第二章<~プロローグ2~>
ふん、本当にぐぅの根も出ないようだな。
「わかったら、さっさと自首しろ。
己が犯した罪の重さを清算し、そして綺麗な体になって人生をもう一度やり直すんだな。
何度も人の血を食んだ貴様の事だ、そうやすやすとは人工血液に馴染まんかもしれんがな。
今の貴様がしなければならない事は自分の罪を自覚し、そして反省と謝罪。
勿論、一度罪を犯した吸血鬼が簡単に世間に認められるとは俺も思わん。
だが、それは人間とて同じ事なのだ。」
だが、俺はこの吸血姫の歪んだ性格を見誤っていたらしい。
「ふふっ。
うふふふふっ、あはははは!」
随分と癇に障る笑い方だ。
「あなた、嫌いよ。
まるで自分は正義の化身だとでも言いたげよね。
でも人間なんて所詮は身勝手で残酷な生き物じゃない。
平気で他人を傷つけ、殺め、嫉妬し、そして自分達が世界を独占しているかのように自然を破壊していってる。
言論で言い負かせれば正しいの?
あなたは理屈であたしを責めているだけじゃない。」
ふっ、アホぅが。
理屈ではなく、俺の言い分はいわば正論だ。
「次は人間の存在を愚弄したい訳か。
確かに人間にも平気で悪事を働く者はいる。
だからこそ、それを正す為に警察組織があるのではないか。
確かに人の心は弱い。
貴様が言ったように罪を犯すものもいれば、負の感情に流される事もある。
だがな、貴様はまるでわかっていない!
吸血鬼だの、人間だの、そんな些細なカテゴリーなぞどうでも良い事だ。
肝心なのは、正義であるか悪であるか。
そこに愛や慈悲があるのか、ないのかだ!
そもそも、自分の罪を棚にあげておいて人間批判なぞ荒唐無稽な言論だとは思わないのか?」
が、どうやら奴は俺がどうでも良い事だ。の発言に気を悪くしたらしい。
「人間の貴方に何がわかるのよ…。
ただただ吸血鬼というだけで人間達はあたし達を迫害する。
恐れ、そして存在自体を否定する。
あたし達が過去どれ程の苦渋を舐めてきたか!
それが人工血液が出来たからって共存繁栄?
とんだ茶番よね。
共存繁栄などと口にしても、人間の本質が変わっていない限り結局は同じよ。
蔭では差別し、そして恐れる。
貴方がそんなに綺麗事を言い続けるなら、あたしに血を吸わせなさい!
そして、あたしの下僕になったらいいのよ。
そうすれば、貴方の考えも変わるわ。」
ふん、アホぅが!
どうやら説得は無理のようだな。
別に俺は武力討伐が好きではない。
だが、こういったわからずやの輩には、そうするしかあるまいな。
「きっぱりと断る。
俺は人間でいる事に誇りを持っているんでな。
貴様のように自分を棚にあげて人間を卑下するような安っぽい感情なぞ持ちあわせてはいない。」
くっ!
なんだ、俺の視覚が奴に惹き寄せられていく…。
どうやら魅了[チャーム]という能力か。
魅了[チャーム]の能力があるという事は、奴は真祖の血脈。
これは少々やっかいだな。
奴は俺が術中にはまったと見るや、背筋をゾクゾクさせるような甘い笑顔を見せた。
そしてゆっくりと手を差し伸べ、俺を自らの懐へと誘おうとしている。
「うふふふふっ。
さぁ、おいで。」
アホぅが!
どうやらこいつは俺の信念や正義感を軽んじているようだ。
だが、考えようによっては好都合か。
魅せられたフリをして近づき、刹那の拍子で抜刀しつつ平晴眼の構えをとって平刺突を決めてやる。
後少し。
もうすぐだ。
よし、この距離まで間合いを詰めればはずす事は皆無だろう。
「アホぅが!
俺が貴様の魅了[チャーム]如きにかかると本気で思ったか!」
だが、次の瞬間。
信じられない事が起きた。




