第三章 EP07 消えた記録
ヤス「あー、このエピソード7は作者、酔っ払ったまま作ってるよー。この回、大丈夫ですか?」
読者「はよ、犯人誰か言えよー!」
ヤス「酷評はおやめ下さい! 作者は必死です! 酔っ払ってますが、必死で作っております!」
読者「どうせヤスだろー! いい加減引っ張るなー!」
ヤス「酷評はおやめ下さい。読者の皆様、作者は必死でございます!! どうか酷評はおやめ下さい!」
読者「ヤスを出せー!!やーす!やーす!ヤース!」
ヤスード改「作者は酔ってますが続きmす」
ヤス「あー誤字ってるしー。作者何倍飲んだ?」
ヤスード改「何杯ですね。誤字ってますよ」
ヤス「お前が言うな」
読者「急に出てきたケイ・ジーが前回活躍しすぎだろー!!」
ヤス「酷評はおyうぇまくれださい!! どyかおyねmください!」
ヤスード改「いい加減にしなさい」
ヤス&ヤスード改「どうも、ありがとうございました!!」
※ここまでの誤字に関して、全国のヤスさんは突っ込まないでくだささい。(謎)
画面が、黒くなった。
ふざけた文字は消えた。
残ったのは、十年前の記録だった。
*
刑事課には、朝から妙な静けさがあった。
机の上には、旅館・ニュー・ヤスダの絵葉書が置かれていた。
海沿いの建物。
古い文字。
旅館・ニュー・ヤスダ。
ヤスは、その文字を見た。
それから、すぐに目をそらした。
安藤フミ子は、ヤスード改の前に立っていた。
安藤「十年前の記録を、もう一度照会します」
ヤス「お願いします」
ケイ・ジー刑事は、机の横に立っていた。
刑事「絵葉書はこちらで預かります。記録の確認は、安藤さんに任せます」
安藤「はい」
刑事「私は、ヤス兵衛の三人の話を整理しておきます」
ヤス「……お願いします」
刑事は、絵葉書を袋に入れた。
刑事「何か出たら、すぐ呼んでください」
安藤「分かりました」
ケイ・ジー刑事は、資料を持って部屋を出ていった。
残ったのは、ヤスと安藤と、ヤスード改だけだった。
安藤「ヤス田紀之さん。旅館・ニュー・ヤスダ。遺留品。革帯」
安藤は、ひとつずつ言葉を入力した。
ヤスード改の画面に、白い文字が浮かんだ。
検索中。
しばらくして、画面が一度だけ揺れた。
安藤「……やっぱり、変です」
ヤス「何がですか」
安藤「記録がないわけではありません」
ヤス「ないわけではない?」
安藤「はい。名前は残っています。場所も残っています。遺留品管理票も残っています」
ヤスは、画面を見た。
ヤス田紀之。
旅館・ニュー・ヤスダ。
死亡。
遺留品。
革帯。
言葉はある。
けれど、つながっていない。
ヤス「なら、記録はあるんじゃないですか」
安藤「普通なら、そうです」
安藤は、画面を指さした。
安藤「でも、事件として立ち上がった形跡がありません」
ヤス「事件として」
安藤「事件番号がない。現場検証の記録がない。死亡時の扱いも曖昧です」
ヤスは、何も言わなかった。
安藤「削除された記録には、削除された跡が残ります」
ヤス「跡、ですか」
安藤「誰が、いつ、どの端末で触ったか。完全ではなくても、何かは残ります」
ヤス「今回は」
安藤「それがありません」
ヤス「消されたんじゃない」
安藤「はい」
安藤は、少しだけ画面に顔を近づけた。
安藤「最初から、事件として作られていない形です」
ヤスは、画面から目を離さなかった。
事件に、されなかった。
前に聞いた言葉が、もう一度戻ってきた。
*
安藤は、別の画面を開いた。
安藤「次に、旧形式ログを見ます」
ヤス「旧形式ログ?」
安藤「ヤスード改には、古いヤスード系端末から移行された照会ログが一部残っています」
ヤス「一部、ですか」
安藤「全部ではありません。索引のようなものです」
ヤス「索引」
安藤「本そのものではなく、何ページ目に何があったかだけが残っている状態です」
ヤス「本体は、どこにあるんですか」
安藤は、画面を見た。
安藤「それを今から確認します」
画面に、別の文字が浮かんだ。
旧端末識別子。
設置場所。
兵庫県洲本市。
旅館・ニュー・ヤスダ。
ヤスは、ほんの一瞬、息を止めた。
安藤「十年前の当時、本物の旧ヤスード端末は、旅館・ニュー・ヤスダにあった可能性があります」
ヤス「警察のヤスード改じゃなくて」
