39.ウエスタンブルーム大陸
いつもお世話になりますアリス工房(仮)です
一瞬の暗転!うっすらと視界が開けてくる中、状況を確認する。見た目は先程の祠と呼ばれていた天界人御用達の転移魔法陣があった部屋と何ら造りは変わらない。違いが有るとすればニッコリスマイルの天然系天使様の姿がない位だ。
「二人とも、大丈夫か?」
「ええ、何とか。酔い止めが聞いたみたい」
「うう~。少しきもちわるいです~」
手で口を押さえながら気持ち悪そうにしているお子さま。ミランダさんも、若干だが顔色が優れない。二人は未だ転移には慣れない見たいだ。
「恐らく転移は、成功したと思うのですが現状を把握したいですね。一度、外へ出てみませんか?」
「勿論、二人の体調が戻ってからの話ですよ」
少し休んでいる間。出発前にルルベルさんから渡された、餞別の中に地図があることを思い出した。
「そう言えば、地図を貰っていました」
(旅のしおり)と綺麗な文字で書かれたA3サイズの地図を広げると………何ですかこれは!
恐らくだが、大陸の全貌を描いた形の中に街?なのか何なのか良く解らない絵が書いてある。そこに、顔から手が生えている悪魔が牙をむき出しにしながら尖った何かで指示している。(ここが最初の目的地です)字だけはやたらと綺麗である。
ハッキリ言うと、エトワーレなアニメ好きなお嬢様が書く絵と同等だと思ってもらいたい。解らなければ幼稚園児の書いた絵を想像してくれれば殆ど正解だ。
「良く解らないわ、ナツメ君は読める?」
「読めるわけないです。ユーリは似たような絵を描くから、この地図解るんじゃないか?」
「どういう意味ですか!私も解りません」
侵害だとばかりにプンスカ怒るユーリちゃん。
全く読めない地図(旅のしおり)は、さっさと収納し移動を開始する。一応、字だけは読みとれたので先ずは、コレット村と書かれた字が、現在地から近そうなので目指すことで話は決まった。俺達がいる祠は、大陸の北に位置する場所にあるらしい。これも、字で解読した結果だ。 地図の意味が全く無い!
直線の道を歩いていると、光が射し込んでくる。あれが出口であろう。念のため、入り口付近には転移クリスタルでマーキングをしておいた。ルルベルさんに出発前、今回の旅路では転移魔法を制限されている。何故かというと、魔族に気づかれるのを懸念してだ。今回は、ギリギリまで天界人の介入を相手にバレないようにする。一応、依頼主だし尊重はするがクリスタルでのマーキングだけはさせて貰う。今後のことを考えての事でもある。
祠を抜け出ると目の前には見渡す限りの森林が見て取れる。外気は少し肌寒く感じる。ここが、大陸の北側にいるのが関係しているのか?真冬と言えるほど寒くないのが、唯一の救いかもしれない。森林事態は、俺達がいた大陸と差ほど代わり映えは見受けられないが、要所に見たこともないキノコやツタなどがあるくらいだろうか。
俺は癖で、魔力チェックをするとともに、周囲に魔物の類はいないか探索する。女性陣もそれぞれ、確認と周囲の警戒を行っている。
「ナツメ君。魔物の気配はどうかな?」
「離れた所に複数感じられます。ちょうど、俺達が移動する方向ですね」
「そう、気づかれない様に移動しましょう」
「そうですね。ユーリも、それで良いか?」
コクリと頷くユーリを見て、俺達は気配を消しつつ足早に移動する。気配を消して歩く事、三十分。目の前に体長二メートルくらいのデカいイノシシを見つける。
「ミランダさん。見たことありますか?」
「初めて見るわ。ユーリちゃんは見た事ある?」
「私も初めて見ます。おいしそうです」
木の上からイノシシを見つめる眼は、獲物を狙う狩人。食べる気満々である。
「今日は朝ご飯を未だ食べていません。お腹ペコペコです」
「そう言えば、そうだな。あいつは、ユーリに任せるよ」
俺の言葉を聞いた腹ぺこ姫は嬉しそうに頷くと、木の上からダイブする。上空で盾を召還させると魔物の脳天への一撃!食事中であったイノシシはあっさりと倒される。倒したイノシシは解体処理を施して食事を取るべく場所を探すため暫く彷徨くと、岩場のある場所が見つかりここをキャンプ地とするべく準備を行う。簡単な下処理を行ったイノシシを、火の魔法で起こした焚き火で焼きながら出来上がりを待つ。一応、周りを警戒する為に、魔物除けの壷は設置してある。
出来上がったイノシシを両手に持ちながらおいしそうに口一杯に頬張るユーリちゃん。
「すごく、おいひいです」
食事をとりながら、今後の行き先と方針について話す。
「ナツメ君はこれからどうするつもり?」
おねいさんは、小降りの肉と朝からお酒ですか!と突っ込みたくなるグラスを持ちながら優雅に訪ねてくる。グラスの中身は、最近お気に入りである俺の世界にあるワイン(赤)だ。
「そうですね。このまま、街や都市に行って助けにきました。何て、言っても信じて貰えないと思います。天界人の存在は隠さないとイケないので。ここは、この大陸に迷い込んだ冒険者!と言う設定で旅をしましょう。それでもって、情報を集めながら王都へ向かう。ある程度戦いの実績なんかもあげれれば、王族に取り入れるかも知れません。そこは、成り行きにまかせましょう」
おねいさんは、あっけらかんとした顔で俺を見つめる。
「ナツメ君は、随分と慣れた感じで話すのね」
「そうですか?これでも昨日の夜、結構考えたんですよ」
流石に仕事で慣れてます。とは言えないよな。
