第一章<衝突>
応接室では、一応に驚愕する者、恐怖に怯える者、疑念を抱く者とに分かれていた。
「それで刑事さん。
犯人は特定出来まして?」
沈黙に耐えきれなくなったアマーリエさんが、まず口火を切った。
「刑事さん、久美さんは多分出来ごころやったんやと思いますわ。
どうか情状酌量という事で穏便に頼んます!」
ちょっとちょっと多田さん。
もう久美さんを犯人扱い?
「だから!
私は陽子さんを殺してなんかいません!
私は何も知らないんですぅ。」
あぁ、泣かないで久美さん。
「次は…次は私の番だ。
次は私があの男に殺される番なんだぁぁ!」
はいそこ、まだなんにもわかってないのに悲観しないでよね、川島さん。
「久美さんが人殺しなんてするはずありません!
私が証明します!」
涼子さん…。
気持ちは私も同じだけど今はそれが言えない…。
「静粛に。
とにかく今は僕の見解で今後を決定させて頂きます。」
え?
じゃあ春樹は密室殺人の謎が解けたの?
流石はアブジーが誇る毒舌なる妖刀!
「僕の見解はまず、犯人とは断定出来ないものの、状況証拠に基づいて中津 久美さん。
貴方を第一級容疑者として署の方へと同行して頂きます。
そして参考人として多田 光則さん。
貴方にも来て頂きます。」
なぁんですってぇ?
「ふざけないでよ春樹!
久美さんが犯人な訳ないじゃない。
真犯人は必ず別にいるわよ!
ってかそんな簡単に結論を出すってどういう了見よ?」
私はあんまりにも腹が立って、思わず本気でキレた。
「なら聞く。
あれだけ状況証拠が揃っているのに、どうやって中津 久美の無実を証明するつもりだ?
まさか同情や思いこみ、決めつけで発言している訳じゃないだろうな!」
うっ…。
悔しいけど春樹に反論する言葉を私は用意していない。
「なら、私が真犯人をあげてみせるわよ!」
言ってしまった…。
でも言った以上は後へは引けないし。
すると春樹はニヤリとほくそ笑んだ…、ように見えた。
「わかった。
そこまで言うならお前は残って事件を解決してみろ。
だが、猶予はそんなにやれんぞ?」
ううっ。
なんでそんなに私を追い詰めるような事を言うかなぁ。
「わかったわよ。
必ずギャフンと言わせてやるんだから。」
私が謎を解くしかない。
それも早期に!
鼻息も荒く決意を露わにした所で突如、春樹は私の耳元で気になるキーワードを言った。
「おい。
俺がさっき言った諺をよ~く咀嚼しろよ?」
そう言うと春樹は久美さんに手錠をはめ、パトカーに2人を乗せた。
「おいおい、ちょっと待ちたまえ!
私をストーキングしている吸血鬼はどうするんだ。
あいつが…。
伊東 雅人か、その弟が犯人じゃないのか?」
そうだった。
そもそも私達はその件がメインで、この邸宅に来ていたんだった。
しかし春樹は川島氏の意見には耳も貸さずに去っていった。
「お任せ下さい。
春樹に代わって私がその線も含めてちゃんと捜査しますから。」
と私はにこにこしながら敬礼したのに、川島氏は明らかに怪訝そうな目つきで私を見た。
「君?
君かぁ、本当に大丈夫なのかね?」
川島氏はそう言うと、なんだか落胆したような面持ちで館へと戻っていった。
しっっつれいよねぇ。
私ってそんな無能だって言いたいのかしら。
まぁ春樹と比べたらギリギリ負けてるかな?
などと1人寂しく自己弁護を呟いた。




