60.勇者の契約
いつもお世話になりますアリス工房(仮)です
運命なのか、成り行きなのか俺達は騎士団に取り囲まれる形で中央に位置する輸送用馬車に乗せられ王都へ向かう事になった。
旅路事態は特に問題もなく順調そのものである。道中あまりにも暇なので、陰で色々根回しをしていたであろう天使さんを念話にて問いつめた。勿論、逃げ出さないようにガッチリホールドしての正当な会話だ!
何でもエルフ国で勇者召還の儀が行われた事をとある筋から情報を得た天使さんは、これまた何処で仕入れたのか俺と面識がある人物が召還された事を聞き、俺の素性がバレるのを未然に防ぐ手段として深夜に部屋を抜けだし上司を通して勇者とコンタクトを取った。
リムルには交換条件としてこの世界での生活の保障と元の世界へ帰る手段がある!をエサに契約した云々を説明してくれた。
馬車に乗る前に自己紹介をお互いした時は内のお子さまバリのダイコン演技に精神ポイントがバシバシ刈り取られる。勘の鋭いおねいさんにジト目で睨まれた時は寿命が縮まる思いをした。あいつ(勇者)は演技の才能がなさすぎる。
リムルが何処まで俺について知っているのか?後でそれとなく確認はしておきたい。それによって、今後の対応も考えなくてはならない。それから、リムルが消えたことによる別世界の影響何かも会社に報告と調査をしてもらわなきゃならない。非常にメンドーだが、場合によっては二つの世界が危機的状況に陥る恐れもある。慎重に行動せねばならないと思うのであった。
「まあその、何だ。色々と動いてくれた様だし今回は助かったよ」
ルルベルの頭を優しく撫でてあげると、目を糸のように細めながら呟いている。
「ついにあの……ナ、ナツメさ…さんがデレました」
ヒドい言われようだが今回は多めに見てやろう。ついでに大好物?に認定される例の物(どら焼き)も渡しといた。
王都までの道のりは大分近づいているが後一泊ほど野営をしないと到着しないらしく、夕刻を前に部隊は野営地の選択をするべく各小隊に伝令係が伝えに来る。
行きにも使われたであろう場所を陣取り、各の小隊がテントを設置し始める。俺達はレイチェルさんの部隊にゲストとして迎えられていて、テントの用意云々を言われたが、手持ちのキャンプ道具があるので丁重にお断りした。
「ここでキャンプをするのでいつもの準備をお願いします」
「お任せ下さい!エルフさん達に負けない立派なお家を組み立てます」
やる気満々のキャンプのプロは野営地の中でも比較的平らな場所を陣取りテキパキと動いてる。
おねいさんとるるえもんは食事の準備する中、お風呂担当の俺は流石に今回は人も多いし無いだろうと高を括っていたが、離れに設置しろと年頃のお嬢様達から命令が下されキャンプ地より離れること十メートル位の場所にパーテーションとともにセッティングした。尚、今回に限り壁は二重構造になっていて余程のぞき込まない限り中は見えない仕組みになっている。入り口には小隊の女性エルフさんに見張り役として立ってもらう手筈だ。
俺達のお風呂に興味を示したミシェルさんを筆頭にした女性騎士さん達数名がお風呂を貸して欲しいと言ってきたので快く貸し出した所。ボディーソープやシャンプー各種のチート的な泡立ちに驚愕した。瞬く間にエルフのお姉さん方を虜にしたお風呂は代わる代わるお湯を入れ替えた結果、流石の天使さんも魔力切れ寸前まで魔法を行使した。
「も、もう一滴もでません………」
グッタリしたるるえもんを担ぎ上げ、部屋に寝かせると魔力回復ポーションを飲ませ早々と休ませた。
最後の方はおねいさんが使い方を説明し、水魔法が使えるエルフさんを中心にお風呂場は大盛況とともに幕を閉じる。王都に戻ったら使用料としてそれなりの対価が支払う事を約束された。シャンプー類を売ってくれと懇願されたが非売品と言うことで諦めて貰った。
兎肉を使用したシチューを美味しく頂き片づけを済ませた後は自由時間となる。
ユーリちゃんは早速、アリエッタちゃんとの通信でお互いの必殺技の進捗を楽しそうに話している。魔力切れ寸前だったるるえもんは寝ころびながら怪しい笑みを浮かべ読書中(例の奴)だ。おねいさんは美の追求中で、お酒を飲まないのか?本人に聞いたら今日は休肝日らしい。
