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第5話

 

 第5話 ヴェルレストの村にて 前編



【ヴェルハラの森 野営ポイント 夜刻】



「聴こえてるよ、シャリアさん! あなたの想いの力で、ヴェルレストの村が救えたね!」


『いいえ。 朝陽様とユメキリ様とユメキリIV型さんが故郷を救う力を授けてくれたから、故郷を救うことができたのです! 本当にありがとうございました』


「うん! じゃあね、シャリアさん」



【シャリアとの通信が終了しました】



《バチバチパチッ! バチバチバチ!》



 ――夜が明けたら、野営設備を片付けて森を出なきゃ……。



「暖かいな……これは夢じゃない……夢じゃなくて、本当に現実なんだ……」


 ――この野営設備のテントと暖火の灯りが照らす、緑光の聖なる力の素が神秘的な光景……、向こうの世界で、見ることがほぼ不可能な光景……。




『朝陽よ。お前とシャリアの二人の想いの力があったからこそ、ヴェルレストの村を明日を救えたと言うのに、本当にこれで良かったのか?」


「うん! これで良かったんだよ。もし私が夢斬士の夢宮朝陽ではなく、救世主の夢宮朝陽としてあの村を救ったのだとしたら、エクスアリアの歴史を汚(けが)したことになるからね」


《バチバチ! バチバチバチ!》


『左様か……朝陽が決めたなら我はそれで良い。だか朝陽よ、お前はこれからどうするのだ?」


「これからどうするか? それは……もう考えてある」


『左様か、ならこれからどうしていくのだ?』


「それはねユメキリ」



 ――夢覚市に帰る前にすべきこと……、それは。



「まずはエクスアリアの歴史を汚さない様に注意しながら、夢鬼理ネットワークシステムVer.エクスアリアを作ること!」


『夢鬼理ネットワークシステムVer.エクスアリア?』


「そう! 私が夢覚市に帰っても、夢鬼理ネットワークシステムVer.エクスアリアがあれば、エクスアリアにいるエクスアリアの夢斬士達の力で、エクスアリアの人々の明日を夢喰から護ることができるからね」


『確かにエクスアリアの夢斬士がいれば、その者達によって彼奴等夢喰から護る事は可能だ。しかし朝陽よ』



《バチバチパチッ! バチバチパチッ!》



「どうしたの? 何か問題ある?」


『朝陽と我の世界にある夢鬼理ネットワークシステムは、分体と夢宮コンツェルンによって維持されている。だがここは科学の力もなく、この世界の民達の知恵と聖なる力によって紡がれてきた世界なのだ……。朝陽よ、その事を理解しているか?』


「もちろん! だからエクスアリアの夢斬士達が安心して、夢喰から明日を護れる様に、ユメキリの分体をエクスアリアの地に設置していくんだよ!」


『なるほど……朝陽は、我の分体達とエクスアリアの夢斬士によるエクスアリアの明日を護り続ける仕組みを作りたい、と……、それで本当に良いのか?』


《バチバチ! バチバチバチ!》


「なに言ってんのよ! 私はどこにいても、明日を救う力を持つ夢斬士の夢宮朝陽だし、もう決めたからさ!」


『左様か、朝陽よ。我は朝陽が決めたのであれば、朝陽の剣として支えるのみ……、だから我はいつでもお前の力となり、お前の為ならなんでもするぞ』


「ありがとうユメキリ。でも夢覚市に帰る時は夢斬貮型とタケミツも一緒に連れて帰って、エクスアリアとの夢領域ゲートを閉じる! これも忘れないでね」


『朝陽よ、了解した』



 私がいる場所は、エクスアリアという名前の現実世界。

 でもコンツェルンとは通信が取れない事に、不安が無いわけじゃない。

 明日を救う力を持つ夢覚市から来た夢斬士として、明日を奪う夢喰からエクスアリアの明日を護るために、夢斬士として動く。

 でもまずは、私がいなくても夢喰から護る仕組みを作るのが先。

 そう、夢鬼理ネットワークシステムVer.エクスアリアを作るのが先だ。

 夢覚市に帰るのは、全てを終わらせた後で良い。




『朝陽よ。シャリアからまた通信が入った』


「うん、分かった」



【シャリアと通信を開始しました!】



「シャリアさん? どうしたの?」


《『えーと朝陽様……村の長のアイリア様が、朝陽様にお礼をしたいそうです』》


「お礼? 別にいらないよ、私は救世主じゃないからさ」


《『シャリアもアイリア様に――、あわわ、アイリア様』》


「えっ? どうしたの?」


《『あわわ……アイリア様が朝陽様が来ないのであれば、ヴェルハラの森全域へ、強き迷いの聖なる力をかける、と申しておりまして……どうしましょう?』》

 


