40.コレット村と獣人
いつもお世話になりますアリス工房(仮)です
案内された家は、村長と呼ばれるだけあって、他のログハウスもどきの家より豪華な造りだ。入り口には魔物の頭が骨となって飾られていて、何処ぞの部族を思い出す。
ユーリとミランダさんを見ると、緊張した趣で頷く。俺も頷き返し案内された村長がいる扉を潜る。
部屋の中は木材を基本としたテーブルやイス、床には草を編み込んだ絨毯の様な物が一部敷かれている。ちょっとした畳にも見えなくない。
目の前には、イスに座る一人の男が眼に入る。見た目が狼に似た姿をしていて、最初に会った門番の男よりも狼に近い?顔立ちだ。年齢も、その顔では判断しかねる。獣人族にも色んなタイプがいるのだと感心する中、村長と呼ばれる男がゆっくりとした口調で話し始める。
「お前たちの素性は、見張りの物からある程度だが聞いた。人族の冒険者で間違いないか?」
威厳たっぷりの言葉で、質問してくる村長さん。
「間違いありません。俺の名前はナツメと言います。後ろの二人はミランダとユーリ。二人とも俺の仲間です。ここが何処なのか検討が付かない!宜しければ、教えて貰えませんか?」
質問に答える村長。名前はゼンノさんと言い、この大陸や村の名前、今の置かれている状況を大雑把ではあるが教えてくれた。その内容は予想通りで、この村はコレット村で間違い無さそうだ。一応、転移魔法で偶然飛ばされた体で話を進めていたので、驚いた小芝居をしたのだが、ユーリのあまりの大根ぶりに、かなり焦った。それを何とか誤魔化して今に到る。
「俺達は転移魔法で飛ばされたと言う事ですか。正直信じ難いが、あなた方を見る限りでは真実なのでしょう。ゼンノさんは、俺達がいる大陸に行く方法とかご存じですか?」
「人族がこの大陸に迷い込む話は聞いた事あるが、戻る方法は知らんな。それこそ、王都にでも行くしかない。もしかしたら、帰れる方法が見つかるかも知れない。………ただし、今は少しマズい状況にある」
おっ!ついに本題か?ゼンノさんの言葉を待ち侘びていると、これまた予想通りの言葉が返ってくる。
「お前たちは知らないと思うが、この大陸に魔族が攻め込んで来ている。王都は勿論だが、その近辺も厳戒態勢になっていて、各地で戦闘が行われている。悪いことは言わん。王都に向かうのは諦めた方が身の為だ」
ウエスタンブルーム大陸!
縦長の形をした大陸は、北側が獣人族。南側にエルフ族が拠点を置く、二大国が統制して成り立っている。勢力図で言えば、獣人族の方がやや大きい。
魔族は、大陸の東側国境付近に拠点を置きそれぞれの国へ攻め込んでいる。エルフの国については情報を得られなかったが、獣人族は王都周辺に戦力を置き、現在も交戦中だ。魔族軍も、王都だけでなく戦力を分散させ各地の町や村を襲撃しながら王都を取り囲む作戦に出たらしく、町や村でも大きい物から、小さい戦闘を含めるとかなりの被害に合っている。
「それでも、俺達は王都へ向かいます。帰る方法はそれしかなさそうだ。貴重なお話、ありがとうございます。………出来れば、この村に泊まりたいのですが?勿論、部屋を貸してくれとか言いません。俺達も野営の準備くらいは持っていますので、場所だけ貸して頂ければ助かります」
少し考える素振りをしたゼンノさんは、横に立っている馬顔の男を呼ぶと何やら内緒話をした後、俺達に向き直る。
「泊まる場所は、提供しよう。ただし、あまり村の中を歩き回らないでくれ。中にはお前たちを、良く思っていない村人もいる」
「御心遣い感謝します。明日の朝には出発しますのでそれまで宜しくお願いします」
挨拶を済ませると、馬顔の男に連れられてキャンプ地となる場所まで案内される。村の外れの材木置き場にも見える一角に開けた所がある。どうやらここが、今晩の寝床の様だ。馬顔の男は案内が終わると、何も言わずに、立ち去って行った。このまま、見張られるのではないかと思っていたが、余りにもあっさりと戻って行くので、拍子抜けする。それでも、周りは警戒しつつ、皆にはキャンプの準備をして貰う。
「ユーリはいつもの奴を頼む。ミランダさんは夕飯の準備、お願いします」
「お任せ下さい。今日も最高の寝床をお届けします」
キャンプのプロは、張り切って家を組み立て始める。
「ナツメ君はどうするの?」
「村の周辺を探索します。何かあったら通信端末で呼んで下さい」
了承したのを確認し、飛翔魔法で村を抜け出す。
周囲は草原が広がっている。目立たない場所を探すのに苦労したが、比較的大きめの岩場を見つけた。そこで、いつもの定時連絡を行う。
無事に別大陸に到着した事を伝え、大陸の情勢を簡単に説明した後、あまり仲間を待たせるのも悪いので早々と通信を終える。村へ足早に戻ろうとしたその時!けたたましい爆音とともに、村から火の手が上がる。
「今の爆発音は何だ?」
飛翔魔法を発動させ慌てて仲間の所へ戻る。
上空には、最果ての島にいた魔物が数匹。地上には黒い色をした岩のゴーレムらしき魔物の姿が眼に写る。飛翔魔法でそのまま魔物の背後に高速で移動し、横凪に切り捨てる。倒した魔物には目もくれず急ぎ、仲間の元へ。
