47.紅の騎士・後編
いつもお世話になりますアリス工房(仮)です
前半はおねいさん視点で物語は進みます。
ナツメ君は戦況を確認した後、今後の方針を決める。
「俺達もそろそろ加勢しましょう。ミランダさんとユーリは、三姉妹の護衛と魔族の殲滅をお願いします。俺はあの兵器をぶち壊すのと、ついでにバカな軍隊にお灸を据えに行きます」
「分かったけど……程々にして頂戴」
正直。ヤりすぎないか心配だわ。
「お任せください。皆は私が守ります」
「ユーリちゃん。三人の居場所!解るかな?」
「あそこら辺から三人の気配を感じます」
指さす方角は森林の入り口辺りだ。ユーリちゃんの気配察知能力には毎回助けられるわ。
「合流したら三人の護衛は任せるわ。空にいる魔族の相手は私がするからお願いね」
ユーリちゃんが頷いたのを確認し、ミシェル達がいる場所へ向かう。
前方では、アリエッタちゃんを庇いながら戦うミシェルとマリーの姿が見える。
「どうやら間に合った様ね」
目の前にいるアークデビルに空圧咆の照準を合わせようと構えると、ユーリちゃんが素早い動きであっという間に三体の魔族を打ち倒す。
「相変わらずね。頼もしいわ」
急ぎ、三姉妹の元へ。
現場に到着した私達の姿を見て驚く三姉妹。
「みんな無事の様ね。私が魔族の相手するわ、他の皆は援護をお願い」
「ミランダさんに、ユーリちゃんまでも……どうして?」
呆然と立ち尽くすミシェルさんにマリーさんが叫ぶ。
「ねえさん!今はそんな事より目の前の魔族が優先だ!」
我に返り手に持っている弓を構え直す。横では近づく魔族相手に拳で迎撃するマリーの姿。両腕には鉄製のナックルガードの様な装備を施している。
「さあ、これ以上は好きにさせないわ!」
得意のフレアボム複数発動!今では無詠唱で二十個は発動できる。むかしはこんな芸当が出来るとは信じられなかったが、ナツメ君やユーリちゃんと出会ってからの私は強くなっている。勿論、古代龍に貰ったアイテムやナツメ君の道具の影響もあるが、元々ある魔力が尋常では無い程増加している。天界人のルルベルさんが言うには、ナツメ君のスキルが影響していると言っていたが………ほんと、不思議な人だわ。
上空に浮かべられた無数の魔法陣!そこから生み出された炎の玉が、生きているかのように次々と空に浮かぶ魔族を焼き尽くす。
「…………すごい」
呆然と見つめるアリエッタの前に突如!現れる魔族の兵士。振り下ろされた攻撃は、彼女に届くことはなかった。最強の盾で受け止めると無造作に殴りつける必殺の一撃。
「アリエッタちゃんには指一本触らせません!」
「………ユーリお姉ちゃん……ありがと」
その姿ににっこりと微笑むと、再び魔族に立ち向かうユーリちゃん。三人の護衛は大丈夫の様ね。後方からの攻撃も無くなっていると言うことは、ナツメ君も旨く言った見たいだわ。
空中にいる魔族を焼き付くしながら、アリエッタちゃんを中心に守る形で陣形を取る。
「流石に数が減らないわね。周りも前線しているけど、どこまで持つか………」
不安とも感じ取れる言葉が口からこぼれる。すると、そんな気持ちをかき消すかのように後方から勇ましいかけ声を上げながら軍隊が押し寄せる。
「どう言うことかしら?」
「ミランダさん。後ろから軍隊の人が来ました」
ユーリちゃんも不思議に思ったのか、問いかけてくる。私達は、隊列を崩さず戦況を見守っていると頼もしい通信が入って来る。
「遅くなりました。軍隊は説得したので大丈夫です。俺も上空から援護します」
見上げると、真っ赤な鎧に身を包んだナツメ君の姿が見える。彼さえいればどんな困難にも立ち向かえる!不思議と、そう思える自分に笑みがこぼれる。
「遅いわよ!待ちくたびれたわ」
「すみません。バカな指揮官のお仕置きが長引きました」
そう言いながら上空の魔族を切り捨てている。
「恐らく今回も、何処かに召還クリスタルがあると思います。見つけたら連絡しますので援護をお願いします」
「まかせて頂戴!」
本当に頼もしい。希望の光が見えてきた。ここが踏ん張り所だわ!私は意を決して、戦女神の杖に魔力を込める。
金色に輝く瞳と髪が戦場に舞い踊る。光の粒子が魔力となって吸収されるこの感じ、背中には光る翼が権限し絶対的な高貴なオーラを身に纏う。見る物すべてが美しさの前に平伏す。陽の光を浴びながら、空に舞う一人の黒天使!
