19.新人教育 考察編
いつもお世話になりますアリス工房(仮)です
3年前のとある日の出来事です
俺の名前は夏目省吾。年は二十三歳、しがないサラリーマンだ。
現地作業を終えた俺は、現在、デスクワークと言う名の待機任務中!ぶっちゃけ暇である。
周りには天使様と課長しか居らず、本日は緊急案件でもなければ一日机に座ってパソコンでも眺めていればOK。数少ない平和な一日で、課長様さえ居なければ天使様と二人っきりになれる絶好の一日でもある。
あまりにも暇だから製造現場にでも遊びに行こうかと思っていると、課長様に呼び出された「おい。夏目!ちょっと」手招きする課長様。やな予感しかしない 。
緊急案件か?折角、天使様と二人きりの世界がマジ勘弁だ。ガッカリしながら返事をすると「お前、案件終わったばかりで暇だよな?今日の午後に本社から新人がうちの製造課に配属される事になってな、職場指導員をやらないか?」
話を聞いて心の底から思う、メンドクサイ。指導員とか無理です。それに、気になることがある 。
「質問が、何で本社配属の新人がうちの支店配属に変わったのですか?」
課長の話だと、どうも本社の配属先でモメたらしいそれも盛大に。その厄介払いで支店に廻された模様 だ。
「もう一つ質問が、何でうちで指導を?先程の話だと製造課配属と仰っていたような?でしたら、製造で指導をすれば……」等話すと課長は本社に言われたことを教えてくれた。
本社の製造課で失敗したのだから、支店の製造では無理だろう的な事を遠回しに言ってきたようで、その話を聞いた俺は正直ムカついた。本社ごときが偉そうに。新人、一人扱えないで見捨てやがって。
「わかりました。その新人指導引き受けます」
怒りと勢いに任せて承諾してしまった単純な俺。後から冷静になって考えると、完全に課長の口車に乗せられた気がする……まだまだ若いな。
山田さん(今日も天使様)から新人のデータを送って頂き、中身を確認する。先ずは、情報集めからだな。
大木めぐみ 20歳
○○服飾専門学校■■年度卒業後本社配属
■■年度入社試験全教科TOP合格
資格・・・etc
専門から本社へ入社って!こいつ、かなりのハイスペックじゃないか。しかも、入社試験TOP合格のオマケ付き!なんか癖が有りそうな奴だ。
本社でモメた理由が知りたい。誰か知っていそうな人は……。
一人だけ心当たりがいる。あまり聞きたくは無いが、今は情報がほしい。
電話を取ると、お目当ての人物がいる部署へ内線を掛ける 事にした。
人事部の小池さん。いわゆる情報通、悪く言うとゴシップ好きな人だ。聞けば会社内・外問わず、大体の情報が解る。
あまり敵に廻したくない人で、とにかく話が長い事でも有名。案の定、俺の貴重な昼休みは彼の話で無くなってしまった。今日は、昼飯抜きだな。
昼食を犠牲にしたが、情報は得られた。彼の話を要約すると、彼女はどうも優秀すぎる。指導していた製造の人が出した課題をあっさり終わらせ、更にぐうの音も出ない位問題点を指摘。その結果、怒った指導員は彼女を放置。暇になった彼女は、指導員が手掛けている服飾仕事をチラッと見てそれ以上の服を半日で仕立ててしまった。それを見た指導員は、逆上し……。
結果的に、新人は支店に島流し。と言うのが一連の出来事だ。
そういう事ね。やはり本人に直接会って話を聞いた方が良さそうだ。
噂だけでは話の本筋が解らない。ヒアリングは大事だからね。
昼休みが終わり午後の仕事が始まる。暫くしてから先程まで不在であった課長が、女性を連れて俺の席まで来ると簡単な説明だけして新人を俺に預けてさっさと自席に戻っていく。このまま話すのもアレなので、予め予約してある会議室へ案内して新人を席に座らせる。
彼女の見た目と第一印象は、肩口ぐらいまで伸びた髪の毛が少し跳ね上がっていて寝癖かファッションなのかオジさんには難しい。
そんな髪型で、顔立ちは二十歳にしては大分幼く感じられる。眠そうな目をしているがもう少し化粧したら可愛くなるのではと思う。美人と言うよりは可愛いがピッタリくる。
だがすべては、彼女が掛けているめがねに第一印象を持ってかれるくらいインパクトがある。何故に黒縁?しかも男物か?
社会人の基本である挨拶から始める 。
「現地案件担当で今回、君の職場指導員を任されることになった。夏目省吾だ。よろしく!」
「大木めぐみです」
暫く待つが返事が返ってこない・・挨拶それだけ?もう少し何かあるだろ。簡単にも程がある 。
「ここに来た経緯は俺なりに一応調べさせて貰ったよ。先ずは、君に聞きたいことがあるがよろしいか?」俺の問いに
「構いません」一言で終わる 。
口数少なっ!コホン!咳払いを一つ。気を取り直し続ける
「大木さんは服飾志望だよね。服飾関係の仕事であれば世の中沢山あるのにどうしてこの会社志望なのかが知りたい。正直、君ほどの知識と腕があれば一流メーカーや高級ブランドなどの会社にも入社できたのではないか?」
「もう一つ質問。新人教育の時、大木さんは指導員に何を言われた?普通教育の場であのような揉め事はあまり起こらないと思う。特に君は、頭が良いからなおのこと。心配しないでくれ、ここでの話を本社に告げ口しようとかそう言う類の物でなく単純に俺の好奇心から来る質問だ」
彼女は僅かだが眼を見開き答え始める 。
「私は、一流メーカーも高級ブランドの服も興味有りません。この会社の服飾になりたいそれが理由です。それから、向こうの指導員の人に私の服は現実的ではない!そんな絵空事の服は使えない!と馬鹿にされ、ついカッとなってしまいました」
彼女の話を聞いて大体解った。後は、一番大事なことを聞いておこう 。
「大木さんはこの会社で働く気はあるか?本社勤務とか支店勤務とか関係無しにだ」
この質問に、彼女は真っ直ぐ俺の目を見ながら
「私は、この会社でデザインした服を作りたい」
ハッキリとした意志のある回答に俺は大変満足した。
それと解ったこともある。こいつは、自分のデザインにプライドがある。
入社間もない新人が指導員である先輩に楯突いて怒れるほどのプライドが。
実力があって言うのは当然だが、俺は正直こういうタイプの奴は結構好きだ。
自分の意見を押し黙って他人に流される奴より遥かにマシだと思う。
それでは本題に入ろう。俺は予め課長に申請していたことがある。それは、今回の教育を受けるにあたり本人のやる気次第で決めるつもりでいたが、気に入った。こいつの面倒は俺がみる。
マトモな社会人に成れるかは解らないが、こいつの今後の服飾に役立てればと提案した教育 !
「現地教育を始める!これから異世界に行って一つの案件を二人で作業する。移動はこの後、直ぐだ。さっさと準備するぞ!泊まりもあるから覚悟しとけ!」
それだけ告げる と、後輩は何が起きたか解らない感じだが返事だけはする。
こうして、夏目省吾(23)初めての職場指導が、幕を開けるのであった。
急な展開に戸惑う後輩、夏目は職場指導を無事に達成出来るのか
サラリーマンは後輩の前でも奮闘します
皆様の暇つぶしに少しでもなれたら幸いです
それではまた次回




