第二章<捜索2>
だが俺が思った程、鳴海という男はナイーブではなさそうだ。
まぁそれぐらいでなくば、こういう仕事は務まらん。
ん?
なんだ、何故黙ったままにこにこしている?
すると突然、鳴海警部は俺に軽くエルボーをかましてきやがった。
「痛いじゃないですか、いきなり何をするんです。」
俺の文句に鳴海警部は、牙のある白い歯を見せて笑った。
「春樹くん、君が頭が切れるのもわかる。
そして饒舌なのもわかる。
君の生き様に賛同もするし、その誇り高い志も十分に理解出来る。
だがな、さっきのは明らかに屁理屈じゃないかい?」
ふん、そんな事か。
くだらん。
が、俺はそのタフさに免じて謝る事にした。
「すいません。
確かにさっきのは僕の屁理屈でした。
ですが、だからといって煙草をやめるつもりは一向にない。
それに20歳を遙かに過ぎた身としては、貴方にとやかく言われる筋合いでもない。」
と俺がまくしたてると、鳴海警部は黙して両手をあげた。
このままでは俺も気まずいので、ここで話を変える事にした。
「とにかく、ここ最近の連続吸血殺人事件は祇園近辺で起こっています。
ここは二手に分かれて聞き込みをすべきでは?」
鳴海警部は、しばし両腕を組んで思案した。
「良いだろう。
確かに聞き込み調査ならば、人海戦術で済ました方が早い。
しかし昨夜の事もある。
何かあったら…。」
言われるまでもない。
「何か異変にでも巻き込まれたら、即座に携帯に電話しますから。」
俺は鳴海警部が最後まで言い終わる前に打開策を示した。
「了解だ、それでは後で落ち合おう!」
鳴海警部は手を振ると、俺が向かおうとする正面の八坂神社とは反対の、四条大橋の方へと向かった。
八坂神社。
夏ともなると祇園祭りで賑わう界隈だが、正直俺は大阪のだんじり祭りの方が勇壮で好きだ。
ま、この際は俺個人の好き嫌いなぞどうでもよい。
とにかく聞き込みを開始するとしよう。
1時間後…
くそっ!
どうにも要領を得ない。
かなり聞き込みに時間を割いたわりには有力な情報を得る事も出来なかった。
まぁ、敵もそう簡単には尻尾を掴ませてはくれん。
それに…。
この界隈は着物だけではなく、何故か漬物屋が多い。
聞き込みが商売の邪魔になるからという理由で、やむを得ず購入した漬物がとんだお荷物だ。
「鳴海警部との合流時間まで、まだ30分はあるな。」
俺は半分やけになって八坂神社の境内に向かって歩いていた。
すると…。
夕方から突然、深夜にでも変わったかの如く辺りは突然、漆黒の闇の世界へと変貌した。
「これは、俺が入りこんだというより闇の世界に俺が引きずり込まれた。
と、言った方が正しいな。」
とにかく俺は携帯電話で鳴海警部を呼ぼうとしたのだが、生憎と県外扱いになっていた。
「こんにちは、藤田 春樹さん。」
こいつか。




