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サラリーマンの異世界奮闘記(仮)  作者: アリス工房(仮)
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38.旅立ちの日

いつもお世話になりますアリス工房(仮)です

良い匂いがする。少し甘ったるいが、決して気分を害さない心地良いかほりだ!

これは、あれだ。奮発してちょっぴり高めの宿を取ったのが良かったのだろう。それに、ここの宿は布団に備え付けのクッションまで置いてある。ふにふにしていて、とても柔らかい。何故か?少し生暖かい気もする。


「あん!」


艶めかしい声が聞こえ段々と頭が冴えてくる。ここは、異世界!部屋に花ぐらいは飾ってあっても、決して芳香剤の類は存在しない。ましてや、変な声を発する生暖かいクッションなど有るはずがない!


脳が覚醒する中、うっすらと少しずつ重い瞼を開いていくと、頬を染めた美少女がベットの中にいやがった。当然の如く、豪快にベットから転げ落ちた俺は添い寝している人物に文句を言う。胸を触ったのは置いといて!


「なんで、あんたが此処にいるんだ。ホラーすぎて心臓が止まるかと思ったぞ!」


マンガなんかでは良くある展開だが、実際に体験するとマジでビビる。元々、おばけや霊の類はあまり好きではないので嬉しいというよりは、恐怖の方が遙かに勝る。


「ナツメ様!おはようございます。お迎えに伺いました」

ベットの上で気にした素振りも見せず、シレッと挨拶する天使様。


「おはよう。確か、待ち合わせは一階のロビーではなかったか?」

ベットから転げ落ちた体制のまま、聞く。


「皆様。まだ寝ていらっしゃるみたいだし、折角ですのでナツメ様の寝姿を見てみたくなりお邪魔した次第です」

「それから、胸をお触りになられたのはお二人には内緒にしておきますね」


「そ、そうですか。それは、どうも」

チッ!覚えていやがった。抜け目がないな、この天使様!

「あの~………ルルベルさん。目が覚めたので、そろそろ着替えたいのですけど席を外して貰えませんか?」


「ああ、お構いなく!」

頬に両手をあてながらベットの上で正座している。この天使、部屋に居座る気満々だ。アホ天使を抱え上げ部屋から叩き出したのはそれから間もなくの事である。外から聞こえる抗議の声は全力で無視しつつ、手早く着替えた俺は、隣でピーピー騒ぐ天使を引き連れ一階のロビーへ降りると、さっさとチェックアウト的な物を済ませ二人の仲間を待つことにした。



アホ天使に、かなり早く起こされた俺は結構な時間待っている。すると、ようやく。二人の姿が現れる。ユーリが時間通りに来ると言うことは、昨日はおねいさんと一緒に寝たな。


「ナツメさん。おはようございます」

真っ先に駆け寄ったお子さまは、胸を張って挨拶する。今日は寝坊しませんでしたよ!と言わんばかりに。

「おはよう、ユーリ」

まあ、バレバレではあるが健気にも努力したお子さまの頭を撫でて上げる大人な対応を見せる俺である。

「おはよう、ナツメ君。随分と早いわね、てっきり私たちが待つと思ったわ」


「おはようございます。まあ………色々ありまして、目が覚めました」


全員が揃ったのを見計らった天使様は挨拶するとともに、今日の目的地に向けての転移魔法が使える場所までの案内役を努める胸を説明してくれた。


「転移魔法陣がある場所までは乗り物を使用しますので場所を移動します」

その声に反応したユーリちゃんは嬉しそうに聞き返す。

「天使様の、乗り物に乗れるのですか。楽しみです」


「期待して下さい。(わたくし)の愛車です」


俺達は、ルルベルさんの言う天界人が使用する乗り物が停めてある場所まで歩いて移動する。都市を離れ、歩かされること三十分。前方に怪しい銀色のシートに包まれた何か?が目に入る。どうやらあれが、天界人の乗り物らしい。目立ち過ぎではないか?


得意げにシートを外すルルベルさん。目を輝かせるユーリ、少し興味があるのか目をギラ付かせるミランダさん。固唾をのんで見守る中、シートは外される………何だコレ?

