31.サラリーマンの受難
いつもお世話になりますアリス工房(仮)です
今回も、三話構成でお届けします。最近!この構成で定着してきた感じがします。もう少し、細かくした方が良いのか?悩みどころです。あまりこだわりは無いですけどね!
町外れのとある場所に俺はいる。成り行きで首を突っ込んでしまった事件?とも言える出来事を対処するべく連絡を取る為だ。数回のコール音と、ともにお目当ての人物が現れる。
「元気そうだなめぐみ。聞きたいことがあるのだが、時間取れるか?」
「どうしたのにゃ?改まって、何か相談事かにゃ?」
相変わらずのキャラで答えるめがね。
「お前、俺のいない間にこの世界に来たよな。リセラさんと言う女性に心当たりあるだろ?実はそのことで報告と相談したいことがある!」
「な、何のことかにゃ?」シラを切ろうとするめがねに俺はある物を見せる。
「うにゃあー!そ、それは?」
身を乗り出し凝視する。
「見ての通り、何者かの犯行で壊れてしまった。そこでだ!もう一度、塗装の依頼をしてくれたら、今回の事は見なかった事のしてやる。どうだ?」
「うみゅう。ち、ちなみに断ったらどうするにゃ?」
「そうだな。特に何もないが、二号機は捨てちゃおうかなあ」
「そ、それはダメにゃ!折角この世界に密入こ・・ゲフン、ゲフン」
こいつ!今、密入国とか言わなかったか?
めがね曰く、この世界で使われているアカネの実を使用した赤色は魔力を宿した特殊なインクになり会社でも一目置かれている。今回は、めがねの趣味も兼ねているが実験的に防具類に着色して効果を見極める為の試作品を依頼したらしい。何処までが本当か解らないけどね。
「仕方がないにゃ。夏目っちには、別のパワードスーツを渡すにゃ!」
パワードスーツって何だ?色々と突っ込みたい所だが、代わりの物を提供して貰える様なのでその辺は聞かなかったことにしよう。
「解った。それで頼むとして、また何かのパクリとかでは無いよな!その、パワードスーツとやらは!」
「何を言っているのにゃ!今回の物は会社指定のれっきとした試作型パワードスーツにゃ!」俺の目を見ないで喋るめがねに一抹の不安を感じるが、一応は会社指定の物だし変な奴では無いことを祈ろう。
この時の俺は会社指定と言う言葉に踊らされ、めがねの本質を見誤っていた。そもそも、コイツは自分の琴線に触れないと動かない奴だと言うことをすっかりと忘れていたのである。そう、送られてきたパワードスーツを目の前にした俺は改めて、めがねの恐ろしさを思い知るのであった。
赤い彗星の再来!
これだけ言えば勘の良い方は解ると思う。俺の目の前にある試作型パワードスーツ?と呼ばれる甲冑はどこから見てもシ○ンジュにしか見えない!赤い色こそ未だ塗られていないが、こんな物に赤色を着色したらそのまま赤い彗星が再来してしまう。
「カッコいいです。ナツメさん!」
お子さまは既に目をキラキラさせながらシ○ンジュを見ている。横でおねいさんは溜息をつきながら話す。
「相変わらずナツメ君は、私の考えを良い意味で覆してくれるわ」
「素晴らしいです!私はこの作品を全力で完成させます!」
リセラさんはやる気満々でいらっしゃる。
三者の感想は置いといて、先ずは今後の方針を決めなくてはならない。コンテストまでの日数は後、二週間。塗装はリセラさんに任せるとして、その間の護衛は俺達が行う。そこまでは良いのだが、決め手となる良質のアカネの実を確保しなければならない。折角参加するのだから、コンテストに勝ちたいのは俺達全員の意見が一致した。
良質のアカネの実は、森の中にあり、魔力が沢山宿っていればいるほど良質な実が取れる。ただし、当然の事ではあるが森の中には魔物が存在し、アカネの木にはドラゴンが住み着いている。前回、リセラさんはそれを取りに森へ行ったのだが魔物に襲われ断念したとの事。
