46.紅の騎士・前編
いつもお世話になりますアリス工房(仮)です
三姉妹を助けるべく、朝早くに起床した俺達は装備を確認する。そして、久しぶりの冒険者服に袖を通す。
「やっぱり二人は、魔法衣姿が似合ってますね」
「フフフ。ありがと」
「戦闘準備は整いました。今日は、勝利のカレーを食べるのです」
パワー全開!やる気満々のユーリちゃんは、早くもカレーをご所望だ。
白黒天使様の準備も整い、アイテムSHOPユーリは本日休業。外へ出ると、町の中は心なしか浮ついた雰囲気が漂っている気がする。そんな中、商業ギルドの前を通ると一人の猫耳さんが朝早くからこちらを見据えている。
「おはようございます。朝からどうしたのですか?」
白々しくも一応は挨拶をする。
「おはようございます。やはり、行かれるのですね?」
何もかもお見通しよ!と言わんばかりの口振りに少々焦ります。
「マリンさんは、気づいていましたか。誤魔化せると思っていたのですが………」
「アレ程のアイテムを所持しておいて、普通の商人とは到底思えません。深く詮索しませんが……………どうか無事に帰ってきて下さい」
「すみません。必ず戻ります」
それだけ言うと、マリンさんはギルドに戻るのであった。
町の入り口は、出発した後なのか閑散としてい誰もいない。心なしか門番の獣人も、緊張した雰囲気を醸し出している。それだけ今回の戦いは大規模なのであろう。
俺達の方針だが、戦局の様子を見てから参戦する事を昨日のパジャマ会議で決めてある。闇雲に参戦しても良いことが無いのは目に見えている。当然、三姉妹の同行は視野に入れての作戦だ。軍の動きも気になるし、慎重に事を運ぶつもりだ。
先行している部隊は、ユーリの探査能力で居場所は把握している。今は上空にて高見の見物中!
魔族の軍勢が発見されたのは、元は獣人達が住んでいた村があった場所だ。俺達が町に着く前に襲撃された村で、今は廃墟と化している。幸い村人は、多少の犠牲者もあったが全滅の危機は回避し、仮住まいを町に移している。この辺の情報は、町の獣人に聞いて回って集めた内容だ。
前方には、魔族と思われる機影もチラホラ見えている。敵の総数は未だ把握出来ないが、獣人族の大まかな布陣は上空ではっきりと見える。マリーさんが言っていた通り、前衛には多くの冒険者らしき部隊がつらなっていて、少し離れて付いてくる部隊が軍隊だろう。軍の中には三機の投石機?に似た、大型の兵器が見られる。恐らく、テコの原理を利用して打ち出すタイプの兵器だろう。
「軍はあんな物まで持ち出して来たのか。上空の魔物対策にでも使うのか?」
「ナツメ君は、あの機械の仕組みを知っているの?」
「ええ、まあ。むかし見たことがあります。多分ですけど投石機と言って、石を打ち出す兵器です。主に攻城戦などに使われていて………」
「難しい話は後にして頂戴。下の方で動きがあるわ」
おねいさんには興味が無いのか、話をあっさりと打ち切られる。
「魔族の中に強い魔力を持った奴はいるか?」
「んーー!感じられません。この前村で戦った相手と同じくらいの魔族しかいないです」
「そうか、ありがとう」
そうなると、今回も何処かに召還クリスタルの様な物があるのか?それを見つけないと持久戦になってしまう。下では戦闘も始まった様だし、相手の戦力が分かれば良いのだが…………。
今の所戦局は、互角の戦いを見せている。俺達が売り出した攻撃アイテムが要所で牽制の効果もあってか、魔族も迂闊に近づいてこないでいる。そんな中、ある事に気が付く。
「ナツメさん。あれを見て下さい」
ユーリの指さす方向に、投石機を打ち出している軍隊が見て取れる。
「あいつら、仲間もお構いなしに攻撃してやがる」
フレンドリーファイヤって何ですか?と言わんばかりに、バカみたいに打ち出される大きな石!ご丁寧に、攻撃アイテムまで取り付けやがってあのバカ共!
「俺達もそろそろ加勢しましょう。ミランダさんとユーリは、三姉妹の護衛と魔族の殲滅をお願いします。俺は、あの兵器をぶち壊すのと軍隊にお灸を据えに行ってきます」
「分かったけど………程々にして頂戴」
少しヒキツるおねいさん。
「お任せください。皆は私が守ります」
こちらはやる気満々だ!
