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吸血鬼犯罪捜査官 美紅  作者: 城島 剣騎
<第3章>アイドル恐喝殺人事件
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第三章<事情聴取3>


春樹の問いに、兄の純くんは答えた。

「仰るように、そこは重要なポイントですよね。

間違いなく前が桜庭 優さんで、その後ろの最後尾に中里 瞬さんがいました。

縦になって撮影の合間の休憩というのは不自然だとお思いでしょう?

しかし桜庭 優さんは仲間うちでも素行の悪さもあって、あまり好かれてはいません。

特に中里 瞬さんには辛く当ったりする事も多いので、彼はいつも桜庭 優さんの視線のそとにいようとする傾向があります。

だから今回もスタッフが気を利かせて、椅子の席をばらけて配置したのだと思います。」

へぇ。

まぁ私も桜庭 優さんがどんな性格かだなんて詳しくは知らないし、別に知りたいとも思わなかったんだけど…。

あの華奢で可愛らしい中里 瞬くんに、そんな辛い思いをさせていただなんてね。

許せなぁい!

ますます嫌いになっちゃったわよ。

憧れとか理想なんて、近づいてみると意外と失望する事も多いのかも?

私は元々、桜庭 優さんなんて眼中にないんだけどね?

兄の純さんに次いで妹の愛さんも桜庭 優について語りたかったらしく、不意に声を荒げた。

「そうなんです!

あの人、皆から嫌われているんですよ。

それに、わたしも正直な話、桜庭さんには迷惑してるんです。

くどいというか、しつこいぐらいナンパされたり足や…。

それにお尻も触られたりしました!

これってセクハラですよね?」

あのぉ…。

うーん、どうしよう困ったな。

愛さんの気持ちは至極当然だと思うし女の敵っ!て意気投合したいんだけど…。

でもそれって今回の事件に対する事情聴取となんの関係もない話なので。

「愛さん。

お気持ちは凄くわかりますし、愛さんの怒りは正当なもので至極共感出来ます。

恐らく、セクハラで桜庭 優さんを訴える事も出来ると思います。」

「でしょ!

でっしょう?

だってねぇ、彼は本当に女泣かせなんですよぉ。

ちょっとわたしが可愛いからって、そんなセクハラ許せませんよね?」

しかし、と話を続けたかったのに、突然私の言葉は愛さんのパワーで強制終了させられた。

いけない、春樹が白い目で私を見てるじゃないのよ。

早く話を進めないと、ますます愛さんのパワーに圧倒されてぐだぐだになっちゃう。

と焦る私を察してか、兄の純さんが助け舟を出してくれた。

「愛。

俺はそんな話は初耳だし、桜庭 優さんは正直許せない。

けど今はそういう話をする時じゃないだろ?

今は中里 瞬さんの吸血事件に対する事情聴取をうけているんだ。

話は後で、じっくり聞いてやるから今は我慢しろ!」

格好良い!

兄貴としての威厳がしっかりとあるんだ、この人には。

背丈も高くてスラッとしてるし。

まぁ面食いな私としては容姿は及第点なんだけど。

でもでも、こういう俺についてこい!的な男性って格好良いと思う。

て…、せっかく助け舟を出してくれたのに私が自分で脱線してちゃダメじゃない。

「ごめんなさぁい。」

可愛いっ!

兄の純さんに窘められた妹の愛さんは、そう言うと舌をペロっと出して素直に謝った。

一方、春樹といえば眉をピクピクと動かして不快そうにしている。

そりゃそうよね。

春樹からしてみれば、早期に事件を解決したくて速やかな事情聴取にしたいと思ってる訳で。

そんな時に話の腰を折られたんだから、不機嫌になるのもしょうがないか。

「では、事情聴取を続けても宜しいですか?」

おっ、抑えた抑えた!

うんうん。

いやぁ、春樹も刑事として我慢の二字を自覚してるのねぇ。

などと言ったら後で春樹にどやされそうだけど。

「それで、新田 新の話なのですが。

彼の姿を次に確認したのは、事件がおこってからで間違いないのですね?

それまでは戻ってきてはいないと。

しかも、いつ戻ってきたのかもわからないと。

怪しいのは、間違いなく怪しい。

が、しかし中里 瞬が吸血されて倒れるまで姿を確認されていないとなると…。

どうにも不透明な部分ですね。

桜庭 優の人間関係については、わかりました。

そういう事情であるなら、不自然な椅子の席の配置の理由も納得がいきます。

貴方がたに対する事情聴取は、これで終わりです。」

と春樹が言ったので、二人は軽く会釈をした。

「すみません。

他の方にも事情聴取を行いますので、また待合室へ戻っていて貰えますか?」

次いで、私は丁重に扉を開けて二人に会釈をした。


二人が出ていった後、私は腕組みをして考え込んだ。

「どういう事かしら。

今の話だと、確かに新くんが怪しいのかもしれない。

でも撮影スタジオに誰にも気づかれずに身を潜めそうな所なんてない訳だし。

それに、他の人達にしたって、社長を除いて明確なアリバイがある訳じゃない。

とはいえ、状況から考えたら撮影フォトスタジオに残っていた他の人達にも犯行は難しそうよね。

一番怪しいのは状況からしてみれば桜庭 優さんよね。

でも彼を疑うのは今までの事を考慮すれば間尺に合わない。

うーん、全くわっかんないなぁ。」

とか言ってるのに、春樹ったら人の意見に耳も貸さずに呑気に煙草なんか吹かしてるし。

「ちょっと、春樹ぃ。

春樹ったら話を聞いてる?」

私は春樹の我関せずみたいな態度に腹が立って、凄い剣幕でまくしたてた。

「全く五月蠅い女だな、お前は。」

ようやく煙草を吸い終わった春樹が、社長のいた椅子から立ちあがった。

「さて、行くぞ。」

「えっ?」

不意に春樹が思わぬことを言ったので、私は思わず口をポカーンとあけた。

「そんな不思議そうな顔つきをするな。

アホぅが余計にアホぅになるぞ?

なんとなくだが、中里 瞬の吸血事件については全貌が見えてきたんだよ。

わかったら早くついてこい、アホぅは。」

なぁんですってぇ?

と、いつもなら食ってかかりたい所なんだけど。

でも私には全貌どころか、片鱗すら見えてこないのよ。

「全貌が見えたって春樹…。

いったい今の事情聴取のどこに、そんな全貌がみえるヒントがあったの?」

悔しいんだけど。

春樹の推理力、洞察力、観察力、明敏さでは私は全く歯が立たない。

だから腰を低くして聞いてるのに、春樹ったら無表情な顔つきで黙ってついてこい!とでも言いたげに顎で私に指図をした。

「はぁ~るぅ~きぃ~?

私はどこに行くのって聞いてるんじゃない。」

私が恨めしげに両手首を折ってお化けの真似をすると、春樹は深い溜め息を吐いた。

「はぁぁぁぁ。

事件の概要を解き明かせ、とは言わない。

だがな。

パートナーを名乗るんなら、せめてこれから俺がどこへ行こうとしているかぐらいわかれよ。」

わかれったって。

私は春樹の長年連れ添った奥さんでもなければ、エスパーでもないのよ?

「待合室?」

と私が短く言うと、春樹は髪をかきあげながらさらに深い深い溜め息をもらした。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。

はい、ハズレだ。

やはり、お前に無理を言った俺が悪いのだろうな。

今から行くのは撮影スタジオだ。」

なるほど。

今までの事情聴取を元にして再度、現場検証を行うのね?




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