であれば、俺達の出番である。三人で採取に向かってしまうとリセラさんの護衛が出来なくなるので一人はお留守番をしなければならない。この人選に大変悩んだのであるが、今回はユーリをお留守番させることにした。理由は単純である。索敵範囲の広さと近接戦闘は、このお子さまがブッチギりに強い!ただし、うちの眠り姫!油断すると直ぐに夢の世界に旅立つ。リセラさんの護衛を任せても平気か本人に訪ねてみると自信満々に答えた。
「お任せ下さい!私、お留守番は薬草採取の次に得意です」
得意顔で答える眠り姫。
一抹の不安もあるが今回は仕方がない。護衛はユーリに任せるとして俺はミランダさんとアカネの実を採取しに森へ向かうことになった。
「ナツメ君と初めての共同作業ね!」
嬉しそうに話すおねいさん!此方も心配なんですけど。
「すみません。新しい甲冑を用意して貰ったばかりか、アカネの実まで取りに行ってもらって、これでコンテストには間に合いそうです」
申し訳なさそうな顔をしながらもリセラさんは喜んでいる様だし、さっさと実を採取しに森へ急ごう。
リセラさんから良質な実の場所を聞くと、この前ドラゴンに追いかけられていた森が良く取れるとのこと、森の中央付近にあるアカネの木が一番良質な実がなっている。
アカネの実はリンゴくらいの大きさで真っ赤な実だ。良質な物になると大きさも普通の実より一回りくらい大きく、とても綺麗な赤色をしている。森のルビーとも呼ばれ大変高価な値が付けられていて、この町では良くギルドに依頼が出されている程だ。ただし、特別な魔力が宿っているアカネの木の近くにはグリーンドラゴンが数多く住み着いているので、簡単には採取出来ない様だ。
「では、行ってきます」
お留守番はユーリに任せて、ミランダさんと町の外まで移動する。本来は歩いて移動するのだがそこは飛翔魔法で森の入り口まで移動。今回は、スピード採取を心掛けているので帰りも転移クリスタルを使うつもりだ。一応、クリスタルの実験も兼ねている。
「たしか、森の中央付近にある木が良い実が取れると言ってましたが、アカネの木を知らないのですけど解りますか?」
「それは任せて頂戴。アカネの木事態は見たことあるわ。魔力を強く感じる場所へ移動すれば目的の場所へたどり着くと思うわ」
魔力の強さ云々は俺よりもミランダさんの方が専門分野なので今回はお任せ状態。俺はもっぱら周りに魔物がいないかだけを注意して森の探索を開始する。
森の中に入ると多数の魔物の気配を感じられる。当然、ドラゴン以外の魔物も存在する訳だがなるべく気配を消しつつ移動を試みる。
数刻の時が過ぎ森林内を徒歩で移動していると俺でも解るくらいの魔力を感じられる木を見つける。一際大きくそびえ立つ木、その大きさは木の外周だけで十メートルはありそこから放出される魔力はかなりの量で、恐らくお目当てのアカネの木であろう。ただし、当然の事ではあるが三体のドラゴンが木の回りに居座っている状態である。幸い未だ俺達の存在には気が付いていない様だ。
「あの木から魔力を感じるのですがひょっとしてあそこになっているのがアカネの実ですか?」
「そのようね。実物は私も初めて見るわ。でも、周りのドラゴンを何とかしないと採取は難しそうね」
上空から直接実を取ろうにも、周りの木が邪魔で思うように実が取れそうに無い。正面から突貫するのも無謀だしどうしたものかと考え倦ねているとおねいさんが妙案とばかりに話す。
「良いこと思いついたわ!」
おねいさんは耳元で作戦内容を話すが、吐息のくすぐったさと良いかほりで内容がサッパリです。周りに誰もいないのに何故に?ヒソヒソ話ですか?
