第二章<妖刀>
「鳴海 総一郎警部…。
本当に短い間だったけど貴方の事は忘れません。
貴方をパートナーに出来た事は一生涯、俺の誇りです。」
そして俺は美しい白の灰となった鳴海警部の亡骸を抱きしめて誓いを立てた。
「貴方は滅んでも、その誇り高く美しい志と理想は俺が必ず受け継ぎます!
人と吸血鬼との、より良き未来。
その明るい未来を必ず実現する事を、この刃に誓いましょう。
それが、俺達人間が言う永遠なのだから。」
しかし全てが終わった訳ではない。
したたかに壁に打ちつけられていたナリソコナイは、再び動き出して俺達の動向を探り始めていた。
「で、具体的にどうする気?
別にあたしの火で浄化してあげてもいいんだけど、それじゃあ貴方の気が収まらないわよね。
第一、貴方はあたしに言ったわ。
人に仇名す存在は、人の手で始末するのが筋だと。
鳴海さんは、その命をもって自分の理想と思想、その理念を示してくれた。
今度は藤田くん、貴方の番よ。
もちろん貴方も示してみせてくれるのよね?
貴方が提言している正義を。」
ふん、随分とプレッシャーをかけてくれる。
「貴様に言われるまでもない。
俺も、勿論行動に移すさ。
俺自身の正義の為に、そして鳴海警部と約束した未来の為に。」
俺は再度襲いかかってきたナリソコナイの一撃をかわし、素早く抜刀した。
「ふぅ。
ダメダメ。
そんなんじゃあナリソコナイは倒せない。
いいわ。
この剣、特別に貴方にあげる!」
ほぅ。
美夜が不意に召喚した剣は、見事な拵えだが、それでいてどこか妖しさを秘めた日本刀だった。
鉄拵えの鞘に見事な紫の刀身は、まるで惹きこまれてしまうような危険な匂いのする、乱れ刃の逸品であり、俺は思わずその出来栄えに一瞬魅入られそうになった。
「貴様から貰うというのはやや癪に障るが、遠慮なく使わせてもらう。」
というか、早くこの刀を抜いて切れ味を試してみたいというのは剣士の救い難い性というやつなのだろうな。
不覚にも俺は興奮を覚えて武者震いさえしていた。
が、抜刀しようとする俺を美夜が止めた。
「その刀。
子松五郎良兼、長曾根虎徹、五郎入道正宗を、あたし達一族の妖火で溶解してさらに撃ち直して鍛え上げ、そして焼き入れの際に船と呼ぶ水槽で急冷する為の冷却剤として、あたし達一族の中でも歴代随一と評される最も妖力を持つ先々代の長老の血を使用した、一族秘伝の妖刀よ。
その名を斬妖剣[紅蓮]。
いかなる妖かしをも斬り裂くこの刀は、恐らく全ての吸血鬼をも一撃で一刀両断に出来るわ。
でも…。
その刀には1つ、致命的なデメリットがあるの。
あたし達一族では召喚こそ出来るものの、刀を振るう事は出来ない。
何故なら、力を刀に吸い取られてしまうから。
この刀を振るう事が出来るのは人間だけ。
でも人間にとっても、その刀は大きなデメリットがあるの。
その刀を一振りする毎に、使用した人間の寿命は2年縮むのよ。
いい、一振りよ?
たった一振りするだけで2年もの寿命が、その刀に吸い取られてしまうの。」
なるほどな。
最初の製造法は古えに伝わる斬鉄剣と同じ工程か。
ふん、面白い。
美夜の力説を、まるで聞いていないかのようになんの躊躇もせずに、俺は抜刀した。