「二人とも無事か?」
大声で叫ぶと、俺の声に気づいた二人が各々武器を装備した姿でやって来る。
「村の中に石で出来たゴーレム型の魔物が二体いる。ユーリはそいつの相手を頼む。ミランダさんは、上空にも魔物がいるんでお願いします」
「任せて下さい。盾の餌食にします!」
「分かったわ空は任せて頂戴!」
「俺は村の人達の援護をします。何かあったら通信お願いします」
お互いに頷き合い行動を開始する。
家の一つが燃えている。恐らく上空にいる魔物の仕業だ。舌打ちしながら俺は、逃げ遅れた村人はいないか辺りを警戒しながら見回すと、はぐれた子供の獣人が、魔物に襲われそうになっている。魔法らしき詠唱とともに出現する炎の塊!打ち出される火の玉と子供の間に割り込んだ俺は、間一髪!魔法陣型の盾で防ぐと、そのまま突進して一刀両断する。
「大丈夫か坊主?怪我が無ければ早くここから逃げろ!」
恐怖に顔を引きつらせながらも、逃げる子供を見送った。その後も、襲われる村人を助けながら戦況を見守る。
獣人族と言われる種族はやはり、普通の人よりも身体能力は高そうだ。魔法こそ使う獣人はいないが、何人かは獣人化と呼ばれる能力で狼や豹に似た獣に変身して戦っている。
ゴーレムもニ体存在していたはずが、既に一体がバラバラになっている所を見ると、ユーリが頑張っている様だ。上空を見れば、おねいさんが相変わらずのデタラメすぎる数のフレアボム召還に、為す術が無く魔物は倒されている。それでも、数が減らないのはおかしい!いきなり現れた魔物。以前にも経験したことから考えると、相手は何処からか召還されているのでは?そう、考えた俺は魔物の出所を探るべく上空へ移動する。
「何処かに、魔物が沸く場所がある筈だ」
眼を凝らし、探索能力をフル活用する。
漸く見つけた物体………アレだ!
ミランダさんがいる所よりも、遙か上空に位置する瘴気に満ちた黒い霧のような物に包まれた場所。そこから、魔物が生み出されている。急ぎ、ミランダさんの元へ向かった俺は、周りにいる魔物を蹴散らしながら空に浮かんでいる異形の集合体の存在を伝える。
「あそこに黒い霧のような物が見えます。恐らく、魔物の出所はあの黒い塊からです」
俺の指さす方向を、確認するミランダさん。
「あんな所から魔物が。通りで、数が減らない訳だわ」
「ブッ壊しますので、援護お願いします」
「分かったわ。まかせて頂戴」
アイテムウインドウから名刀MASAKOを召還した俺は、飛翔魔法レビテイトを強化させ高速飛行で更に上昇する。
「ナツメ君には指一本触らせないわよ」
超ミランダさんが権限し、辺り一帯を埋め尽くす魔法陣!夕暮れ時の空が魔法陣で埋め尽くされる。おねいさんは金色の髪を靡かせ、俺に近づく魔物を片っ端から消し炭に変えて行く。
地上では、ゴーレムニ体を物の数分で粉砕したユーリちゃんが屋根の上にちょこんと座り、俺達の戦いを見守っている。
「うわあ~。ミランダさん凄いです」
瘴気の中には鈍色に輝く魔石が見える。真上に到着した俺はそのまま急降下!すれ違い様に、渾身の一撃を決める。
呆気ない程簡単に魔石は真っ二つに斬り裂かれ、黒い瘴気を吐き出しながら爆発。魔物を生み出していた魔石は跡形も無くなり、この世から消滅した。
その後は、敗走する魔物を倒す。村に被害は出たが死傷者もなく無事に終わった。現在は、俺とミランダさんの回復魔法で重傷者の治療を行っている。唯一の不幸と言えば、今日の昼間にハラペコハンターが仕留めたウサギが真っ黒な炭に変わった事ぐらいだ。
「のおおおお~!私の夕飯がぁ~」
ガックリ大地に手をついた状態で、うなだれている。
「おにょれ、にっくきは魔族です!よくも、私の大事な夕飯を!」
拳をにぎりながら、復讐に燃えるハンター様。
ユーリのキャンプ道具は無事であったが、料理具が全滅。これは、早急に会社へ連絡しないと飯が食えなくなる。ユーリにはそのことを伝えるとともに、今日の夕飯は無しと告げるのを迷っていた所、先程この場所まで連れてきてくれた馬顔の男がこちらに遣って来る。
「冒険者の方々!村長がお呼びです。家まで来て貰えませんか?」
先程の態度から一変した男の口調に、ユーリが答える。
「そんな暇はありません!今晩の夕飯の方が遥かに大事です」
珍しく、プリプリ怒りながら答えるハンター様。
ユーリの怒り口調に震える馬の人。恐らく、先程の戦いを間近で見たのであろう。知らない人が見たら驚くよな普通。
「宴の用意もしてあります。是非、いらして下さい」
その言葉を聞いたハンター様は眼を光らせる。
「た、たくさん食べても良いんですか?」
馬男の肯定に、顔を輝かせるハンター様。
「こんな所にいる場合ではありません。二人とも早くそんちょーさんの所へ行きましょう。夕飯が待っています」
俺達を引っ張る力は強く、半ば強引に連れて行かれる俺とおねいさん。
この村の食料は大丈夫か?等と心配しながら、引きずられて行くのであった。
腑に落ちない村長の対応に、サラリーマンは一大決心します。
皆様の暇つぶしに少しでも慣れれば幸いです
それではまた次回




