94話 ケルベロス
7人の突撃に驚いたのかケルベロスは大声で叫ぶ。
「グアアアアアアアファアアアアアアア!!!」
「ガアアアアアアアファアアアアアアア!!!」
その声に反応したのかもう一頭もこちらに突進してきた。即座に危険を察知して対処しようとするとは流石Aランクの魔物だ。
しかも、後ろからは包囲を狭めていた魔物もにじり寄ってくる。その様を見てフリッツさんは私を背中に隠す。
「クロエ、俺が戦う。絶対に死ぬなよ」
「はい!」
私は彼の無事を祈る。
「はあああ!!!」
「せえええええいいい!!!」
フリッツさんは防御を一切無視した行動であっと言う間にBランクの魔物達を黙らせてしまった。
魔物が息絶えたことを確認すると、息つく暇もなく私の側に戻ってきてくれる。
「大丈夫か!」
「フリッツさんこそ大丈夫なんですか!?」
「あの程度の攻撃は問題ない!」
私たちは急いでケルベロス達の方に視線を戻す。そこには攻勢をかけ続けたお陰で傷だらけになっているケルベロスと既に2人倒れている冒険者がいるだけだった。
魔物側はケルベロス2体を残して全滅。後は2体だが、状況はかなり厳しい。一人でも援護がいるはず。
「フリッツさん! 私のことはいいです! 行ってください!」
「だがお前一人では!」
「このまま負ければ全員が死んでしまいます! だから援護に行ってください!」
彼が悲しそうな、悔しそうな顔をするが、私は力強い視線を返して大丈夫だと教える。
「直ぐに倒してくる!」
「はい! お願いします!」
彼はケルベロスに向かって駆け出した。
私も少しずつ、木の陰に隠れながら移動する。
「あぁ!」
私は前に移動する間にも、一人、また一人と飛ばされていく。フリッツさんも到着するが残り4人にまで減らされていた。
ケルベロスの戦い方は上手く、体は一つしかないが頭は3つあることを利用しているのだ。
「常に全方位に注意をしておけ! 数の上では負けている! その意識でいないと即座に狩りとられるぞ!」
隊長は吠えて4対2の状況になる。フリッツさんとドン・キホーテさん。隊長と先生の護衛の人達だ。他の人達は爪などで払われて少し離れた場所に飛んで行ってしまっている。
私は防御の魔法をもう一度かける。
「助かる!」
「無理はするなよ!」
こういう時でも言ってくれる彼らを私は守る。私が出来ることはこれくらいしかないから。
私のその思いはあってもケルベロスは手ごわい。たった今先生の護衛の人が弾き飛ばされた。
「ぐあ!」
「ああ!」
私はどうしたら、いいのだろうか。こんな時に何も出来ない自分が悔しい。
ケルベロスは2体とも健在。一体はかなり傷だらけでかなり弱っているとはいえ、もう一頭はほとんど傷を負っていない。
この状況で勝てるのだろうか。
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