それだけ言うと、白黒天使様は飛び立って行った。
さてと、このまま行くと素性がバレる。今回は変装も兼ねてパワードスーツを装着するつもりだ。
アイテムウインドからお目当ての物を召還!そのまま装備する。
(パワードスーツの起動を確認します。社員番号と名前をお願いします)
真紅に包まれた形容しがたいパワードスーツ!相変わらずのフォルムに頭を痛めるが、あえて突っ込まないのが大人の対応。心なしか、装備が増えている気がするが知らん振りする。最終的にネオが付く装備にならない事だけを祈りつつも、名乗りを上げる。
(承認完了します。お久しぶりですマスター)
「ああ。久しぶりだなネメシス」
「準備運動がてらにあそこの投石機を破壊したい」
(了解しました。あの程度の標的ここからで十分です。周りの敵も消し去りますか?それでしたら出力は七十%くらいで………)
「いや、一応敵ではないから消し去らなくて良いぞ。投石機だけの破壊で頼む」
(そうですか。それは残念です。………準備完了しました。いつでも発射できます)
銃身までそっくりな、ライフルにも似た武器を構える。この空圧砲は、魔力パックが独立していて予め魔力を供給さえすれば、魔力を持たない人でも実用が可能な新装備だ。当然のことながら内のお子さまにお願いした魔力弾が込められている。ちなみに魔力弾一個あたり、シュークリーム(お小遣い)が一つの計算である。
ネメシス補正の元、照準を合わせ引き金を引く。出力を押さえたと仰っていたが、とんでも無い光が流星の如く飛んで行く。投石機に当たるやいなや周囲を巻き込み大爆発!上空からの突然の攻撃に、軍隊はパニック状態。そんな事はお構いなしに二発、三発と次々に破壊される投石機。
「ネメシス!軍の指揮官が誰か分かるか?」
(お任せください。照合します)
暫く待つと、モニターが拡大され一人の獣人が移しだされる。
(恐らくあれが、指揮官になります。今すぐこの世から消し去りますか?)
「いや、やめてくれ。指揮官にお仕置きをするので先ずは下に降りる。それから、音声を外に聞こえるようにしてくれ。成るべく大きく頼む」
(了解しました)
下からギャーギャー騒ぐ軍隊に近づくと、問答無用で攻撃アイテムを投げられる。それを、左腕に搭載された形容しがたい何処かの軍の紋章が施されている盾であっさりと防ぐ。
「お前達は何をやっているのだ。相手は魔族だぞ!死ぬ気で立ち向かえ」
偉そうに指示する指揮官。見た目は豚そのもの、丸々太った体躯がハチキレそうな鎧と相成っている。
武器を身構え、攻撃を仕掛けようとする兵達の前に、牽制の意味を込めて空圧砲を打ち込む。その効果は絶大で指揮官に近づく俺を止める兵はいなくなった。
「あんたが、この軍の指揮官か?」
「なっ!魔族が獣人族の言葉を………」
ざわめき始める周囲の兵達が各々反応する。
「俺は魔族ではない。この戦いを上空から見物していたのだが、お前達の戦いがあまりにもお粗末だったので忠告しに来た」
「何だと?忠告だと!偉そうに何者だ貴様!」
「もとより名乗るつもりはない。それより、さっきの攻撃を指揮していたのはお前か?」
豚の指揮官を指さしながら質問する。
「いかにも!私は王国軍第六部隊所属。ポロ………」
「あー!お前の名前に興味はない。一つ聞こう!お前にとって仲間とは?前衛で戦っている冒険者とは何だ答えろ!?」
周囲に聞こえるよう怒鳴るように言った言葉。
「フン!つまらぬ質問だ。あんな奴らは使い捨ての駒だ。換えはいくらでも利く」
やはりそう言う回答か!手加減の必要はイラないらしい。
「そうか。お前の考えは良くわかった。………十秒くれてやる。サッサとこの戦場から立ち去れ」
そう言って空圧砲を構えながらカウントを開始する。
「十…九……八………七」
「ふ、ふざけるなぁー!」
剣を抜き激行しながら俺に向かってくる指揮官!
振り下ろされた剣を盾で簡単に払いのけ、鳩尾に膝を入れる。九の字に折れ曲がり声にならない悲鳴を挙げるブタ。その状態から、俺の放った蹴りが突き刺さり十メートル程吹き飛ぶと、ゴロゴロ転がりながら周りを蹴散らし漸く止まる。
「さあ指揮官がいなくなっぞ!お前達はどうするのだ。尻尾を巻いて逃げ帰るのか?王国軍というのは見かけだおしなのか?獣人族の軍隊も大した事無いなあ、これなら冒険者の方が遥かに有能だ!」
マリンさん曰く、俺の安い挑発にあっさりと残された兵達は、各々が闘志をむき出しにしながら雄叫びをあげる。
「我々は王国軍第六部隊だ!魔族相手に撤退はない。見ていろ、紅い騎士!魔族共を討ち取ってくれる」
割れんばかりの咆哮が木霊する。
「突撃ーーーーー!」
その一声が、前方で戦っている前衛部隊を飲み込み進軍する軍隊の姿が眼に映る。
「全く、脳筋にも程がある。でも戦力は整った様だし、俺も援護に向かうとするか!」
(了解しましたマスター!)
飛び立つ紅の騎士!その姿は彗星の如く。
追撃に向かうべく上空にいる魔族の軍勢に立ち向かうのであった。
軍隊の介入で、益々激戦になる魔族との戦い。果たして、サラリーマンは三姉妹を守れるのか!紅の騎士が奮闘します。
皆様の暇つぶしに少しでもなれれば幸いです
それではまた次回




