
お互いが中央に対峙する。今回は周囲に魔力障壁を張って貰う。
エルフにしてはガタイの良い男は大型の盾を身構える。プレートアーマーに身を包み右手にはモーニングスターを装備している。外野ではお子さまが大型の盾を見て感激している。
「うわぁ~、おっきな盾です」
「ナツメ君。程々にしてね」
「解ってます。圧勝しますから見てて下さい」
俺の発言に気分を害した男は青筋を立てながら話す。
「小僧!対した自信だな。守衛部隊のーーー」
「ーーーああ、名乗らなくて良いですよ。すぐに終わりますから」
さっきの宰相の挑発がまだ利いてるな。怒りが修まらん。
激高した男は突進してくる中、俺はアイテムウインドウからパワードスーツを装備する。
(マスターお呼びですか?)
「ああ、目の前の騎士を完膚無きまでに叩き潰す」
(了解しました)
戦いはあっけなく終わった…………と言うかユリシーズさんが大声で中止を宣言した。
それは何故かと言うと、ちまたで噂される紅い騎士が現れたからである。獣人族での戦闘はエルフ国でも話題になっている。又、先の戦闘に乱入した紅い騎士が勇者と並んで無双を繰り広げていたのを団長並びに戦闘に参加した騎士団の一部に見られていたのが原因だろう。守衛部隊の男は面識が無いのか戦う素振りを見せていたが、仲間の騎士に全力で止められていた。
「あなたも人が悪いです。紅の騎士殿だと何故最初に言ってくれなかったのですか?」
「実力を見せるのに、一番良い方法だと思ったからです」
紅い騎士の噂話はこの国に来てからも町の人から良く聞いた。今回はそれを利用する形が手っ取り早く済む方法だと思い行動した。決して安い挑発に乗ったんじゃ無いんだからね!
「やはりナツメ殿が噂の紅い騎士!是非私と手合わせ願いたい」
愛用の武器を片手に訓練場に降りてくるリムル。
「ヤメてくだされリムル殿。お二人が戦ったら、魔力障壁だけでは心許ないです」
必死に懇願する団長さんの態度に先ほどの守衛部隊の人も青ざめている。
「先ずはもう一度、話し合いの場を設けさせて下さい」
団長の一言で再び移動するのであった。
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場所を移し先ほどの応接室へ案内されるのかと思ったら、一際煌びやかな造りの部屋へ案内された。席も先ほどと替わって上座に通され上質なお茶まで出された。話し合いばかりでお腹が空いたお子さまに気が付いたメイドさんは食堂へ連れて行く。念のため、もの凄く食べるので気を付けてとアドバイスしておいた。
話し合いの口火を切ったのはユリシーズさん。
「ナツメ殿は我軍に加勢して頂けると言うことですか?」
「これでも私どもは獣人側の商人です。表だっての加勢は今の所考えておりません」
「そう言えばそうであったな。ナツメ殿の店ではどの様な商品を取り扱っているのですか?」
「マリン商会をご存じですか?」
「マ、マリン商会!」
驚いた表情を見せる宰相は言葉を続ける。
「攻撃アイテムや回復ポーションを販売している商会ですよね?」
偉そうな態度から一変して、急に敬語になる宰相さん。先ほどのデモンストレーションが余程利いたのだろうか。
「そのマリン商会です」
「成る程。紅の騎士殿が所属するのも頷ける。エルフ国でも有名ですぞ、最新鋭のアイテムが戦場を大きく変えたと………」
宰相さんの話では、アイテム各種を売って貰おうと獣人国へ赴いたのだが獣人側で反対意見が出され購入出来なかった。輸出云々の話は国の情勢も絡んでくるのでマリンさんに丸投げしておこう。一応、紹介状は書いておくことにした。
「ありがとうございます。紹介状だけでも十分です」
「一応、サンプルとしてアイテム各種を提供します。使ってみて不備等ございましたら言って下さい」
そう言って、アイテムウインドから十個ほど提供した。受け取った宰相さんからは大変感謝された。
「お伺いしたいことがあるのですが宜しいですか?」
ようやく本題に入れる。俺達が最も聞きたい話だ。
「私どもの解る範囲であればお答えします」
「魔族を相手にする騎士団方の戦いぶりを拝見させて頂きました。どうも引っかかる噂話を町中で聞きましてそのことについてお聞きしたい所存です」
一応、面目を保つために遠回しな言い方をした。
「そうですね、協力して頂く以上お答えしなければなりません。この問題はエルフ国存続の鍵になる話です」
説明は団長のユリシーズさんがしてくれる。
掻い摘んで話すと、魔族軍に圧勝したエルフ国は相手本体に突入すべく将軍ロメス・ロゼッタ率いる大部隊が進軍した所で事件は起きた。魔族軍の魔導兵器による攻撃で部隊は壊滅的打撃を受け敗走。ロメス将軍も無念の戦死を遂げた。部隊の八割が壊滅した中逃げ帰った騎士の話を聞くと、たった一発の魔導砲による攻撃だと言うことだ。
沈痛な趣で話が終わると周囲は静まりかえる。流石の勇者リムルも考え込む様な素振りで眉間にシワをよせ腕を組んでいる。隣を見ると青ざめた表情のルルベルが視界に入る。
(どうした顔色が悪いぞ?)
俺の念話にニッコリ笑って平静を装う素振りを見せるがその表情は変わらない。
「その魔導兵器はコロコロ虫に似た形をしていませんでしたか?」
コロコロ虫、何ですかその可愛らしい名前の虫は?おねいさんに聞いたら図解付きで説明してくれた。ああ、ダンゴ虫ね。指で触ると丸くなる奴。
ルルベルの質問に静かに頷くユリシーズさん。
「………移動要塞フーレ」
ポツリと漏らした言葉を聞いたおねいさんが声をあげる。
「移動要塞って言ったら聖魔戦争時代に使われたロストテクノロジーよ。魔族はそんな物を持ち出してきたと言うわけ?」
移動要塞フーレ!
形こそダンゴ虫見たいな姿をしているが恐ろしいのは搭載された魔導砲にある。その射程距離は直線距離にして約三十キロにも及ぶ。過去の戦争にも持ち出されたこの兵器は神族、竜族に多大なダメージを与えた。
(ナツメ君。バスターライフルの射程はどのくらいかしら?)
(出力のピークは二十キロが限界です。ユーリが使えばもう少し射程は延びますがそれでも同じくらいです。打ち合うのは危険すぎます)
全員が黙り込む中、俺は一つの提案を話す。それが、これから行われる移動要塞フーレ攻略作戦の始まりであった。
サラリーマンは移動要塞攻略に奮闘します。
皆様の暇つぶしに少しでも慣れれば幸いです
それではまた次回




