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第二章 EP04 Radio(レディオ)

コウゾウの屋敷を出ると、雨は少し弱くなっていた。

空はまだ暗い。


ボスは助手席に乗り込み、ヤスは車を園田方面へ走らせた。

ヤスは運転をしながら、しばらく黙っていた。


黙っているヤスは、少しだけ不気味だった。


ボス「何だ」

ヤス「まだ何も言ってませんよ」

ボス「言う前の顔をしている」

ヤス「僕、そんな顔してます?」

ボス「している」


車は花隈を抜け、広い道へ出た。

雨粒がフロントガラスの端へ流れていく。


ヤス「あ、ボス」

ボス「何だ」

ヤス「ラジオつけていいですか?」

ボス「好きにしろ」

ヤス「ありがとうございます」


ヤスは運転席から手を伸ばし、ラジオのスイッチを入れた。


ザーッというノイズが流れた。


次に、妙に明るい声が車内に響いた。

挿絵(By みてみん)






DJ・YASU「皆さんこんばんは。DJ・YASUでーす」

DJ・YASU「今週も始まりました『ヤッスのヤスヤス・レーディオ!』」


ボス「……」

ヤス「僕このラジオ。毎週録音してるんですよ」


DJ・YASU「今週も色々お手紙頂いているので早速読んでいきましょう!」


DJ・YASU「まずはラジオネーム、"みかちゃん"さんからです」

DJ・YASU「最近無言電話ばかりかかってきて困ってるんですけどーどうしたらいいですかー」

DJ・YASU「あーそれはうっとうしいですね。警察に相談してもいいかもしれませんね」


ヤス「……あ」

ボス「……」



DJ・YASU「続いてはラジオネーム、"しゃーなしで見ているヤス"さんからです」

DJ・YASU「犯人、どうせヤスですよね?」

DJ・YASU「うーん、僕はこれはわからないけどヤスって人じゃないかな?」


ヤス「……」



DJ・YASU「どんどんいきましょう。ラジオネーム、"屁は卑怯なヤス"さんからです」

DJ・YASU「なんだよーあのおならオチ。ひどくねーか!」

DJ・YASU「何の事かはわからないんですが、屁で逃げるってのは確かに卑怯ですよね!ヘヘっw」




DJ・YASU「続いては。ラジオネーム、"ヤスード改オチ"さんからです」

DJ・YASU「ヤスード改が最初は関西弁だったと思うんですけどー」

DJ・YASU「あーこれはー作者とAIがどうやら設定を忘れてたらしくてー、ヤス多すぎて混乱してしまったようでー、ってのは冗談で、アップデートで関西弁じゃなくなったと辻褄をあわせてるらしいですよ。想像ですが」



DJ・YASU「本日最後、ラジオネーム、"私が本当のヤス"さんからです」

DJ・YASU「園田まで行くだけで一話使うんですか?とお便り!」

DJ・YASU「そろそろ犯人が誰かくらい、教えてもいいんじゃないでしょうかね。まぁタイトルで教えてるみたいですが、何の事かはわかりませんが、園田まででもう1話あるとか、ないとか。詳しくはわかりませんが」


ヤス「ボス、車でどのくらいかかるんですか?」

ボス「30分くらいかかるかな」



DJ・YASU「それでは1曲参りましょう」

DJ・YASU「姫路市・安田からのリクエスト"ヤン・スイホー"さんから」


DJ・YASU「おお、有名な曲ですね。確か、某家庭用ゲーム機の2コンのマイクで録音したとか」


ヤス「音質、悪そうですね」

ボス「そこじゃない」



DJ・YASU「安々亭オールスターズで『ヤスい恋ほどよく燃える』!」


♪ ヤスい恋ほど よく燃える (わわわわー)

♪ ヤスい言葉で また揺れる (わわわわー)

♪ ヤスらぎなんて いらないわ (わわわわー)

♪ ヤスの名前で 夜が明ける~


♪ ヤスく見えても 罪な人 (つーみー)

♪ ヤスい笑顔で 逃げた人 (にげちゃだめー)

♪ ヤスを信じた 私だーけ (私だーけ)

♪ ヤスの涙は 安くない(わわわわー)





ボスは、無言でラジオを切った。


ヤス「最後まで聞きましょうよ」

ボス「事件に戻る」

ヤス「今のも事件の一部かもしれませんよ」

ボス「ならない」

ヤス「最近、そればっかりですね」

ボス「おまえがそればかり言うからだ」



その時、ボスの携帯が鳴った。

ボスは助手席で画面を確認し、通話に出た。


ボス「鈴木です」


ヤスは黙った。

ラジオとは違う空気が、車内に入ってきた。


ボス「……はい」

ボス「佐々木キミヤスの死亡推定時刻ですか」

ボス「分かりました」


ボスの声が、少しだけ低くなった。


ボス「小宮の所在は」

ボス「……防犯カメラ」

ボス「会計記録も」

ボス「目撃者も一致しているんですね」


ヤスは、ボスの横顔を見た。


ボス「分かりました。資料をこちらにも回してください」


通話が切れた。


車内には、雨の音だけが残った。


ヤス「何か分かったんですか」


ボスは、すぐには答えなかった。


ヤス「ボス」

ボス「佐々木キミヤスが殺された時刻に、小宮にはアリバイがあった」

ヤス「アリバイ」


ボス「ああ」

ヤス「じゃあ、小宮さんは」

ボス「佐々木キミヤスを殺せない」


ヤスは、言葉を失った。


小宮末広は、犯人として処理された。

遺書があり、自殺したことになっていた。


だが、小宮は佐々木キミヤスを殺せない。

そして、小宮自身も殺されていた。


ヤス「小宮さんは、犯人じゃなかったんですね」

ボス「そうなる」

ヤス「じゃあ、誰かが小宮さんを犯人にした」


ボスは答えなかった。


車は園田方面へ進んでいた。

ラジオはもう鳴っていない。


さっきまでのふざけた声が、遠くに消えていく。


ヤス「ボス」

ボス「何だ」

ヤス「園田に着いたら、アヤスさんに聞くんですね」

ボス「ああ」

ヤス「かなり怒られそうですね」

ボス「仕事だ」


ヤスはフロントガラスの向こうを見た。


ヤス「競馬場で怒られるの、嫌ですね」

ボス「まだ競馬場とは言っていない」

ヤス「園田ですから」

ボス「捜査だ」

ヤス「はい」


ヤス「そうだ、ラジオ聞かないと」

再びヤスはラジオをつけた。





DJ・YASU「おっと、ここで緊急のお便りです」

DJ・YASU「ラジオネーム、“俺が防犯カメラのヤス”さんから」

DJ・YASU「防犯カメラって誰かが映ってますよね?」

DJ・YASU「ここははっきりお答えしましょう!多くのヤスさんが映ってたらしいです」

DJ・YASU「それではまた来週!バイバイのバーイ!」



♪ ヤスい恋ほど よく燃える (あつあつー)

♪ ヤスい嘘ほど 胸にくる (いたたたー)

♪ ヤスらぐ前に 火がついて (わわわわー)

♪ ヤスの街角 燃えて~~い~~る



ボス「多分、誰かから怒られるぞ!」

ヤス「はい。存じております」

ボス「バイバイのバーイ!って知ってる人、おっさんしかおらんぞ」

ヤス「はい。存じております。ぐぐってください。」



小宮末広は、犯人ではない。


その事実だけが、ラジオの曲とともに車内に残っていた。


次回、第二章 EP04 番外編「苦労する課長」。

ラジオが鳴る裏側で、課長の給料は静かに燃えていました。

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