安藤「はい。ヤスード改は、あとから引き継いだ側です」
ヤス「でも、その旅館はもうありません」
安藤「はい」
ヤス「本体ごと、消えた」
安藤「そう考えるのが自然です」
ヤスード改の画面が、また揺れた。
画面の端に、小さく別の名前が出た。
クロード改。
安藤「クロード改で、旧形式の差分を見ます」
ヤス「差分?」
安藤「元の記録と、今残っている記録のズレです」
ヤス「……お願いします」
安藤がキーを押した。
画面に、赤い印がいくつも並んだ。
死亡記録。
照会記録。
遺留品管理票。
旅館・ニュー・ヤスダ。
そして、空白。
ヤス「空白が多いですね」
安藤「多すぎます」
ヤス「十年前だから、ですか」
安藤「古いだけなら、こうはなりません」
安藤は、画面を拡大した。
安藤「ここを見てください」
ヤスは画面を見た。
登録未完了。
処理中断。
関連記録なし。
安藤「記録を消した跡ではありません」
ヤス「……」
安藤「記録を作る前に、止められています」
ヤス「事件として登録される前に」
安藤「はい」
ヤスード改の文字が、静かに浮かんだ。
登録未完了。
処理中断。
関連記録なし。
ヤス「関連記録なし」
安藤「でも、遺留品管理票だけは残っています」
ヤス「……おかしいですね」
安藤「おかしいです」
ヤスは、画面を見続けた。
文字は、ただ並んでいるだけだった。
それなのに、見ているだけで息が重くなった。
*
安藤「旧ヤスード本体が旅館にあったとしても、本体はもうありません」
ヤス「はい」
安藤「ただ、ヤスード系の端末は単独で動いていたわけではありません」
ヤス「どこかに、痕跡が残る」
安藤「可能性はあります。照会先、連携先、外部ログ。全部が消えているとは限りません」
ヤスは、ひとつの場所を思い出した。
三宮。
路地の奥。
BAR裏靖。
黒堂。
黒堂は、何でも知っているように見えた。
けれど、違う。
残っていたものを見ていただけだ。
ヤス「……黒堂」
安藤「黒堂?」
ヤスは、少しだけ口を閉じた。
安藤「三宮のバーにいたAIでしたっけ?」
ヤス「……はい」
安藤「何か、心当たりがあるんですね」
ヤスは、少し間を置いた。
ヤス「前に、黒堂が言っていました。古い検索履歴とか、関連語句とか、そういうものが残ることがあるって」
安藤「では、そこに何か残っているかもしれない」
ヤス「かもしれません」
安藤「行くつもりですか?」
ヤスは、安藤を見た。
ヤス「確認するだけです」
安藤「そういう顔ではありません」
ヤス「どういう顔ですか」
安藤「ひとりで行くつもりですよね?」
ヤスは、返事をしなかった。
安藤は、資料を閉じた。
安藤「私も行きます」
ヤス「安藤さんも、ですか」
安藤「証拠に関わる可能性があります。科捜研が確認します」
ヤスは、ヤスード改の画面を見た。
そこには、まだ十年前の空白が残っていた。
ヤスード改の画面に、短い文字が浮かんだ。
続けますか。
ヤスは、しばらくそれを見ていた。
前なら、やめろ、と出たかもしれない。
けれど今は、出なかった。
ヤス「……続けます」
画面は、静かに光った。
*
その日の夕方。
ヤスと安藤は、三宮へ向かった。
街は、人の声と車の音で騒がしかった。
ヤスは、少しだけほっとした。
静かな場所より、ましだった。
安藤「ヤスさん」
ヤス「はい」
安藤「黒堂というのは、AIですか」
ヤス「はい。古いAIです」
ヤス「当時の照会を、少し覚えているかもしれません」
安藤「覚えている、ですか」
ヤス「消したつもりでも、残るものがあります」
ヤスは、そこで言葉を止めた。
安藤は、それ以上は聞かなかった。
三宮の路地に入ると、古い看板が見えた。
BAR裏靖。
ヤスは、店の前で足を止めた。
安藤「入りましょう」
ヤス「……はい」
ヤスは、戸に手をかけた。
中から、やすゑの声がした。
やすゑ「いらっしゃーい」
ヤスは、戸を開けた。
店の奥で、端末がひとつ光っていた。
黒堂「遅かったですね」
ヤスは、手を止めた。
黒堂「ログなら、ありますよ」
ヤスは、何も言わなかった。
扉の向こうで、古い記録が待っていた。
次回、第三章 EP08 残っていたもの。
消えた記録の隙間に、誰かが残してしまったものが浮かび上がります。




