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なんかよく分からないけれど怖い話  作者: 日暮キルハ


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記憶違い

 私は最近、自分の記憶力に自信が持てなくなっています。いわゆる「記憶違い」がひどいのです。


 例えば、朝起きて無意識に「3人分」の朝食を作ってしまったり、買い物で使わないはずの子供用歯ブラシをカゴに入れていたり。 そのたびに、同居している夫のタカシは優しく笑って指摘してくれます。


「また間違えたの? 僕たちは結婚してからずっと二人きりじゃないか。君は少し疲れが溜まっているんだよ」


 私は「またやっちゃった」と恥ずかしくなり、タカシの言う通り自分は疲れているのだと納得しました。 彼は本当に献身的で、私の「記憶間違い」を一つ一つ丁寧に正してくれます。私が「以前は別の街に住んでいた気がする」と言えば、契約書の控えを見せて今の家が最初だと教えてくれます。私が「昔、犬を飼っていなかった?」と聞けば、そんな事実はないと優しく諭してくれます。


 ところが昨日、クローゼットの奥を整理していたら、見覚えのない一冊のノートを見つけました。 それは私の筆跡で書かれた「育児日記」でした。


『〇月〇日、今日で娘が3歳になった。タカシくんがケーキを買ってきてくれた』


 私はパニックになり、タカシにそのノートを突きつけました。「私の記憶は間違っていない。やっぱり子供がいたんじゃない!」と。 タカシは困ったような顔をして、ため息をつきました。


「ああ、それね。それは君が昔、精神を病んでいた時に書いていた『妄想日記』だよ。僕が捨てたはずだったんだけど……。ほら、日付を見てごらん。その日は僕たちがまだ出会ってもいない時期だよ」


 確かに日付を見ると、私たちが付き合い始めるよりずっと前のものです。 「そうだったんだ……私、本当に病んでいたのね」 私は自分の脳が信じられなくなり、ノートをゴミ箱に捨てました。タカシは私をそっと抱きしめ、「これからは僕だけを信じればいいんだよ」と囁いてくれました。


 でも、今朝、タカシが仕事に行った後。 ゴミ箱の中のノートが気になって、もう一度見返してみたんです。 そして、震えが止まらなくなりました。


 ノートの最後の方のページ。そこには、日記ではない「殴り書きのメモ」が残っていたのです。


『今、玄関の鍵が壊された。知らない男が入ってくる。タカシと名乗っている。彼は私の日記を奪って、日付を書き換えようとして――』

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