「わあ~、何か、かっこいいです~」

大喜びのユーリちゃん。

「初めて見るわ、見たこともない乗り物ね」

感心するおねいさん。

俺の感想は………ルルベルさん!何ですかこの乗り物は?どこからどう見ても、自転車にリアカーが取り付けてある物にしか見えないのですけど!

「あの~、ルルベルさん。これは、属に言うママチャリと言う奴ではないですか?」


「流石は調りつ……ゲフンゲフン!ナツメ様。物知りですね」

今、この人。サラッと俺の正体言いそうにならなかったか?幸いにも、チャリンコに興味津々の二人には聞こえなかった様だが。この人、よく見ると、かなり天然さんなのでは?そんな考えをしていると、そんな事はおくびにも出さない天使様は仰る。

「皆様。準備が整いましたら後ろの座席にお乗り下さい」


「ははっ。座席ね」

物はいいようである。やはり俺達は、リアカーに乗るらしい。三人が何とか座れるスペースがあるリアカーに乗り込むのを確認したルルベルさんは、自ら運転する様です。念のため、自転車には乗れるのか聞いてみると誇らしげに仰られた。

「同然です。今朝も、愛車のタイタニックさんで参りました」

タイタニックさん?天使様はどうやら、自分の自転車に名前を付けているご様子。それにしても、ネーミングセンスが微妙だ!


「それでは、出発いたします。揺れるかもしれませんので気をつけて下さい」


ユーリやミランダさんは、未知の乗り物に興味津々だ、多分であるが俺の予想だと動かない気がする。


「ん~っ。んーーーっ!」


ルルベルさんの何とも言えないかけ声は聞こえるが、案の定出発する兆しがない。まあ、当然である。リアカーに俺達を乗せた状態で、あまり舗装が行き届いていない道を進むのだからそれなりの力がいる。見た感じ力任せに漕ごうとしている所を見ると、魔力も使っていないだろう。


「進みませんね」


「この乗り物は動くまでに時間が掛かるのかしら?」


二人は、自転車がどの様にして動くのかイマイチ解らないらしくお互いきょとんとしている。


「ルルベルさん。運転代わりましょうか?」

助け船をだすと、振り向いた天使様は顔を真っ赤にしながら肯定した。

「申し訳ありません、代わっていただけると助かります」

そんな声を聞いた、うちのお子さまは元気に手をあげる。

「はいっ。は~い!私。乗ってみたいです」

正直不安だが、リアカーが補助輪の役割も果たしているし、転ぶこともないだろう。それに、ユーリのパワーをもってすれば動きそうだ。


ルルベルさんに自転車の操作方法を教わったユーリちゃんは、頬を上気させながら自転車に跨がると嬉しそうに話す。

「えと、出発します。ゆ、ゆれると思うので気をつけてください」

おっ、いっちょ前にルルベルさんの言葉をパクったな。恐らく意味は解っていないと思う。


緊張気味に漕ぎ始める。やはり、脚力が尋常ではないお子さまは力強く蹴るとさっきまでが嘘のように自転車がリアカー共々ゆっくりであるが動き始める。暫くは平坦な真っ直ぐな道で、これは有りかもと思っていたがゆるやかな下りのカーブに差し掛かり事態は急変した。ユーリはスピードを緩めることなく下りに入り、むしろどんどん加速する中ついには舗装された道をはずれ、草むらを突っ切る形となる。


「わっ。ユーリ!ハンドルだ。ハンドルを切れ」

俺の指摘を理解出来ず、悲鳴をあげるユーリちゃん。

「ハンドルってどうやったら切れるのですかっ?」

ルルベルさんの説明を理解していなかったお子さまはテンパリ状態。目の前には森が見えてくる。しかも、運の悪いことに大きな巨木が前方を塞いでいる。

「ユーリっ!ブレーキだ。ブレーキ!」

俺の必死の説明に、後ろから声が聞こえる。


「あっ。すみませんナツメ様。ブレーキの説明を忘れていました」

青ざめるオレ!おねいさんは、腰にしがみついている。


「きゃーーーー。ぶつかる~!」

「ナツメ君。死ぬ時は一緒よ!」

「縁起でも無いこと言わないで下さい。この、アホ天使ぃ~!」


衝撃に備え、身を堅くする俺とミランダさん。………すると、目の前に突如魔法陣が現れると自転車は勢いそのままに、吸い込まれて行くのであった!