「ミランダさん!作戦内容が頭に全く入って来ません。周りに誰もいませんし、もう少し離れてくれませんか?」
仰け反りながら距離を取るとおねいさんは 残念そうな顔で仰る。
「んもう。男の子はもう少し強引な方がモテるわよ!」
何故か?少し怒られた。
そんなやり取りをした俺達は、おねいさん提案の作戦に移すべく行動を開始する。
その作戦とは簡単である。俺はドラゴンがいる場所まで移動すると拾った石を投げ、大声で挑発する。すると、怒った三体のドラゴンは追いかけ始める。当然、逃げるのだが逃げ切ってしまうと元の位置に戻ると思われるので、一定の距離を保ちながら森の中を逃げまどう。その隙を見計らったおねいさんは悠々と飛翔魔法でアカネの木に近づくと、アカネの実をアイテムウインドに収納しまくっている。
強制的に行われた鬼ごっこを一時間位やらされ、森を抜けると気が付けばドラゴンの数が六体と倍に増えている。今回は、特に討伐する意志も無い俺は上空に確認できたおねいさんを見つけ、お目当ての実が採取出来た事を確認し、そのまま上空へ魔法で飛び上がり合流した。
「散々な目に遭いましたよ。それで、アカネの実は取れましたか?」
「ごくろうさま。お陰で沢山取れたわ。これも、ナツメ君が囮になってくれたからね!」
悪びれる様子もなく、笑顔で答えるおねいさん。作戦成功よ!とばかりに見せられたアカネの実は、ボウリングの玉程の特大サイズだ。この前、お子さまが拾い喰いしたリンゴサイズより遙かに大きい実に大変満足し帰還するのであった。下でギャーギャーとうるさいドラゴンはそのままにしたけどね!
転移クリスタルで魔法陣を設置しながら聞いてみる。
「そう言えば、今回の報酬でお買い物に付き合って欲しいと言ってましたよね。リセラさんに届けたら、買い物に行きませんか?」
「こんな中途半端な時間から買い物なんてイヤよ。女の子は買い物に行くときはオシャレするものよ!」
あっさりとフられました。お出かけは明日にしなさい!と約束され、そのままリセラさん宅へ移動をするのであった。
買い物行くのにオシャレとは?俺には良く解らない。このことをめがねに話したら、いつものにゃあ言葉では無くガチで二時間程、怒られました。
女心は難しい!
俺達が?俺が頑張って囮役で逃げまどって採取したアカネの実をリセラさんに渡すと、もの凄く驚いた口調でアカネの実を手に取りながら聞いてくる。
「一体どうやって取ってきたんですか?最上級品ですよこれ!」
事の経緯と作戦内容を説明すると、驚愕するリセラさんに追い打ちとばかりにおねいさんは、アイテムウインドから更に取り出す。
「幾つ必要か解らなかったから、沢山取ってきたわ」
その数、二十個程になるアカネの実を前に完全に固まってしまうリセラさん。
彼女が言うには、俺達が取ってきたアカネの木の周りにはドラゴンが最も多く住み着いていて人が近づけないエリアらしい。普通、六匹のドラゴンに追いかけられて無事なのが信じられないのと、今回採取したアカネの実はコンテストで貰える賞品よりも遙かに最上級品とのこと。
俺達には、特に使い道がない実なので無償で差し上げると言ったら涙を流しながら喜んでくれた。何でも、後十年は戦えるそうだ。
この人は、何と戦うつもりだ!
ちなみに、お留守番のユーリちゃんは俺達が到着した頃にはすっかり夢の世界へ旅立っていた。リセラさんに聞いてみると。
「ユーリさんは、みなさんが出発してまもなく寝てしまいました」
予想通りである。ここは、お仕置きが必要だ!ミランダさんとリセラさんに合図を送るとみんなで一斉にクスグリ攻撃を開始する。
「ふみゃああああああ~」
情けない声を上げながら飛び起きる眠り姫!
「わ、笑い死ぬかと思いました」
頭ボサボサで反省の色がないお子さま!
「お前、昼間寝過ぎて夜寝れなくなってもしらないからな!」
「へ、平気ですよぉ。それよりナツメさん。私、お腹が空きました」
腹が立ったのでもう一度クスグリ地獄をお見舞いしたのは言うまでもない。
「コンテストまで後、二週間です。気合いを入れないといけません!先ずは腹ごしらえをしなくては!」
手を広げながらみんなに訴える眠り姫。全然、説得力がない。
「明日は、俺とミランダさんはお出かけするからユーリはまたお留守番だぞ!」
「えー!明日もお留守番ですか?二日もお留守番したら、体が鈍ってしまいます」
必死の訴えも空しく、前科があるユーリは渋々と了承するのであった。
不機嫌なユーリに対してとってもご機嫌なおねいさんは気合い入りまくりである。
この後、俺はめがねのありがたいお説教を二時間も聞かされるとは知らず意気揚々と会社に連絡すべく、リセラさんの家を後にするのであった。
おねいさんとのデートに、サラリーマンは奮闘?します。コンテストの運命は果たして!
皆様の暇つぶしに少しでもなれたら幸いです
それではまた次回




