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吸血鬼犯罪捜査官 美紅  作者: 城島 剣騎
<第1章>吸血鬼ストーカー殺人事件
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第一章<晩餐>


そんな私達の会話のやり取りが余程が可笑しかったのか、アマーリエさんはクスクスと零れ落ちるような笑みを浮かべた。

「お2人とも、とても仲が宜しいのね。」

とのアマーリエさんの問いに、2人は思わず口を揃えて言った。

「とんでもない!」

「とんでもない!」

2人の声がぴったりとハモったのが、またアマーリエさんの笑いのツボに拍車がかかったらしく、私達は緊張感の世界から一気に追い出されたような気分になった。

「それより伊東 雅人…、いや正しくは伊東 雅人らしき者の件なんですが。

奴が逮捕されたというのに未だにご主人のストーカー被害が続いているというのは、俺にはどうしても解せないのですが、何かお心当たりなどはありませんか?」

和やかな雰囲気から職務を実行する為に、あえて話題を切り換えた春樹の問いに、さっきまで笑っていたアマーリエさんは再び暗い面持ちに変わった。

「主人はテレビを見て、あの殺人現場にいた奴は間違いなく伊東 雅人だって仰っていたのに。

逮捕されて後に、再び主人がストーカー被害に遭い続けているのが私にも不思議なんですの。

もしかして模倣犯?

愉快犯?

私にはわかりませんわ。」

しかし春樹はアマーリエさんの考えを、静かに首を横に振ってそれを否定した。

「いや、違いますね。

模倣犯にせよ愉快犯にせよ、それをやるのには御主人が伊東 雅人の殺人現場を目撃したという事実を知りうる人物でなければ、無理なのですから。

となるとストーカー犯人はもしかしたら内部の者の、犯行とも考えられます。

アマーリエさん。

貴方は吸血鬼という事ですから、飛空能力だってあるんじゃありませんか?

吸血鬼の種族の中にはドッペルゲンガー能力[他人の姿に変身する能力]を持つ者もいると聞きますしね。」


ちょっとちょっと春樹。

言うにことかいてアマーリエさんを犯人に祭り上げる気なの?

まぁ…、確かに春樹の推理力は凄いと思うけど。

でもでも!

あんなに深く愛し合っている御夫婦の仲を裂くような春樹の推理に、私は思わず口を挟まずにはいられなかった。

が、しかし実際に口を差し挟んできたのは御主人の川島 高次氏だった。

「アマーリエが私にストーカーをする理由が、どこにあるんだ!

それにアマーリエは空を飛べる種族じゃないし、ドッペルゲンガー能力なんてものもない。

そんないい加減な当て推量でアマーリエを犯人扱いするなぞ、私は至極不愉快極まる!」

あら。

私達以外にも飛空能力のない種族って結構いるものね。

まぁ一口に吸血鬼といっても、その種族は多岐に渡っているから、別に不思議じゃあないとは思うんだけど、どちらかといえば稀な方の種族よね。

私なんて昼に活動出来るし寿命がある種族だしね。

アンデットでもないし。

「これは失礼致しました。

非礼はお詫びします。

ただ、私どもも刑事ですので、様々な可能性を視野に入れて考慮すべき仕事ですから、平に容赦頂きたい。」

あらま!

春樹がこんな真っ当な謝り方をするなんて意外。

まぁ、なんの確たる証拠もないのに、さもアマーリエさんが犯人であるかのような言い回しをした春樹が悪いんだし、当然といえば当然なんだけどね。

で、また意外だったのが春樹に助け舟を出したのが犯人扱いされた当の本人であるアマーリエさんだったからなの。

「あなた、私は別に気にしてませんし良いじゃないですか。

それより夜も更けてきた事ですし、刑事さんもお疲れでしょうから今宵はお泊りになって頂いたら?」

あぁ、アマーリエさんってなんて優しい人[吸血鬼]なのかしら。

器がデカいっていうか、懐が広いというか。

という事で!

野暮な春樹が断りの言葉を言う前に、私は間髪入れずに御返答申し上げちゃったのでした。

「御配慮有難うございます。

では、お言葉に甘えさせて頂きます。」

しら~っ。

あぁ、痛い痛い。

だからぁ。

そんな横目で冷たい視線を私に浴びせないでよね。

はいはい。

春樹の言いたい事なんてわかってるわよ。

と、春樹の冷たい視線をよそに私達はアマーリエさんに続いて応接室を後にする事にした。

で、応接室を出ると予想通り春樹は私の方に向かって踵を返した。

来る来る。

春樹のお説教がぁ~っ。

と覚悟していたのに、春樹が私にかけてきた言葉は、お説教ではなく意外な問いかけだった。

「お前、この応接室と正面の扉に違和感を感じやしなかったか?」

は?

一体、春樹は何を言いたいのかしら?

「何?

別段、とりたてて特に不審な要素なんて感じられないわよ?」

と私が答えると、春樹は得意の深い溜め息を始めた。

さて、ぼちぼち耳栓しなきゃね!

って指で耳をほじくっていたが、流石に川島宅でまで大声で叫ぶつもりはなかったみたい。

代わりに吐き捨てるように厳しいお言葉を賜った。

「やはり洞察力も直観力もないアホぅにつける薬はない…、か。」




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