57.勇者召喚
いつもお世話になりますアリス工房(仮)です
ここはエルフ国王都内中心部にあるロゼッタ城!周りには堅牢な城壁に囲まれている。城自体の歴史も古く、先代の国王が即位した時に建造された城で軽く数百年は経っている代物だ。城だけに………。国の王は代々ロゼッタ家が継承していてエルフ族自体が長寿命種な為一人の王が長きにわたりその王位を即位している。
エルフ国を司る女王ゲネス・ロゼッタは朝から上機嫌である。城の最上階に位置する女王の寝室では侍女を従え着替えの最中にも拘わらず誰に見せるでもなく笑みがこぼれる。今日という日をどれだけ待ちわびてきたか………憎きは魔族の襲来!それが最近の悩みの種だ。
「陛下!召喚士からの連絡が入りました」
臣下からの声が侍女へ入る。
「直ぐに参ると伝えろ」
側にいる侍女に伝えると静かに持ち場を離れていく。
今日は待ちに待った召喚の儀が執り行われる。そもそも、事の発端は召喚士の長を務めるキリコによる提案がこの大規模な儀式を始める切っ掛けとなった。
我がエルフ国は魔族に対して余りにも無力である。隣国の獣人族が治める国に応援の要請も出せない現状に歯がゆさも感じる。向こうも戦力的には大差ないが、最近風の噂で新兵器の開発に成功した様で魔族との戦闘も盛り返してきていると言う情報が耳に入る。何処までが真実なのかは不明であるが、この話は城内だけに留まらず民衆もその噂で持ちきりだ。女王は何をしている?と囁く声もちらほら聞こえてくる始末。そこに飛び込んできたのが、今回の召喚の儀と呼ばれる話だ。
召喚の儀とはエルフ国に代々伝わる儀式で、異世界から勇者と呼ばれる強さを持つ人物を召喚させる事が出来る。ただし、これには制約があり必ずしも強者が呼び出されるとは限らない。それは、その世界では勇者と呼ばれる存在であってもこの世界より弱い者が勇者の場合もある。こればかりは運の要素も絡んでくる。
そして、一番重要なことが召喚者は相手を従わせる事が出来ない!即ち、交渉して協力関係を築かなければならないのがこの儀式の欠点でもある。
それでも………リスクを伴う召喚の儀に頼らなければならない程、この国は追い込まれている。
召喚の儀が執り行われるのは、儀式の間と呼ばれる城内の一角に聳え立つ魔導師が管理する建物の地下内部がその場所にあたる。部屋には床一面を覆う魔法陣が描かれていて大きさは優に十メートルはある。円の外周に召還士達が取り囲む様に配置されている。
そんな中、女王は宰相や護衛の騎士を引き連れ持ち場に現れる。
「首尾の方はいか程か?」
女王の横にいる痩せぎすの男が召還士に問いかける。
「はっ!ただいま最終調整に入った所です。もう間も無く儀式を執り行う事が出来ます」
「そうか、では待つとしよう」
男は女王が頷くのを確認して召還士に指示をだす。
準備は滞りもなく進められ儀式が始まる。部屋の中は異様な迄の静けさとそれに伴う感じの緊張感に包まれる。女王を始めとする周りを固める臣下や護衛騎士も固唾を飲んでそれを見守っている。
召還士達が各々呪文を唱え始めると魔法陣が薄っすら光り始める。それに呼応するかの如く、円の中央虚空にチリチリとプラズマらしき者が生み出されるーーーその勢いが段々と激しさを増していき対には広範囲に渡り踊り狂う蛇の様にプラズマが暴れ出す。
ーーー刹那!
目の前が発行すると同時に爆発音が響きわたり雷鳴が轟く!
護衛の騎士達が女王を身を挺して守る中…………人の姿をした何者かが部屋の中央に現れたのが……………
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「…………こは」
「…………ここは………何処だ?」
先程までに無い風景!間逆の景色に戸惑いを感じる。私は…………ここは一体何処なんだ?
解らない………目の前には怪しいフードを被った魔法使いらしき集団に取り囲まれている。その数数十名。
………装備は?手持ちの武器は……どうやらそのままらしい。ーー直ぐに思考を目の前に現れた怪しい集団に意識を向ける。
現状は思わしくない。一刻も早くこの場所から離脱して仲間と合流しなければ………そう言えば仲間の姿が見られないし気配も感じられない。最近の平和ボケは深刻だなと思いながら自分の置かれた立場を認識し愛用の武器を構えながら静かに口を開いた。
「お前たちは何者だ?おかしな魔術で罠に嵌めたと思っている様だが相手が悪かったな!」
警戒しながら臨戦態勢を取ると、慌てた声で魔法使いの一人が口を挟む。
「ーーお待ち下さい!我々は決して怪しい者ではございません」
こんな薄暗い部屋で何十人ものフードを被った集団が居るのに怪しくないと言われて納得できるか!
しかし、現状を把握したい気持ちはあるので警戒する姿勢は解かず話くらいは聞いてもいいだろうと判断した。倒すのはその後でも良いだろう。
「話ぐらいは聞いてやる」
それから、ゆっくりではあるが目の前にいる魔法使い改め召還士と名乗ったキリコと言う人物が事の発端から今に到る経緯を話始めた。
「…………と言うのが話の全てでございます」
辺りが静まりかえり物音一つ無い静寂。重苦しい雰囲気に誰しも固唾を飲んで見守っている。
召還士キリコと名乗る男の話が本当であるならば、私は異世界に召喚されたらしい………頭が混乱する。
ーー何だそれは?
コイツ等の勝手で私はこの世界に召喚されたというのか?
