スクラッチくじ
私は、駅前の売り場でスクラッチくじを「5枚」買いました。
このくじは、3×3の9マスのうち、縦・横・斜めのいずれかに同じ絵柄が3つ並べば当たりという、ごく一般的なものです。
家に帰り、リビングのテーブルで1枚ずつ慎重に削り始めました。
1枚目。中央に「星」、左上に「月」、右下に「太陽」。ハズレ。
2枚目。左下に「星」、中央に「月」、右上に「太陽」。ハズレ。
ふと気づくと、削った時に出る銀色の粉の量が、枚数を重ねるごとに増えているような気がしました。 スクラッチの面積はどれも同じはずなのに、4枚目を削り終える頃には、テーブルの上が銀色の粉で真っ白になっていました。
「……掃除が大変だな」
そう独り言を漏らしながら、最後の5枚目に取り掛かりました。
私はいつも、削りカスが散らばらないよう、コインを細かく動かして慎重に粉を寄せていきます。
5枚目の結果も、結局「ハズレ」でした。 しかし、最後の一箇所を削り終えた瞬間、私は奇妙な感覚に襲われました。
「コインが、テーブルの面に届いてない……」
手元のくじを見ると、ハズレの絵柄は確かに並んでいます。
でも、私はそのまま、すでに絵柄が露出している場所をさらにコインで強くこすり続けました。
すると、印刷されているはずの「紙」が、銀色の粉と一緒にボロボロと剥がれ落ち、その下から「また別のスクラッチ面」が現れたのです。
私は狂ったように、その2層目の銀色を削りました。 出てきたのは、絵柄ではありません。 それは「今、私が座っているこの部屋を、真上から見た図」でした。
図の中の「リビングのテーブル」の位置には、小さな赤い点が一つ。
そして、その「テーブル」の周りには、びっしりと敷き詰められた「ハズレ」の文字が並んでいました。
その時、背後の窓から強い風が吹き込み、テーブルに溜まっていた大量の銀色の粉が、部屋中に舞い上がりました。