「さあ、始めるわよ!」
ミランダ・ファルシオーネ!黒天使様の降臨である。
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下では超ミランダさんが降臨して、相変わらずの魔法攻撃で辺り一体を焼き尽くしている。
「相変わらず凄いな!おっと、俺も負けられないな。ネメシス!魔族が生み出されているポイントが何処か解るか?」
(照合中…………村中心部の広場より、邪悪な魔力を感じられます)
「あそこか………んっ?」
一際大きな体躯の魔族が、村の中央から現れる。上下アンバランスな体つき、異常なまでに発達した両腕。両肩の甲冑からは刺々しい突起がある。顔は何処か?出来の悪いカラクリ人形の様な見た目で、感情が感じられない所にこの魔族の恐ろしさを覚える。
「デカい奴が現れた!ユーリは足止めを頼む。ミランダさんは皆をお願いします」
「お任せください。最強の盾が火を噴くのです!」
言うが早く、ゆっくりと近づいてくる大型の魔族を目の前に、一気に飛び上がると最強の盾での攻撃。その破壊力は分厚い魔力障壁をあっさりと打ち破り魔族にヒットするが、差ほどのダメージを与えられない。
(マスター!クリスタルを発見しました)
ネメシスが見つけた召還クリスタル。やはり、村の中央に浮かび上がっている。
「ミランダさん!クリスタルを攻撃するので援護を頼みます」
禍々しい瘴気を放つ場所へ空圧砲の照準をあわす。それに気が付いたアークデビル達が一斉に攻撃してくる。
「ナツメ君は私が守る!」
目の前に無数の魔法陣が浮かび上がり、炎の玉が俺に近づく魔族を悉く焼き払うのが見える。信頼している仲間の援護に感謝しつつ、静かに引き金を引く………!
最大出力で打ち出された破壊の光は、禍々しいクリスタルを打ち貫くと、これまでにない程の大爆発を起こす。その爆風は、周囲にいた魔族を巻き込み焼き消しながら広がっていく。近場にいたユーリも堪らず後方へ飛びながら魔法陣型の盾で防御する。ミランダさんは、三姉妹を背にして魔法陣盾で防御している。
「んもう、ナツメ君やりすぎよ!」
プンプン丸のおねいさん!
「すみません。やっぱりフルパワーは不味かったですね」
(何を仰いますかマスター。クリスタルの破壊は成功です!この調子で敵を消し炭にしましょう)
随分と物騒な事を述べるネメシスさんは、自分の力に大変満足している。
クリスタルの破壊を確認したが、村の三分の一が消し飛んだのは見ない振りをする。残るはあのデカ物!今はユーリが応戦している。致命的なダメージこそ与えられずにいるが、あの巨体を一人で押さえ込んでいるのだから対したものだ。地上の魔族達はおねいさんに任せるとして、ユーリの援護に向かう。
「大丈夫か、戦況はどうだ?」
「あのおっきい魔族!堅くて中々倒れてくれません」
「俺が牽制するから、ユーリは神聖魔法で攻撃して見るか?周りに味方もいないから大丈夫だろう」
「や、やって見ます」
鋭く尖ったシールドの先端から、魔力で覆われた光の剣を顕現させる。ユーリが魔法を唱える時間稼ぎをする為に、異形の魔族に立ち向かう。
「お前の相手は俺だ!」
相手の不揃いな腕から攻撃される一撃をかい潜りながら一太刀いれる、ヒットアンドアウェイでの攻撃。ダメージこそ蓄積させているが中々倒れてくれない。そんな時間稼ぎとも言える単調な攻撃を繰り返しているとようやく、呪文が完成する。一際大きな魔力を纏ったユーリ!それに気が付いた俺は、その場から急ぎ撤退する。
「神聖なる雷よ、天の裁きを持ってあらゆる物を滅っする」
「神聖魔法・ライドニング!」
突き出された指先の向けた場所!上空に召還された雨雲から一振りの雷が雷鳴を轟かす!
