第二章<平刺突一閃>
「本当に頑固ね。
いえ、勇猛果敢な蛮勇とでも言うのかしら。
でも藤田くんらしいわ。
本当にその刀を使いこなせるというのなら、もう何も言わないから。」
ふん、元より貴様の讒言などに耳を貸す気はない。
俺は不思議と心が躍る高揚を覚えていた。
無力だった人間の俺が、ようやく妖かしを葬るすべを手に入れたからだ。
「上等だ。
俺の寿命と引き換えに、命を引き換えにしようとも。
やっとこれで俺自身の手で…、いや人間の力で悪を断つ事が出来る。
天下国家。
そして民衆と治安を守り、己が正義の為に殉じるのが新撰組!
正義に殉じて命を落とす事を、俺は恐れたりしない。
時代がどう移ろうとも、連綿と受け継がれた新撰組の正義に違いが生じるはずもない。
悪は即座に断つ!
さぁ、ナリソコナイよ。
俺の覚悟を受け止めてみせろ!」
俺はナリソコナイの一撃をサイドステップでかわすと、平晴眼の構えをとった。
次の瞬間、紅蓮の刀身はさらに眩く光り輝きだした。
「これは…、金色?」
白銀の炎を帯びた紅蓮は、さらに輝きを増して金色の光を発したのだ。
「藤田 春樹くん。
伊達に強い意志を持っている訳じゃなかったようね。
斬妖剣[紅蓮]が金色の輝きを発する時、その剣を握ったものを真の所有者と認める。
これは先々代の長老が残した遺言。
ついにその刀も所有者を見出したという事かしら。
最も、だからといって先程述べたデメリットが軽減されるなんて都合の良い事は起こらないけどね。」
ふん、そんなもの端から期待などしていないさ。
ナリソコナイは明らかに怯えていた。
先程までは果敢に攻撃してきたのに、今は壁際でこちらの動向を窺っているようだ。
「こないなら、今度はこちらから行くぞ!」
俺は平晴眼の構えのまま前傾姿勢をとり、そこから疾走しつつ平刺突でナリソコナイを貫こうとした。
が、ナリソコナイはすんでの所でそれをかわし、側面から俺に襲いかかってきた。
しかしナリソコナイの動きは一歩遅い。
初太刀をかわされた時点で俺はすでに、横凪の斬撃へと移行していたのだ。
「なんだと?」
どうも俺はまたナリソコナイの動態を見損なっていたようだ。
奴は俺の横凪の斬撃を刹那の拍子でかわし、後ろへと後退したのだ。
が、それも俺にとっては実は想定範囲内。
奴の後ろは壁なのだ。
いや、正しくは俺は最初から奴に壁を背負わせる腹積もりでいたのである。
「これで、終わりだぁ!」
ナリソコナイが壁にはりついた瞬間、それとほぼ同時期に俺は再度、平刺突を繰り出していた。
「キィィ。」
完全に奴を捉えた平刺突は、今度は確実に奴を刺し貫き、そして奴は紅蓮の炎に焼かれた。
かつて新撰組最強と噂されていた、一番隊組長の沖田総司が最も得意としたという三段刺突が見事に決まったのである。