「分かったわ。ナツメ君の作戦で行きましょう。ユーリちゃんもそれで良いかな?」
「私は、お二人について行くだけです」
皆の意見も纏まった所で、焚き火を消しコレット村へ向けて移動を開始した。朝から大量のイノシシ肉を食べたお子さまがご満悦なのは言うまでもない。
ユーリの持つ超遠距離索敵能力によれば、指の指す方向に複数の生体反応が有る様だ。そのうち、あっちの方向にデカい気を感じる!とか言いそうで恐ろしい。
気配を消しつつも、早めに村にたどり着きたいので今回は三人ともバーニアスラスター搭載型レッグアーマーを装備し、ホバー状態で高速移動している。木々をくぐり抜ける姿はさながら○い三連星だ。敵を見つけたら是非、ジェットストリーム的な奴をお見舞いしたい。そんなアホな事を考えていると、お日様も丁度テッペンに差し掛かった頃。漸く、森林地帯を抜けた。
少し先には草花が生い茂る平原が広がる。道は舗装などされて居らず、伸び放題の雑草が高いものだと体の半分を埋め尽くす。周囲には幾つかの魔物の反応があり、草むらを突っ切るのもアレなので、少し離れてはいるが手頃な大きさの岩が鎮座しているのが見られる場所まで移動することに決めた。そこまでの距離は飛翔魔法で移動することで話は纏まる。
飛翔魔法を発動させ一気に岩場に辿り着く。三人で座っても余裕の広さがある岩で、高さも四・五メートルはあろう一枚岩だ。
「ナツメさん。あっちに村らしき場所が見えます」
またもや、ユーリが指さす方向には、確かに人が住んでいそうな家が見える。この大陸、初めての村を発見した。
「移動手段をどうします?」
「このまま飛翔魔法で移動するのはマズいわ。面倒だけど歩いて行きましょう」
「そうですね。ユーリは周りの警戒を頼む。草ばかりだと視界が悪すぎる」
「は~い」
元気に手を挙げるユーリちゃん。前衛は俺、真ん中はおねいさん、後方はお子さまの隊列で村へ向けて出発する。さながら、RPGの様な布陣にどこかBGMが聞こえてきそうだ。
途中、邪魔な草を剣で切り裂きながらの移動。あまりに鬱陶しいので魔法を使う事にする。
精霊魔法風属性・ウインドカッター
付き出した手の平から風の精霊の力を借りた魔法で、前方に風の刃で切り裂く術だ。今回は少しアレンジする。範囲を狭め、距離を重点的にした構成で発動させた魔法は目の前の草をサクサクと切り裂いてゆく。その距離十メートル!
「ほえ~、便利な魔法があるんですね」
「最初からコレで移動すれば良かったわ」
「無茶言わないで下さい。ミランダさんと違ってそんなに連発して使えません」
長めの草は魔法で刈り取り歩を進めていく。途中、久しぶりにお目にかかるラビットちゃんは、うちのハラペコハンターにロックオンされ今晩のおかずとなる。草原を伐採しながら進んでいくと、人の手が入ったと思われる舗装された場所に到着した。少し歩いていると、魔物除けで作られた木の柵が見えてくる。高さも二メートル位はある。木をクロスさせて並べられた柵はとても頑丈そうだ。俺達は柵伝いに移動すると前方に入り口らしき場所を見つける。そこには、屈強そうな男が身の丈を越える槍を装備し立っている。
「お前たちは、獣人ではないな。何処から来た」
俺達を呼び止める門番の男。見た目は人の出で立ちではあるが、獣耳と尻尾がある!髪は銀色で鋭い目つきに犬歯が見え隠れする口元。体つきは鍛え上げられた筋肉がこの男の強さを連想させる。これが、獣人族。第一村人発見の瞬間である。
「俺達は冒険者だ。変な魔法陣に吸い込まれて、気が付いたらこの草原に居た。状況が知りたいので、話を聞いて貰えないだろうか?」
あらかじめ、考えていた台詞を言うと、考え出した門番の男は少し待てと促し仲間の所へいってしまった。
「話、聞いて貰えますかね?」
「分からないわ。ダメそうだったら、別の村か町へ行くしかないわね」
「そうならないと良いんですが」
そんな話をしながら十分程待たされると、村から屈強そうな二人の男が現れる。
「ついて来い。村の長が話を聞いてくれる」
どうやら中へ入れてくれるらしい。これは幸先が良さそうだ。当然であるが、緊張の糸は切らさないでいる。
村の中を尻尾フリフリさせながら歩く男の姿は少し滑稽に見える。出来れば女子が見たいと思うのは男の性か、そんなしょうもない考えを払いのけ村を観察する。
村の造りはどれも木造平屋建てになっている。イメージはログハウスといった所だ。丸太を重ねた造りは頑丈そうでガラス窓こそないが、立派な造りに見える。村の住人は、いるのは気配で解るのだが見かけない所をみると、俺達は警戒されていると解釈できる。確かに、見たこともない種族が現れれば警戒もするよな。先ずは村に入れてくれただけでも良しとしておこう。
「ついたぞ。ここが、長の家だ」
案内された家は、長と言うだけあって他のログハウスより大きな造りになっている。入り口には魔物の頭が骨となって飾られている。何かどっかの部族を思い出す。
ユーリとミランダさんを見ると緊張した趣で頷く。俺も頷き返すと、案内された村長がいる扉を潜る。さあ、聞かせて貰うぞ、この大陸の現状。ここから始まる俺達の依頼!興奮を抑えつつ、ゆっくりと目の前にいる村長の顔を見つめるのであった。
無事に村へ辿り着いたサラリーマン。これからどうなって行くのか!
サラリーマンは獣人族相手に奮闘します!
皆様の暇つぶしに少しでも慣れれば幸いです
それではまた次回




