15話 ドン・キホーテと彼の母
「あらフリッツ君お帰りなさい。無事だった?」
「ただいまおばさん。今日は大物が取れましたよ」
「ホント? 怪我だけはしないでね?」
「はい、ありがとうございます」
フリッツさんは思った以上に人気者だった。道を歩けば誰しもに挨拶をされる。そして私もそれに釣られて挨拶をしていた。
「村の人と仲がいいんですね」
「そうか? ずっと前からこんなもんだった気がするけどな」
そして彼に案内されるままに一軒の家に到着する。そこは想像していたより大きく、1家族であれば余裕を持って暮らせそうな広さに感じた。そして家に近づいたところで私たちは声をかけられる。
「フリッツ! よく帰ってきた! しかもその素材はまさか!」
私が声の方を向くとそちらには安物の甲冑を全身に着て走ってくる老人だった。彼は顔どころか全身で喜びが浮かんでいる。
「師匠! 帰って来ました! これはそこにいる少女のお陰で討伐をすることが出来ました」
フリッツも嬉しそうに顔を歪ませている。それだけで二人の関係性がいいことがわかる。
「ほう。お嬢さん。貴方名前は?」
「ク、クロエと申します」
「クロエさんね。家のフリッツとは一体どんな関係何だ?」
「か、関係ですか?」
「そう関係です」
「森の中でグリズリーベアから逃げている所をフリッツさんに助けて貰ったんです」
「なぜこんな危険な森の中に入ったのですかな? どう考えてもおかしいように感じますが?」
「ええ……と……」
なんなんだこの老人はどうしてこんなに問い詰めてくるんだろうか。後ちょっと顔が近い。めちゃくちゃに迫ってくる。
「師匠。この少女については俺が聞いたから大丈夫だ。それよりも母さんに会いたい」
「フリッツ。外には悪い人間は幾らでもいる。だからこの少女もそうかもしれん。それをこのドン・キホーテが見定めてやる」
ドン・キホーテって言うんだこのおじいさん。というかそこまで私の前に話していいの?
「心配性なんだから。大丈夫だってさっきも言っただろ?」
「そうは言いましても」
「ほらほら、腰がまだ痛んだりするんだろ? 休みに帰った帰った」
「むぅ……、今回は下がりますが儂の目が黒い内は変なことは逃がしませんからな?」
「ほらいったいった」
「仕方ないですな。それでは今日はこの辺で……」
彼はそう言って振り返って歩きかけたが止まってそれっきりだった。
「師匠?」
「大丈夫ですか?」
「こ、腰が……」
「だから言ったじゃんか……。悪い。俺は師匠を家まで送ってくるからちょっと中に入っててくれ」
「え? でも勝手に……」
「すぐ戻るから!」
そう言って彼はさっさと行ってしまう。
「入っちゃダメだとって……もういない……」
私は置き去りにされたが迷った結果さっさと入ることに決める。
「失礼しまーす」
一応声をかけてから入った。中は丁寧に掃除されているようで椅子や机の上に埃は一切見えない。木で作られた家具はしっかりしていて頑丈そうだ。
扉を閉めて中に入るとしんとした沈黙が訪れる。人の家に入るのは流石に緊張する。
「どなた?」
奥の方からはとても綺麗な貴族と言った方がいいような人が来た。その姿勢はピンと伸びており姿勢がいいし服もぴしっとしている。髪は真っ黒だがあの色は父親譲りなのだろうか?
「あ、私はクロエと申します。森の中でフリッツさんに助けて頂いて、この村まで案内していただきました」
「そうなの。フリッツが助けたのなら良かったわ。ゆっくりしていって頂戴」
「はい、ありがとうございます」
「でもあの子が幾ら助けたって言っても、人を家に連れてくることなんてほとんどないの」
「はぁ」
「だから、お話しましょ?」
これはお話という名の尋問の様に見えた。
「はい」
しかし私はそれを断る言葉を知らなかった。
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