キャンディー
私の住む町には、子供たちに手作りのキャンディーを配って歩く「キャンディーおばあちゃん」と呼ばれる有名な老婦人がいます。
彼女の作るキャンディーはとても色鮮やかで、一つ一つ丁寧に透明な袋に包まれています。そして、その包み紙には、マジックで近所の子供たちの名前が書かれているのです。
おばあちゃんはいつも、ニコニコしながらこう言います。
「このキャンディーを最後まで舐めきったら、その子はもう何も悲しいことは起こらなくなるし、ずっと静かに幸せでいられるのよ」
いじめっ子だったタケシ君の名前が書かれたキャンディーを、誰かが舐めきった翌日。タケシ君は急に学校に来なくなりました。噂では、遠くの親戚の家に預けられ、そこでとても静かに暮らしているそうです。
わがままで有名だったミカちゃんのキャンディーがなくなったときも、彼女はパタリと姿を消しました。お母さんは「あの子は幸せな場所へ行ったのよ」と泣きながら笑っていました。
私はおばあちゃんが大好きです。だって、おばあちゃんのキャンディーは、みんなを平和にしてくれる魔法の道具みたいだから。
ある日の午後、私はおばあちゃんの家の前を通りかかりました。 おばあちゃんは庭のベンチに座って、新しいキャンディーを作っていました。
「あ、おばあちゃん! 今日は誰のキャンディーを作ってるの?」
私が声をかけると、おばあちゃんは少し困ったような顔をして、まだ包み紙に包まれていない、真っ赤なキャンディーを私に見せてくれました。
「……今日はね、あなたの名前を書くつもりだったんだけど、書き間違えちゃって」
おばあちゃんの手元にある包み紙には、私の名前が半分だけ書かれていました。 そして、おばあちゃんの口元からは、真っ赤なキャンディーの棒が突き出していました。
「でも大丈夫。ほら、もうすぐ溶けてなくなるから。そしたら私も、あなたも、ずっと幸せよ」
おばあちゃんはそう言って、ゴクリと何かを飲み込むような音を立てました。




