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闇を払いて偽装の光刃

 レズモンドは一切の迷いなくその炎を(まと)った刃を振るってきた。


 レズモンドの得物はシンプルな片手剣。

リーチと質量なら俺のクレイモアが勝る。


 そして────


「そう簡単には折れない!」


 俺はクレイモアでレズモンドの剣を受け止めた。

そのまま刃を滑らせて紅蓮(ぐれん)剣閃(けんせん)をいなす。


 俺のクレイモアは元々聖騎士団仕様。

属性を付与(ふよ)して戦う事を想定されていた。

そのため属性に強い耐性を持っている。

どんなに強力な属性を(まと)わせても1撃や2擊で折れる事はない。


「……っ!」


 (かす)めた炎が俺の服を少し焼いた。

熱はない。

ただ触れた先から浄化の炎で灰へと代わる。


「聖銀混じりの剣か。俺の一太刀(ひとたち)を受けて灰にならない剣は久しいぞ」


 レズモンドが言った。

だがその言葉に称賛は感じられない。


 無機質に。

淡々と。

レズモンドはいなされた剣を再び振りかぶった。

炎が勢いを増し、本来の倍以上の長さまで(ほむら)の刃が形作られる。


「次も耐えられるかな」


 レズモンドの言葉を受けて俺はクレイモアを一瞥(いちべつ)

見ると銀色の剣身(けんしん)の一部が炎に()められ、細かい(まだら)に白く染まっていて。

柄の白い装飾からは乾いた灰がさらさらとこぼれている。


 桁違いの炎の密度だ。

1撃や2擊で折れることはない?

甘かった。

次に直接あの炎の剣を受けたら、灰に浄化されて間違いなくクレイモアが折られる。


 闇を、使うしかない。

でもバレずに? どうやって。


 周囲の闇に紛れさせようにも、レズモンドの炎が太陽のように周囲を照らしていた。

深い闇の中にあってなお真昼よりも明るい。

闇を使えば間違いなく視認される。


「名乗らなきゃ良かった」


 思わず呟いた。

 リヒトという俺の名前とギルドに所属していることはすでにバレてる。

俺自身が言ってしまった。

闇を使ってこの場を切り抜けてもすぐに特定される。

それは今後の活動にも支障が出る。


「ぐるるる!」


 ハティが(うな)りを上げた。


「ダメだ。ハティ」


 魔狼になって戦おうとするハティを止める。


「でも!」


「ど、どうしようハティちゃん……?!」


 ハティとスコルが言った。

2人ともその顔には焦りが(にじ)んでる。


 レズモンドが、動く。

構えの姿勢は変えず、だけど重心が前へと移動。

大きな予備動作を見せずに攻撃へと転じる技術は確かな修練の賜物(たまもの)

常人なら気付いた頃には後手に回ってそのまま斬り裂かれてる。


 残された猶予(ゆうよ)は、刹那(せつな)


 闇。

操作。

圧縮。

魔物を。


 断片的な思考の連鎖。


 俺はレズモンドの後方から、生み出したレッド・ウルフをけしかけさせる。


 赤い牙と爪がレズモンドの無防備な背へと────


「おや、魔物ですか」


 レズモンドが前へと踏み込みながら旋回(せんかい)

俺への距離を詰めながら、尾を引いた白炎の刃がレッド・ウルフを一瞬で焼き払って。

消し飛ぶ灰を背に、炎の剣閃(けんせん)が俺の眼前に迫る。


 俺への攻撃の所作に一切の(よど)みが生まれなかった。

わずかな時間稼ぎにもなってない。


 その時。

なぜか脳裏に(よぎ)ったのは光の刃。

俺の憧れたヴィルヘルム様の、輝く剣。


「────」


 俺は気付いたら闇を操っていた。

激しく闇を逆巻(さかま)かせ、質量を持つほどに濃く、そして薄く。

暗黒の剣がレズモンドの剣を斬り払う。


 激しい衝撃音と共に宙に舞ったのは折れた直剣(ちょっけん)

切っ先に(まと)っていた白い炎が霧散(むさん)し、地面にさくりと突き刺さった。


「それは……!」


 レズモンドが俺の剣を見て驚嘆(きょうたん)する。


 俺は闇の力を使って。

だけどレズモンドの瞳に映るのは目も(くら)む閃光。

俺は煌々(こうこう)と光を灯す闇の剣という相反した刃をレズモンドに突きつけていた。


 咄嗟(とっさ)に編み出した偽装の刃。

限定的な条件下でのみ使える闇を用いた光の剣だ。

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