20.先輩と後輩
いつもお世話になりますアリス工房(仮)です
早いもので20話まで来ました。未だ未だ拙い文章ですが、今後ともよろしくお願いします。
今回、田中さんに頼み込んで新人教育用の案件を用意して貰った。危険予報指数は58%だ!
本来、彼女は製造課の人なので現地教育はしないのだが、どうしても異世界・現地に居る冒険者達を見て貰いたいと思いダメもとで課長に申請した所。あっさりと受理され拍子抜けした。
「自分がデザインした服に着替えてこい。一着くらいあるだろ?その他は俺が準備する。それとも、此処にある冒険者用の服で出掛けるか?」
「嫌です、先輩!そんな変な服着れないです。着替えてくるので、待っていて下さい」
言ってくれるな後輩よ。その変な服とは、この会社の冒険者用標準装備だぞ。
着替えてきた後輩を見て驚いた。薄青色のチュニックにハーフパンツの出で立ち。ここまでは可愛らしい服装なのだが、幾何学模様の柄がウネウネとまるで生きているかのように動いている 。
「後輩よ、その服に魔力を感じるのだが、一体何だそれは?」
「わかりますか!この服には耐水・耐火の魔力加工。及び防弾の役割も果たしてあります。拳銃の弾丸ぐらいでしたら余裕で防げますそれから……」急に饒舌に話し出す後輩。予想通り、コイツは好きなことにはテンションが上がるタイプみたいだ。
一通り準備が整ったのを確認し、会社標準装備を彼女に説明した。現在、異世界の入り口とも言えるビルのエレベーター内に俺たちはにいる。
「異世界に行くのは当然初めてだよな。ちゃんと酔い止めは飲んだか?」
「大丈夫です。何だか、緊張します」 少し緊張気味に答える。
「では、出発するぞ。すみません。お願いします」オペレーターに準備が整ったことを伝えると、一瞬揺れたことを感じる。すると、急に視界が暗転。目が回る感覚に捕らわれたかと思ったときには、既に二人の姿はエレベータ内から消失していた。
(異世界転移完了しました)
機械的な声が聞こえると二人は異世界に無事転送されたことを実感する 。
先程までのエレベータ内にいた時の景色とはまるで違う事に驚く。
「ここが異世界……」ポツリとでた言葉に、段々と実感が湧く。
少し落ち着き見渡すと、自分達がいる所から離れた場所には先が見えない程の、森林が生い茂っている。周りには、永遠続くかと思う程の大平原が見て取れる 。
「ここが俺達がいる世界とは違う別世界だ。ボーッとしてないで荷物のチェックするぞ!」慣れた手つきでアイテムウインドウの中身をチェックした後は、魔力の確認をする。どうやらこの世界に精霊は存在するようだ。これは、精霊魔法が使えるぞ!
横で後輩もブツブツ言いながら自分の荷物を確認している 。
今回受けた案件とはオーソドックスな代物で、これから起こるであろう出来事に対して対象者をバックアップするのが主な仕事だ。その対象者が俺達の目の前に生い茂る森林を抜けるまでが護衛期間と予測された。
危険予報指数は58%
先ずはその対象者を見つけださなければ護衛も出来ない。闇雲に探しても当然見つかる訳もない。そこで、オペレーターを務める山田さん(天使様)に連絡し対象者の場所を大まかではあるが調べてもらい其処へ向かって歩き出す ことにする。
暫く歩くと冒険者らしき集団を見つける。すぐさま問い合わせし、目的の人物で有ることが判明。どうやら、その中の魔導師らしき人物が対象者のようだ。ここからが本番である。
「対象者を見つけたぞ。気づかれないように後をつける」それだけ言って、冒険者の尾行を開始する 。
「なんか私達、犯人を尾行する刑事見たいですね。」余裕が出てきたのか話しかけてくる 。
「そうだな、あんぱんと牛乳はないけどな」軽口で答えていると森の中を進む冒険者達に変化が起きる。どうやら、魔物に遭遇したようだ。俺は周囲を索敵すると冒険者の前に八匹の狼に似た魔物を認識する 。
援護しやすい位置に移動した俺は、後輩に
「魔導師を援護するので周りを気にしていろ。何かあったら、直ぐに教えろよ」取り出した空圧砲の撃鉄を引きながら指示を出す 。
「わかりました」彼女も答えて、短剣を取り出し木陰に隠れながら辺りを警戒し始めた。
前方では、冒険者達が戦闘を開始する。魔導師の動向を意識して観察していると側面に一匹魔物が姿を現すが彼等はそれに気づいていない。
空圧砲をその魔物に狙いを付け打つと直撃した。狼は声を上げるまもなく息絶える。一瞬、気づかれたかと思ったがどうやら取り越し苦労の様だ。
その後の冒険者達は狼達を全滅させた模様。現在、怪我の確認やら魔物を解体している人や休憩などをしている。
今の戦いぶりを採点すると、彼等は未だ強くはない。今後のことも踏まえて、索敵範囲を強化し早めに対処した方が良さそうだと結論づける。
森の中に入ってから五.六時間くらい経過しただろうか!日も大分傾き始め、前を歩く冒険者達は少し開けた場所で止まり野営の準備をし始める。今晩は、ここで野宿するつもりらしい。
それを確認すると、俺達も今日は野宿する事を後輩に伝える。彼等とは少し離れた場所に丁度お誂えの向きの岩場を見つけ、ここで今夜は泊まることにした。
「先輩、こんな所で寝て魔物に襲われたりしませんか?」心配そうに彼女は聞いてくる 。
「それは大丈夫だ。俺は周囲、三百メートルくらいなら魔物を探知出来る。あと、これの設置を頼む」彼女に魔除けの壷を数個渡し、用途を説明してから設置させる。
「野宿は初めてだよな?緊張すると思うがしっかり寝ないと明日バテるぞ」
「緊張はしていますが大丈夫です。私、偶にイベントとかで野宿することがあります」
野宿をしたことが有ることに素直に驚いた。どんなイベントに参加してるのだコイツは ?
