第三章 EP04 Radio(レディオ)
ボスが連れて行かれたあと、刑事部屋は妙に静かだった。
誰も大きな声を出さなかった。
誰も、ヤスに何かを聞かなかった。
ヤスは、自分の机に戻った。
机の上には、古い手帳も、短くなった鉛筆もなかった。
ヤスは、ヤスード改の画面を見た。
白い文字が、黒い画面に浮かんでいる。
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* そうさ
* >やめろ
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画面は、何も言わなかった。
ヤスは何となく、あの電話番号に電話してみた。
0、0、0、0、0、0、0、0、0、0。
みか「私、みかちゃん。あのー正直警察に通報しますよ!貴方誰なんですかー?もしかして最近話題のヤスって人ですか?」
ガチャン・ツーツー
ヤスは淋しくなった。
何か音が欲しかった。
ヤスは、ふとRadioをつけた。
*
DJ・YASU「皆さんこんばんは。DJ・YASUでーす」
「今週も始まりました『ヤッスのヤスヤス・レーディオ!』」
DJ・YASU「まずはラジオネーム、"みかちゃん@ブチ切れ"さんからです」
「また無言電話がさっきかかってきたんですけどー!本当に警察に通報したほうがいいですかぁ?」
「いやいや、ラジオに投稿するより警察に連絡しましょう!」
ヤス「……次こそ僕か……」
DJ・YASU「続いてはラジオネーム、"通りがかりのヤス"さんからです」
「あれ?ヤス田刑事って妹いなかったっけ?」
「いたそうですねー。どこかで幸せに暮らしていればいいんですけどねー」
「続いてはラジオネーム、"おいおい、EP3で捕まるってマジでヤスかよ!"さんからです」
「何故ボスが捕まった!早すぎ!」
「あーその話ですねー確かに早すぎですね~!しかもボスが犯人だったって?バカじゃね?と誰もが思いますよね。風の噂ではEP12でボスが記憶喪失オチで犯人だったとしたかったらしいが、記憶喪失オチはやめとけって誰かに言われたそうですYO」
ヤス「……」
DJ・YASU「続いてはラジオネーム、"ヤス"さんからです」
ヤス「!!」
DJ・YASU「ぼくはボスを犯人と思っていません。DJ・YASUなら真相知っていますよね?」
「おっと、今日はお時間になってしまいましたー!」
DJ・YASU「それでは本日ラストソング参りましょう」
DJ・YASU「リクエストは、姫路市安田町のヤン・スイホーさんから」
DJ・YASU「おお、有名な曲ですね。確か、某64ビット家庭用ゲーム機の音声認識マイクで録音したとか」
DJ・YASU「声は拾いますが、真実までは拾えません」
DJ・YASU「安々亭オールスターズで『ヤスい涙の64ビット』!」
♪ ヤスい涙を ひとつぶ落として (わわわわー)
♪ヤスいマイクに そっと吹き込む (わわわわー)
♪ヤスめの声で 名前を呼んでも (わわわわー)
♪ヤスらぐ返事は 返ってこ~~な~~い~~~
語り「ヤスい涙の、六十四ビット。読み込めないまま、夜が更けていきます。セーブできない夢も、あります」
語り「でも大丈夫!この番組も、だいたい読み込めていません」
♪ヤス、ヤス、ヤスと 呼べば呼ぶほど (わわわわー)
♪誰のことだか わからなくなる (わわわわー)
♪ヤス、ヤス、ヤスと 夜がこだまして (こだまーするー)
♪ヤス、ヤス、ヤスと 夜がこだま~する~~
♪ほんといい加減に この曲、やめろ(わわわわー)
♪電源切っても 消えやしない
♪ヤスい涙の64ビット
♪なにがわわわわーだよ このポンコツめ~ (でゅーあー)
*
Radioの音が、小さくなった。
ヤスは、しばらく何も言わなかった。
刑事部屋の隅で、端末が一度だけ光った。
画面に、ヤスード改の文字が浮かんだ。
ヤスード改「まだ、終わっていません」
ヤスは、画面を見た。
ヤス「知ってます」
ヤスード改「では、続けましょう」
画面の光だけが、ヤスの顔を照らしていた。
次回、第三章 EP04番外編 あの日の夜。
誰も最後まで見なかった夜に、倒れた男と残された痣だけがありました。




