66話 紹介
フェリさんは外に出て足を止める。
「個人個人の紹介は……後でしますね。とりあえず右の走っている子から、アルベルト、テトラ、グルック、テン、シャイアード……」
「待って待って待って待って」
「?」
私は慌てて彼女を止める。いきなりそんなに名前を言われても絶対に覚えきれない。それも庭を走っている子供は少なめに見積もっても20人はいる。
それを彼女は不思議そうに私を見つめていた。
「どうかしましたか?」
「流石にそんな一気に言われても覚えられません」
「そうですか? あんなに分かりやすい子達ですから簡単かと思ったのですが……」
「そ、そうだったんですか。でも、紹介はまた後にしてもらって。どういった遊びをさせたらしていいのか教えてくださるといいなーって」
「そうですね。では私が知ってる範囲でお教えしますね」
「はい」
良かった。何とか話を逸らすことが出来た。
それから木にはこんな遊具があったり、こんな遊びがあるといった事を教えて貰う。そして説明の途中で12時を告げる鐘が鳴る。
「あ、もうこんな時間なのですね。本当はもう少し話したいことがあるのですが、食事が終わってからにしましょうか。その時に皆にも紹介しますね」
「はい。分かりました」
「分かった」
子供たちが私たち目掛けて走ってくる。と思ったら違った。子供たちは私たちというよりも食堂を目指しているらしく、私たちは素通りされていく。ただ、フェリさんは人望があるのか挨拶だけはほぼ全員からされていたように思う。
「好かれているんですね」
「え……あ……。ありがとうございます」
「凄いことだと思います。あんなに子供が一杯いたのに皆に挨拶をされていましたし」
「そうでしょうか」
「はい。そうだと思います」
「なぁ、食事にはいかないのか? 今のって食事をしに行くんだろ?」
「……」
彼女は言葉を返さない。やはり男性が怖いのだろうか。
「食事の時間でしたら案内して欲しいのですがいいですか?」
「はい、ついてきてください」
こうして私たちは食堂に行くことになった。
そして辿り着いた食堂はかなりの人数がいて、はしゃいでいる子供たちでいっぱいだった。
そんな中にどこに座ろうかと思っていると、フェリさんについて行くと大人用の席があるらしく、そこで食事を取るそうだ。
「あ、私はこれで」
「食事はしないのですか?」
「子供たちと。食べますので。終わったら、また来ます」
「ご一緒してもいいですか?」
子供たちの世話をするなら折角だししておきたい。
「え? はい、大丈夫……です。でも、先に皆さんの紹介があると思います」
「ああ、そういえばそこからでしたね」
そんなことを話していると、食堂の中で一際高くなっているところがあった。そこに壮年の男性が登ると大声を張り上げる。
「皆さん! 本日から少しではありますが、皆さんを護り、共に過ごして下さる冒険者の方々が来られました。フリッツさん、クロエさん。是非こちらへ」
私とフリッツさんは彼に 促されるままに登壇する。
食堂にいる子供も大人も関係なく、皆の視線が私たちに集まるのが分かった。
「この男性の方はフリッツさん。Cランク冒険者の方です。そしてこちらの女性はFランクのクロエさんです。どちらも年少の子達を受け持っていただきます。年少の子達は彼らを頼るように。何か一言ありますか?」
壮年の男性が私たちに聞いてくる。
フリッツさんは一つ頷き先に話してくれた。
「俺はフリッツだ。あまり子守をしたことはないが出来る限り頑張るからよろしく頼む」
そう言って私に視線を向ける。
「えっと、私はクロエと言います。よろしくお願いします」
気の利いた一言でも言えればいいんだろうけど。そんな事が出来たら苦労はしていない気がする。
「ありがとうございました。それでは食事に致しましょう」
私たちは席に戻って食事になった。
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