第三章<現場検証>
私達は楽屋から出て、直線の廊下を歩いた。
ここの構造は至極簡単。
門があって、その隣に警備員室がある。
さらにそこを過ぎると入口があって、入口には警備員さんが1人配置されている。
入口から短い廊下を抜けると、撮影フォトスタジオの現場になっている。
廊下への扉の前には、漆黒の遮光カーテンがしつらえてある。
照明の位置や撮影する舞台から考えても、扉を開けて廊下の明かりが差し込むというのは逆光になるし問題があるからなんだろうな。
その先の扉をあけると、廊下には撮影スタジオの扉から見て斜め向かいに待合室があり、さらにその隣には救護室がある。
救護室って、まぁひらたく言うと学校でいう保健室みたいなものかしら。
今は、吸血されて意識を失っている中里 瞬さんが安静にして眠っている。
さらに右に伸びている廊下を歩いていくと、奥には楽屋がある。
まぁ建物の構造は、ざっくりこんなもの。
ふぅ。
撮影スタジオの扉が近づくにつれて、なんか荒々しい喧騒みたいなものが聞こえてきた。
「春樹ぃ、なんか待合室で誰かが揉めてるみたいなんだけど。
どうする?」
私としては、事件が解決するまで正直あまり行きたくないんだけどなぁ。
「放っておけ。
今は、そんな瑣末な事にまで首を出している場合ではない。」
言うと思った。
春樹ったら本当に事件の事となると凄絶にクールよねぇ。
などと思いながら、私は撮影スタジオの扉をあけた。
「ふん、やはりな。
撮影スタジオは思った通りの構造という訳か。
ならば、既にトリックは瓦解したな。
さて、後は証拠を立証せねばならないが…。」
ちょっとちょっと!
勝手に1人で納得してないで、教えなさいよぉ。
と私がぶぅたれているのを見兼ねてか、春樹は私の頭を撫でた。
「いいから。
後でお前のようなアホぅにもわかるようにちゃんと詳細に説明してやるから、今は黙ってろ。」
むぅぅ、春樹の意地悪ぅ。
「おい、アホぅ。
俺達が悲鳴を聞いて駆け付けた時、すでに撮影用の照明は全て切ってあったよな?」
なによなによぅ。
私には九条 美紅って名前がちゃんとあるんだからね?
いい加減アホぅで済ますのやめて貰えないかしら。
「わかったわかった、美紅。」
お、珍しく春樹が折れてきたじゃない。
「うん。
そりゃ、あんな事件が勃発したんだもの。
撮影をすぐに中断しなきゃなんだし、照明だって普通切るんじゃない?
実際、駆け付けた時には照明は全て消えてたしね。」
と私が言うと、春樹ったら凄くニヤニヤした顔を浮かべている。
これは、相当確信に迫ってきた顔ね。
「で。
ここが中里 瞬が座っていた待機用の椅子か。」
そう言うと春樹は突然腰を落として入念にその付近を調べ始めた。
「春樹ぃ、何を探しているの?
まるでコンタクトでも落としたみたいじゃない。」
と私が突っ込むと、春樹は恐ろしい形相で私を睨んだ。
はいはい、黙ってればいいのね。
「あった。
やはり、これも睨んだ通りという訳か。
よし、次に救護室に行くぞ!」




