93話 私の防御魔法
「グアアアアアアアファアアアアアアア!!!」
一頭のケルベロスが叫び声を上げながら突っ込んでくる。その表情はさっきまでの生易しいものではなく、憤怒の形相に歪んでいた。
「散開! 固まってると狙われるぞ!」
隊長の合図でフリッツさんの側に行く。最近はいつも彼の側にいたから癖になってしまっていたようだ。
「何で散開するんですか? まとまっていた方が……」
「危ない!」
「え?」
いきなりフリッツさんが私を抱きしめて地面に押し倒した。そのすぐ上を真っ赤な炎が通り過ぎる。
「油断するな! ブレスを放つと言っただろう!」
「すいません……」
フリッツさんは怒っていたがふっと顔を元の優しいものに戻して笑いかけてくる。
「気を抜くな。お前がやられればそれで俺達は終わりだ。わかったら全方位に注意しておけ。後、自分の分の防御魔法も」
「分かりました。プロテクト」
私は自身の分も発動させる。その時、別の所から声が聞こえてきた。
「ぐああああああ!!!!」
私がそちらを向くと、更生したBランクの彼が雷撃に体を打たれているようだった。そのブレスは私の防御魔法を貫いたようだ。
私は巨大なケルベロスを睨みつける。ここまで近くにいると恐怖で足がすくんでしまいそうになるが、私の中も守りたいという気持ちが折れそうな私を支えてくれた。
ケルベロスは高さだけで3mはあり、それぞれの頭一つ一つで私位の大きさがあるかもしれない。
それでも、私は負けるわけにはいかない!
「フリッツさん。時間を少し下さい」
「分かった。任せろ」
彼はそう言って私とケルベロスの間に立ってくれた。それだけで私は充分に安心出来る。
集中、集中、集中。この場にいる全員を守るように、例えケルベロスだろうと、倒さなければいけない魔王だろうと。私は守り切ってみせる! 私が聖女だから!
「プロテクト×9!」
例え倒れていたとしても守る。それが私の役目、唯一出来ること。攻撃することは出来ないから、私が出来ることを全力でする!
その場にいる全員をぱあああっと激しく眩しい光が包む。
「グアアアアアアアファアアアアアアア!!!」
そこへケルベロスのブレスが孤児院の冒険者を包んだ。
「ぐはあああ!!!」
彼はその勢いに吹き飛ばされて二転三転する。
「あぁ!」
そんな守ると言ったばかりなのに。私の力では届かないのだろうか。
「大丈夫だ! 少し焦げたがそれだけだ! 俺はまだ戦えるぞ!」
「おお! 行くぞ! ブレスを食らっても問題ないのなら俺達が倒す!」
「フリッツはそこでクロエ殿を守れ!」
「分かった!」
そうして7人が突撃していく。
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