95話 ドン・キホーテ
勝てるのか、そんな思いが私の中に浮かび上がる。今からでも撤退は出来ないか、どうにかして逃げられないか。しかし、前で戦っている人達はそんなことを一切考えて居なかった。
「お前達! 暫し時間を稼げ!」
「策があるのだな!」
「ある!」
ドン・キホーテさんがそう言って少し下がったのだ。しかもその口ぶりからは策がある様子。
私は頭を金槌で殴られたような気がした。私はドン・キホーテさんが諦めていないのに勝手に諦めるなんて。
私は自分の頬を両手で叩いて気合を入れる。何が聖女だ。たったこれだけのことで諦めるなんて有り得ない! まだ戦う人がいるのに、勝手に弱気になることなんて許されない!
「はあああああああああ!!!!!」
ドン・キホーテさんは力を貯めているようだった。それを妨害しようとケルベロスはブレスを放ってくるが、私の防御魔法でほとんど軽減されて致命傷には至らない。それでもそれなりのダメージはいっているハズで、その分は堪えている。
「プロテクト!」
私は出来る限りの支援を放つ。私に出来ることはこれくらいしかないけど。それでも私が守れる分は守る!
ケルベロス本体は隊長とフリッツさんが押さえてくれている。その戦いは苛烈を極めた。
フリッツさんは攻撃をほとんどせずに躱すことだけを重点をおいて戦っている。一人でやってきた時に、攻撃を食らわない事を最重要に考えた結果だろう。ケルベロスがドン・キホーテさんの方に向かおうとした時に攻撃に出て、行かせないようにしていた。
隊長は割とどっしりと構えて、致命傷を受けないようにケルベロスの攻撃を剣と盾で受け流している。受け流しているといっても魔物と人、地力の差はあって小さな傷はドンドンつけられていく。
そしてドン・キホーテさんの準備が整う。
「よし! 傷だらけの方を押さえておけ! もう一体は儂がやる!」
「頼んだ!」
「頼むぞ師匠!」
「儂を誰だと思っておる!」
彼はそう言ってケルベロスに突撃する。両手剣を後ろに持ち、後は振りかぶって叩きつけるだけ。しかも彼の持つ剣は七色の光を発光させており、その剣の空間自体が歪んでいるようだ。
ケルベロスは目の前から離れていく隊長を気にもせずにドン・キホーテさんを睨みつけている。3つの頭ともが警戒していたのだ。それほどまでに彼の技の圧力を警戒していた。
そして彼はケルベロスまでまだまだ10mはあろうかと言う所で剣を振りかぶり、振り下ろす。
「食らえ! 極光剣!」
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