              

○□○□○□○□○



薄暗い洞窟。明かりと呼べる魔力石を使用したライトが、この洞窟に何者かが関与した場所だと感じさせる。決して広くはないが俺達全員が横並びになっても壁に当たらない程度には広い。床も石畳になっていて、多少デコボコもあるが自転車で通るのに支障はない。


何故?冷静に状況を分析出来ているのかというと、ほんの数分前に魔法陣から飛び出し目の前の壁にぶつかる寸前で、ルルベルさんが決死のダイブを敢行し、ユーリの背後から自転車のブレーキを握ると、ママチャリ特有のけたたましい金切り音とともに壁まであと数十センチの所で止まり今に到る。


「ふーっ。あぶないところでした」

ユーリに抱きついたままの姿勢で安堵のため息をもらす。


「壁に激突するかと思いました」

目の前の壁を凝視しながらぐったりするユーリ。一方、俺はおねいさんの情熱的なホールドにより身動きがとれないでいる。

「ミランダさん。危機は回避出来た様ですよ」


「えっ。私たち無事なの?」

うっすら涙目のおねいさん。これはこれで可愛いっす!


「皆様。無事でにゃにひょり………いひゃいでひゅ」

わたくしが、危機を回避しました的な顔つきにイラッした俺は、アホ天使の両頬を引っ張る。そもそも、ユーリにブレーキの説明をしていればチキンレース紛いの走行をしなくて済んだ物を、これはイジメではない。お仕置きである!


それにしても、良く延びるホッペタだ。以外と楽しい。

「ナツメ君。その辺にしてあげて。彼女も悪気があった訳ではないわ」


「そうですね。お仕置きを完了します」


少し赤くなった両頬を抑えながら抗議する天使さん

「ふ、不可抗力です。わたくしも忘れてしまうことぐらいあります」


「そう言う事にしておきます。………で、ここは何処なんですか?」


「こちらは、転移魔法陣がある祠でございます。本来は天界人専用なのですが、今回はこちらを使用して移動してもらいます」


「ちなみに、一つ質問があるのですが?」


「はい、何でございますか」


「先程、出現した魔法陣は唐突に現れたように見えたのですが、何か条件が揃わないと発動出来なかったのですか?」


「いえ、そのような事はございません。タイタニックさんがある程度動いたら発動させるつもりでいました…………はっ!」

危険を感知した天使さんは、ほっぺたを抑えながら壁際まで後ずさる。ちっ!しゃべっていて気が付いたらしい。そう、ユーリの漕ぐ自転車がアホみたいなスピードを出す前にさっさと魔法陣を発動させていれば、こんな事には、ならなかったのだ。


手の間接をボキボキならしながらお仕置きパート二を行使すべく近づく俺。さながら、胸に七つの傷を持つ人の出で立ちだ!


「ひぃ~。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!あまりにも、風が気持ち良かったので……つい」

必死に謝り倒す天使様。出会った頃の威厳は何処へやら、これくらいの方が堅苦しくなくて良いのだが巻き込まれるのはめんどくさい。そんなやり取りを終え、ルルベルさんに僅かばかりではあるが餞別まで貰い俺達三人はウエスタンブルーム大陸へ移動すべく転移クリスタルに魔力を込める。


「皆様。お気をつけて下さい」

笑顔で手を振るルルベルさん。


「いってきま~す!」

ユーリの何とも言えないかけ声と共に、俺達は出発するのであった。









ついに出発するナツメ逹一行。この先、何が待ち構えているのか!

サラリーマンは別の大陸でも奮闘します






皆様の暇つぶしに少しでも慣れれば幸いです

それではまた次回

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