完璧な記念写真
私は一人旅が趣味です。
先週、山奥にある美しい湖へ行きました。そこは観光地化されておらず、めったに人が来ない隠れた絶景スポットです。
湖のほとりで、私はセルフタイマーを使って写真を撮ることにしました。
カメラを岩の上に固定し、10秒のタイマーをセットして、急いで湖を背にした位置へ走ります。
「ハイ、チーズ」
カシャッ、と乾いたシャッター音が響きました。
すぐにカメラの液晶画面で確認すると、そこには素晴らしい景色と、満面の笑みを浮かべる私が写っていました。
ただ、一点だけ気になることがありました。
私の背後の「湖の表面」に小さな白い波紋が立っているのです。
(……魚でも跳ねたのかな?)
そう思って、私はもう一枚撮ることにしました。
再びタイマーをセットし、同じ位置に立ちます。
「カシャッ」
今度の写真を見て、私は首を傾げました。
波紋は、さっきよりも少しだけ「岸」に近づいていました。しかも、よく見ると波紋の中心に、何か黒い塊のようなものが浮き上がっています。
「なんだろう、流木かな?」
気になった私は、さらに三枚目を撮りました。今度はあえて、湖の方を指差すポーズをとってみました。
「カシャッ」
三枚目の写真を確認した瞬間、私はカメラを掴んで、震える足で車まで全速力で逃げ帰りました。
写真の中の湖面には、長い濡れ髪を垂らした女の頭がはっきりと写っていました。
そして何より恐ろしかったのは、三枚目の写真に写っている「私の指先」です。
私は確かに「湖の方」を指差したはずなのに、写真の中の私はレンズのすぐ横、カメラの真後ろの「空っぽの空間」を、驚愕の表情で指差していたのです。




