第二章<判明>
「我々は警察です!
皆さん、落ち着いて下さい。
そして、その位置から皆さん一切動かないで下さい。」
ほぅ、現場保存の原則としては、適切な判断だな。
「行きましょう。」
美夜の指示に従うつもりは毛頭ないが、ここはそれが正解なのだから仕方がない、か。
「今から現場検証を行うので、皆さんはそのまま待機していて下さい。」
と言ってから、俺も自動販売機のある方へと向かった。
ふむ。
自動販売機には40代後半の女性が1人、倒れている。
見れば、顔には全く精気がなく、土気色の顔でさながらミイラのようだ。
早速、瞳孔や脈を調べてみたが、どうやらすでに死亡している。
とすれば、間違いなくナリソコナイに取り憑かれていたのは、この哀れなおばさんだろうな。
そしてその隣には同じ年代の女性が1人。
もしナリソコナイが口から口へと移動して取り憑くのが手段だとすれば、一番怪しいのがこの女性という事になるだろうな。
「用を為さないナリソコナイは、あたしの炎で闇に…。」
こらこら!
「このアホぅが!
貴様は状況判断だけで、確固たる立証もなしに無実の女性を焼き殺すつもりか!」
俺は指から火を出そうとしていた美夜を、慌てて制止しつつ小声で罵倒した。
「可能性だけで行動に移すのは関心しないな、美夜さん。」
鳴海警部も、美夜の肩に手を置いて説き伏せた。
「でも、ナリソコナイは口から口へと移動しながら人に取り憑くのよ?
ならどう考えても、この人しか考えられないじゃない。」
はぁ。
ま、このアホぅに洞察力だの推理だのを求めちゃいないんだがな。
しかしあまりにも突飛で短絡的な手段に出られてもかなわん。
「考えてもみろ。
状況的に見たら、確かに貴様の言うとおりだ。
だが、それ故におかしいとは思わんのか?
今のこの状況では自分が犯人ですと名乗りをあげているようなものだろう。
貴様が言うには、人を乗っ取って操るぐらいの思考はあるのだろう?
ならば、何か他の手段を講じたのではないかと思案するのが普通だろうが。」
くっそぅ、なんで俺が美夜なんぞの為に、ここまで噛み砕いた説明をせねばならんのだ。
このアホぅは。
「で、他の人は、と。
レジの女性3人はレジから動いた形跡はないな。
ん?」
そう、鳴海警部と同時に俺は気付いた。
5人のおばさん達は、元々同じ場所で世間話をしていた。
そして、うち2人が自動販売機へと向かって行く所を確認している。
その2人は残り3人にカップ式のジュースを渡した。
その後、2人は自分達のジュースを買いに自動販売機へと向かい、そしてうち1人が倒れた。
そう、この状況で俺達はピン!ときたのだ。
「鳴海警部、犯人は恐らく。」
「あぁ、あの人しかいないだろうな。」
ふん、俺達の爪の垢を美夜にも飲ませてやりたいものだな。
「そこの女性の方!
貴女はこの場に残って下さい。」
俺も鳴海警部に続いた。
「残りの方は、大至急ここから立ち去って下さい!」
俺達は、1人の女性を残して他の女性達をすみやかに避難させた。
「あの、私がなんだって言いはるん?
しほりさんが死なはったんは発作やおへんの?」
ふん、まだシラを切り通せるつもりか。
「どういう事?
このおばさんがまさか、ナリソコナイだって言うの?
だってこのおばさん。
さっきの死体から一番離れた、店内の入り口付近にいたじゃない。」