おねいさんに食後の散歩をしてくると告げ外に出るとお目当ての場所へ移動する。騎士団のキャンプ場から少し離れた所で一心不乱に棒術の型を一人練習している人物!そう、勇者リムルと話がしたく一人になるのを見計らっていた。それを察してか不明だが離れた場所へ移動する彼女の気配を感じ取り移動を開始した。
夜空に見える月に似た星明かりに照らされた銀髪が煌びやかで、右へ左へと振り下ろされる棒術はまるでダンスを踊るかの如く華麗なステップを践んでいる。
その姿をしばらく眺めていると、ピタリと動きをヤメ振り返る。
「待っていたよ。やっと落ち着いて話が出来る」
上気した頬が少し赤く、微笑んだ顔にドキッとさせられたのはナイショだ。
「君の素性は一通りルルベルから聞いたよ。召還されたんだってな?」
「ああ、全くいい迷惑だよ。折角魔族との和平も順調に進んでいたのに………」
「それは災難だったな」
「でも、そのお陰でナツメ殿に再び出会う事が出来た」
「俺にか?ま、まさか負けた時の何たらとか言い出さないよな?」
思い出したのか、茹で蛸の様に真っ赤になった顔を両手で抑えながら否定してくる。
「そ、そその事は忘れてくれ。あの時は負けて気が動転していた。それに…………」
ごにょごにょ小さい声で何か言っているが聞こえない。
「そのこと何だが」
「えっ!」
さらに狼狽える勇者さん。
「ちがう!えっちな何とかではなくて、向こうの世界の事だ。通信する手段はある。詳しくは説明出来ないが斉藤とは連絡が取れるのでお前の無事な事と、別世界に召還されたのを伝えるよ」
「軍師殿と連絡が取れるのか!それはありがたい。急に此方の世界へ召還させられたから帰る方法や安否の連絡をどうしようか困っていたんだ」
「一つ聞きたいのだが、俺の事を何処まで知っている?」
俺の質問に対し真っずぐな瞳で見つめる姿は嘘偽りが無いことを証明させるだけの力を感じる。
「調律者!その様に聞いた。とある組織に所属していているナツメ殿はこの世界の人間では無い!それから軍師サイトウ殿も同じ組織の人間。ナツメ殿は訳あって此方の世界に滞在している。その理由はあの少女!あの子は一体何者なのだ?底知れぬ強さを感じる。とても勝てる気がしない、勇者と呼ばれる私がだ!」
「少女を冒険者として育成する!これが俺の与えられた仕事だ。すまないがこれ以上は色々と禁則になるので言葉が出てこない」
「そうか………」
納得してくれたかは不明だが嫌な雰囲気は無いので信じよう。仮にも勇者と呼ばれる逸材だ、悪い様にはならないだろう。
「出来ればこの話は秘密にしてくれ。守って貰えれば協力は惜しまないつもりだ。まあ、それがなくても助ける気でいたがな」
「ありがとう。宜しく頼むよ」
「勇者リムル・シャーロットの名の下にこの話は他言無用にする!これはナツメ殿との契約だ」
リムルが高らかに宣言する。うっすらと体が光ると、魔力の糸が俺の体を包み込む。吸い込まれた魔力は何かに繋がれた気分になる。
「何だ今のは?」
「勇者の契約!」
リムル曰く!
勇者が契約した相手は強い魔力の絆に結ばれる。お互いの魔力が繋がることにより、たとえ数千キロ離れていても相手の居場所が認識出来るし、念話での会話も可能となる。そればかりか、魔力の絆が強いほど影響力はすさまじくお互いの魔力を高める効果もある。これは後でルルベルから聞いた話だが、俺が持つスキル(運命の導き手)の影響により効果が数倍になっているらしい。それは別に良いのだが、これってGPS携帯を持たされたお父さんでは無かろうか?浮気しても解りますよ的な奴。それも常軌を逸した高性能とか………ひょっとして俺はとんでも無い契約をしたのでは?
話を戻すが、俺の素性云々の約束事はあくまで口約束でうっかりしゃべってもペナルティは無い!では、さっきの契約は何なん?……まさか、あいつはやっぱりえっちな○○を狙っているのではなかろうか。
「ち、ちがっ……う」
顔を真っ赤にしながら否定する勇者さん!これは有罪だな。
抗議の目で睨むと、観念したリムルは三人の女性陣とも契約し、一種のネットワークを構築させた。あれ?これって、俺の立場が更に悪化した気がするぞ。その事に気が付いたのは皆との契約が済み、王都へ無事辿り着く頃だった。
王都にたどり着いたサラリーマンはエルフ相手に奮闘します。
皆様の暇つぶしに少しでも慣れれば幸いです
それではまた次回