「そいつは逞しいな。この仕事、意外と向いてるかもしれないな」
「私の仕事は服飾です。冒険者に成りたいのでは有りません。それから、聞きたかったのですがどうして先輩は私を異世界に連れてきたのですか?」真剣な顔つきで質問する。
「お前に異世界を見てもらいたかった。映像とかではなく自分の眼でな。そこにいる冒険者や魔物、景色とか生で見て感じて少しでも服作りに活かせればと思ってさ。どうだ、少しは参考になったか」
少し考えながら彼女は「まだ良くわかりません」素直に答える。
その後は、暫く他愛のない話や簡単な食事を終えて寝ることにした。
こうして彼女の一日は終わり静かに眠りに就くのであった。
翌朝、少し肌寒く感じながら目を覚ます。横ではスースーと寝息を立てる後輩の姿に結構度胸あるなと思いつつ、対象者がいるグループを見に行く。
彼等もまだ寝ているらしく一人たき火の前で見張りらしき男が眠たそうに座っている。
まだ出発しなさそうなので朝飯を作るため、魔法でお湯を沸かし簡単なスープとインスタントコーヒーを煎れ持ってきたパンを準備しているとモソモソと後輩が起きてきた。
「おはようございましゅ。ふぁ」欠伸をしながら挨拶する後輩に
「ちゃんと眠れたようだな。朝飯出来ているが食べれるか?」コーヒーを渡しながら聞くと
「いただきます」カップを受け取りながら答える。眠そうにしながらモシャモシャとパンを租借する姿が何とも可愛らしい。髪の毛は爆発しているけど。
冒険者グループを尾行すること二日目。
今は、昼過ぎぐらいであろう。コレまで数回魔物に出くわしたが、それ程危険には感じられなかった。しかし、彼等の目の前に現れた魔物が結構ヤバい。
見た目は熊の様だがその体躯が普通の熊よりも遥かに大きい。恐らく、グリズリー辺りが魔物化したものだと推測される。あの冒険者達では倒せない。そう悟った俺は 、
「ここで待っていてくれ。アイツ等を加勢する。魔物に襲われそうになったら、大声で俺を呼んでくれ。絶対に助ける」それだけ言い残し駆け出した。
グリズリーが目の前の戦士らしき冒険者を吹き飛ばし追撃しようとした所を間一髪!間に入り魔法陣型盾で魔物の攻撃を受け止める 。
「加勢する!体制を立て直してくれ。魔導師の人は回復魔法は使えるのか?」 俺の質問に、魔物から距離を取った魔導師は「回復魔法使えます」答える。それを聞いた俺は
「仲間の回復を頼む。残りの人は、援護してくれ」魔物から間合いを取りながら剣を構え直し、相手の出方を伺う。
魔物は魔法を唱えている魔導師に眼を付け、動き出すが間に入り牽制する。相手も大振りの攻撃を仕掛けてくるがそれを剣で裁いていると、後ろの二人が弓と斧で援護してくれるが、致命的なダメージには至らない。
空圧砲を取り出し撃鉄に魔力を込める。魔物が痺れを切らして勢いよく突進して来たところを正面に受けて立ち空圧砲を発射!至近距離で受けた魔物は爆発とともに後ろへ吹き飛ばされると動かなくなる。倒したことに安堵している。とその時、俺たちの後ろから悲鳴にも近い大声が聞こえる。
「夏目さん!」彼女の叫び声を聞き振り返ると、もう一匹のグリズリーが彼女に攻撃を仕掛けようとしていた。
精霊魔法風属性・レビテート。風の魔法で体を浮遊させ高速飛行で彼女のもとへ一瞬でたどり着くと、魔物の喉元めがけてそのままの勢いで剣を突き立て着地する。
後ろ手で彼女を庇いながら、様子を伺っていると、起きあがろうとした所を後ろから援護に来ていた冒険者達によってトドメを刺され戦いは終わった。
「怪我はないか?」彼女に問いかけると
「はい。私は大丈夫です。でも、夏目さんが!」俺の肩口に目線をやりながら答えてくる。
実は、先程彼女を助けたとき魔物から一撃もらっていた。超痛いです…。
駆け寄ってきた魔導師の人に回復魔法を唱えてもらい傷口は塞がる。冒険者達にはお礼を言われ。結局、そのまま全員で森を抜けるまで行動を共にすることに落ち着いた。
数時間後、彼等はこの先の町に行くと言われ森を抜けた所で俺たちと別れる。アクシデントは合ったか無事に魔導師を守りきり、任務完了したのである。
「いろいろあったが何とか終わったな後輩。悪かったな、怖い思いをさせて」頭を下げると
「そんなことないです。貴重な体験が出来ました。それに……。」
「どうした後輩?」押し黙った彼女を見て聞くと。
「めぐみんです!私のことはめぐみんと呼んで下さい!」思いきって言いました。そんな、顔付きでやさしく微笑む。
「ああ、解ったよめぐみ。じゃあ、俺たちも帰るとするか」
「はいっ。では無くて、めぐみんですって!」
何処か嬉しそうに突っ込むめぐみ
これがめぐみと出会って最初に起きた出来事。これからつづく、先輩と後輩の腐れ縁の始まりである。
後輩との腐れ縁はこれからも続きます。
次のお話しは、新たな旅立ちと準備のお話しです。
サラリーマンはこれからも奮闘します。お楽しみに!
皆様の暇つぶしに少しでもなれたら幸いです
それではまた次回




