第二章<誇り高き志>
アルラウネの言葉に鳴海警部は怒りをあらわにした。
「貴様。
そんな傲慢で相手の気持ちを顧みない残忍さこそが、貴様の最も許せない大罪なのだ!
吸血鬼だから?
人間だから?
そんなものは些細な違いでしかないんだ。
大事なのは心だろう。
人間だろうが、吸血鬼だろうが、肝心なのは他人を思いやる気持ち。
そして優しさ。
なにより正義感だ!
他人の痛みや苦しみ、悲しみを顧みない奴に吸血鬼を名乗って欲しくない。
そんな偏見や差別こそが、本来正当に扱われねばならない心優しき吸血鬼の未来を奪い続けている事を何故理解出来ないんだ?
俺は許さない。
絶対に貴様を許しはしないぞ!」
鳴海警部…。
俺はこの時、初めて鳴海警部をパートナーと出来た事を誇りに思った。
そして同時に、自身の中にある吸血鬼に対する偏見や差別を恥じた。
人間も吸血鬼も同じ感情のある者なのだな。
そして悪しき心は確かに人にもある。
そういう意味で言えば、まさに心こそが大事なのだ。
「理想ね。
鳴海警部の誇り高い清く尊い志には賛同してもいい。
でも、それはやっぱり理想論よ。」
美夜。
この女はまだそんな否定的な意見しか出てこないのか。
やはりアルラウネを倒した後は、こいつの逮捕もせねばなるまい。
「くくくっ。
かつての我が分身よ、同じ思いならば刑事どもに味方などせずに我に従え!」
アルラウネは一つ、大きなミスを犯した。
それは、美夜の歪んだ自愛性に傷をつけた事だ。
「馬鹿ね、アルラウネ。
かつての我が分身?
ふざけないで!
それはあたしの台詞よ。
あなたはあたしを元にして生まれた出来そこないじゃない。
いい事?
あたしがオリジナルなの。
貴女は所詮、あたしというオリジナルの一部から生まれたにすぎない。
そんな貴女如きが我に従え?
ずうずうしいにも程があるというものよ。」
ふん。
悪には悪なりの美学があるという事か。
ま、俺には理解出来ないし理解したくもないし理解しようとも思わんがな。
「さて、無事に決別も済んだ所で貴様には消えてもらおうか。」
そう言うと鳴海警部は、掌と掌を合わせて旋風を作り出した。
最初の小さな旋風は、鳴海警部の手の動きにあわせてどんどん大きくなっていき、そして最後には巨大な竜巻に成長した。
「斬り裂け竜巻、大旋風っ!」
そうか、吸血鬼について一つわかった事がある。
吸血鬼の中でも強い能力を有している者には属性があるらしい。