異形の物に落とされる落雷。その破壊力は見るもの全てに印象づける神の雷!焼き尽くすと言うのも形容しがたいほど破壊力に、目の前で見た俺は一瞬目が光りに覆われ視界がホワイトアウトする。
「何という破壊力だ!……ネメシス。状況確認を頼む」
(大型魔族の反応は消えました。現在は沈黙しています。マスターの視界が戻るまで上空にて待機をお勧めします。その間のバックアップはお任せ下さい)
「ナツメさ~ん。大丈夫ですか?」
横にユーリの気配を感じる。
「ああ、少し視界をやられたが時期に戻る。皆の様子は?」
「三人とも無事よ。少数の魔族は残存するけど、後は他の人に任せましょう」
視界も徐々に回復し状況を確認する。先程までいたであろう大型魔族はその原型を留めて居らず、ユーリの放った魔法に驚愕するとともに今後の使い方にも注意した方が良さそうだと反省する。
「あの魔法は少し危険だな」
「そうですね。ヤりすぎました」
ユーリに支えられフラフラしながら地上に降り立つと、おねいさんと三姉妹達が迎えてくれる。何か最後はカッコ悪い終わり方だな。
「皆が無事で何よりです。ミランダさんもご苦労様」
そんな素振りは見せず皆の安全の確認をする。
「その声はナツメか?君も戦っていたのか?」
赤い鎧を身につけた声の主に驚くマリーさん。
「一応、そうなります。アリエッタちゃんも良く頑張ったな」
不思議そうに俺を見つめているうさぎっ娘の頭をやさしく撫でてあげる。
「………ありがと」
「ミシェルさんと、マリーさんも無事で良かったです」
「あなたはナツメ君?何だか信じられない」
ペタペタと触って確認するミシェルさん。
お互いの無事を分かち合いつつ談笑していると、後ろから唐突に声を掛けられる。
「紅の騎士殿!この度はあなた様のお陰で魔族を倒すことが出来ました。つきましては、我々と本国へ来ては頂けませんか?」
恐れていた事が起きようとしている。関わるとメンドクサい事になりそうだし、ここは……………全力で逃げよう!
「今回は、気まぐれで手伝ったまでだ。おまえ達と同行するつもりは一切無い!それでは、さらばだ!」
シュタッ!っと手を挙げて挨拶をすると、一気に飛び上がる。
「店で待ってます」
三姉妹に小声で伝え、その場から逃げるように飛び立った。
「それじゃあ後でね」
ウインク一つ!おねいさんも察したのか、その場を逃げるように飛翔する。
「あーーっ!皆が逃げた〜。私も逃げます」
漸く気が付いたお子さまも、追いかけるように飛び立つのであった。
道中で装備を外し、何食わぬ顔で町に戻る。中では、魔族を撃退し村を奪還したと吉報が流れ大騒ぎになっている。中でも紅の騎士の噂は早くも広まりつつある。
「これは、マズい事になって来たぞ」
「フフフ!銅像なんか作られたりして」
「いいえ。先ずは胴上げです!あれは恥ずかしいのです」
「二人とも、人事だと思って楽しんでませんか?」
俺の文句に、二人はとても良い顔で答える。
「「そんな事ありません!」」
間違いない。この状況を二人は楽しんでいる!
無事に生還したサラリーマン。今後の事で頭を悩ます展開になります。
皆様の暇つぶしに少しでもなれれば幸いです
それではまた次回