決して声を張り上げず、気持ちを押し殺す様に平坦な口調で言葉を紡ぐ。
「で?私は無理やり転移させられて、お前達の言う魔族と戦うのに協力しろと?しかも帰る手段も無い!………話にならないな」
ご都合主義にも程がある。こいつらは阿呆なのか?何処の世界にそんなお人好しがいるのだ!是非会ってみたい者だ。しかも、今の一言で周りの何人かは私に対して敵意をむき出しにしている者がいる。これでお願いとは片腹痛い。
そんな考えをしていると、今まで黙秘を続けていた国の女王が初めて口を開いた。
「そなたの言い分は最もだ。余も同じ立場であったら従いはせぬであろう」
国の女王と言うだけあって周りの家臣とは比べものにならないくらい威厳と高貴な気配を感じ取れる。しかし、この程度の覇気では私を突き動かすことは出来ない。
「女王よあなたに伺いたい。では何故?こうなる事が予想出来たのにわざわざ異世界から召喚させたのだ?」
「貴様!陛下に向かって何たる口の聞き方を!」
先程からずっと睨みつけていた一人の騎士が劇昂しながら襲いかかってくる。
振り降ろされた剣を余裕を持って交わしながら愛用の武器で相手の剣をたたき落とし鳩尾目掛けて蹴りを入れる。吹き飛ばされた騎士はそのまま壁に激突するとあっさり気絶した。
「この世界のエルフ族は気が短いのだな!」
一触即発の雰囲気が漂う中、話し合いは不可能!と判断し臨戦態勢をとるべく静かに武器を構える。
………すると、張りつめた空気を切り裂くように女王が声を張り上げる!
「武器をおろせ!ーーーー余に許可無くこの方に手出しする者は全て賊物とみなす」
女王の一言が張りつめた空気を変え、臣下達は武器をおろす。
「部下の不始末は余の失態じゃ。どうかこの場は武器を収めては貰えないだろうか?」
「女王が言うので有れば聞き受けよう。では、先程の質問を聞かせて頂きたい」
真っ向から受けて立つそんな眼差しで女王を見つめる。
「我が国は危機的状況に陥っておる。それこそ藁をも掴む思いで召喚の儀を行った。どうか力を借してはくれないだろうか?そなたの腕前は先程見せて貰った。そなたはこの国の誰よりも…………強い」
沈痛な趣で一国の女王が臣下の前で頭を下げる。
その行為に周りの臣下らも動揺の色を隠せずにいる。
たしかに、国の王が頭を下げるくらいせっぱ詰まっているのは話の内容で解る。だが、私に取っては巻き込まれているのが今の現状で、はいそうですか!と力を貸すのは納得出来ない。
交渉は平行線を保ったまま時間だけが過ぎて行く。
………すると、一人の女騎士が部屋に入ってくる。何やら女王の横にいる男に耳打ちしているのが見受けられる。生憎と私は耳が良いので時には聞きたくない事まで聞こえてくるのだが、今回はそれが項を奏した。
興味深い内容に心が突き動かされる。
「その話!くわしく聞かせては貰えないだろうか?」
私の急な申し出にエルフの女王も呆気に取られている様だが、交渉が降着している現在の状況が芳しく思わないのか素直に聞き入れてくれた。
話の内容であるが、国境付近で獣人国から入国した馬車が魔族の襲撃にあった!と言うのが大まかな内容でその事件には興味が無い。襲われた馬車に乗っていた人物に興味が引かれたのだ。その人物は人族と呼ばれる種族で複数いた魔族に対して女の人族が盾を武器の様に扱い打ち倒した事と、黒髪の男が不思議な魔道具で魔族を殲滅したと言う話である。
「黒髪の男………盾での攻撃…………不思議な魔道具?」
繰り返される思考に囚われながら腕を組み替えつつ暫し黙考する。
実に興味深い話だ!
いい加減今の現状も打破したいのもある。本来、私は勇者気質がある為困っている人達を見過ごす事が出来ない。今回に限っては強制的に転移させられ一方的にお願いされた事に腹が立ったのがそもそもの原因だ。
難儀な性格とは思うが落とし所も見つかったしこの辺りで手を打とうと考えている。選択肢としてエルフの条件を突っぱねて自分で元の世界へ帰る方法を探すのも考えられたが、ここは協力関係を持った方が何かと動き易いと思える。言っても私はうら若き乙女だ!年も十七歳だし、ひとりぼっちで異世界に転移させられて心細いのもある…………多分。ーーーーそんな柄では無いか。
「エルフの女王よ二つ提案がある!この条件を聞き入れてくれるのであれば要求に応えても良いがどうだろう」
願ってもない申し出にエルフの女王ゲネスは驚いたが顔には出さず平静を装いながら答える。
「どの様な条件か聞かせてくれぬか?そなたの願い聞き入れる所存だ!」
「一つ目は、人族がいる国へ案内して頂きたい。そして二つ目は先程の話にあった人族を探しては貰えないだろうか?一度話がしたい」
女王は臣下に目を向けると何やら話しているのが目に見える。私の提案は受け入れられるだろうか?
「ゲネス・ロゼッタの名の下にそなたの提案聞き入れようぞ!早急に臣下へ捜索させるがゆえ、暫し待ってほしい」
「寛容なお心遣いに感謝する」
どうやら交渉成立の様だ。
「そう言えばまだ名乗っていなかったな。私の名前はリムル………リムル・シャーロットだ!転移する前は勇者と呼ばれていた」
王都を目指すサラリーマンはエルフ相手に奮闘します。
皆様の暇つぶしに少しでも慣れれば幸いです
それではまた次回