 ――えっ? 脅し? それじゃ森から出れなくなる……



「うーん……、そういう事なら行くよ! 正直、クタクタだったからさ」


《『分かりました、朝陽様! ではそちらにお迎えに参ります』》


「自分で行くから大丈夫だよ……ユメキリ、行ける?」


『左様、少し待て……』



【ユメキリIV型の座標確認中……夢宮朝陽をヴェルレスト村中央広場へ転送転移!】



 ◇ヴェルレストの村 夜刻◇



 無事にワープできたみたいね。



「あわわわ! 光柱の中から朝陽様が! あわわ」


「シャリアさん! 朝陽でいいよ、様はいらないよ」


「いいえ、朝陽様は朝陽様です! 私の救世主様なのですから!」


「……いいよ、シャリアさんの好きに呼んで……」


「はい! 朝陽様!」



 ――シャリアさんは本当、天然というかエルフというか……。

 でもあのシャリアさんの強さは、向こうの世界にいる上位の夢斬士達と同じくらいの強さを持ってる……、あわわは口癖みたいだけど。



《「シャリア! 何をしておるのだ! おや?」》



 ――シャリアさんを大人っぽくした金色髪のエルフさん? もしかしてこの人がアイリアさん? 頬に斬跡があるけど……、でもなんだか強そうね。



「シャリア、もしやこの方が……」


「はい、アイリア様。この方があの禍々しいオーガに取り込まれた私とヴェルレストの村を救ってくれた、夢宮朝陽様です!」


「そうか……。夢宮朝陽殿、我はヴェルレスト村の長を務める、アイリア・ヴェル・エクスアリアと申します」


「どうも、夢宮朝陽です。よろしくアイリアさん」


「こちらこそ……、この度はシャリアとヴェルレストの村を救っていただき、本当にありがとうございました!」


「アイリアさん。シャリアさんがその禍々しいオーガに取り込まれた事も、あのスライムが禍々しいオーガに取り込まれ、この村を襲ったことも、私達の世界から侵入した者が元凶の始まりなのですから、どうか頭を上げてください」



 ――この世界にタケミツと夢斬貮型が侵入しなければ起きなかった。

 でも夢鬼理ネットワークシステムを作った私自身が見抜けなかった。

 だからこれは私自身が原因だ。



「はい朝陽殿……確かにあの様な邪なるオーガを見た事はありませぬ。しかし邪なるオーガに取り憑かれたシャリアは、村に危害を及ばない様、迷いのヴェルハラの森の中で彷徨っていた様です」


「シャリアさんは、迷いのヴェルハラの森を彷徨っていたの?」


「そうです朝陽殿。恐らくシャリアはこの村を護る為に、森の中を彷徨っていてくれたのでしょう」


「もしかして、その頬の傷は?」


「これは、村の民に刃を向けていたシャリアを止める際に、シャリアに斬られた傷……」


「あわわ、アイリア様! 取り憑かれていたとは言え、本当に申し訳ございませんでした!」


「頭を上げよ、シャリア。お前が正気を取り戻してくれたからこそ、我も村の者も生きているのだ、だからもうよい」


「アイリア様、ありがとう……ございます」



 ――さすがはエルフの長さんだ、器が大きい。でもどれぐらいシャリアさんは、迷いの森を彷徨っていたんだろう……。



「アイリアさん、シャリアさんはどのくらい、迷いの森を彷徨っていたのでしょう?」

「シャリアが彷徨っていた刻ですか? シャリアが飛び出したのが確か……168刻前でしたかな」



 ――168刻前……、168時間、一週間前と言う事か……



「それとシャリアが村から離れる数刻日前に、喋る武具を持つヒューマアリアが、ヴェルハラの森に入っていたのです」



 ――喋る武具を持ったヒューマアリア……。

 タケミツと夢斬貮型(ゆめぎり)か……、やっぱり夢喰の事を、アイリアさん達と情報共有した方が良いかも知れない。



「アイリアさん。その邪なるオーガは私の世界では、人の明日を奪う鬼、夢喰と呼んでおります……」


「我達の明日を奪うユメ……グイ?」


「そうです、明日を奪う夢喰です。シャリアさんが村を飛び出したのは?」


「それは……、そのヒューマアリアが現れる前夜でしたかな」


「前夜か……、ならばやはり、私達が元凶だと思います」


「なぜですかな? 朝陽殿」


「それは……、そのヒューマアリアが持っていた喋る武具には、自身の中にある誇りが高すぎるのです。それに本来であれば、この世界に侵入するなんて、どんな方法を使おうと無理な話です」


 ――タケミツは恐らく、夢斬貮型のプライドが高い性格の持ち主だと知っていた。

 それがタケミツの誘導とも知らずに、自分で選んだ道から目を背け続けるタケミツを教育する為に、エクスアリアの世界を選んだんだ。



「朝陽殿。ではなぜその夢斬貮型は、この世界を選べ、来ることができたのですか?」


『アイリアよ。それは我、ユメキリが幾つもの世界を渡る存在であった頃に持っていた、無数の世界を渡る力の残滓を、濃く分け与えた分体が夢斬貮型だからだ』


「なるほど……、ユメキリ殿の話を聞いて、別世界の住人である朝陽殿が我々の目の前にいる理由がようやく理解できました。つまり、このエクスアリアは、明日を奪う夢喰とやらの新たな狩場となった、と言うことですか?」


『左様だ、アイリアよ。本来ならば繋がるはずのない、朝陽と我がいる世界の夢領域とエクスアリアの夢領域が繋がってしまった。彼奴等夢喰は、夢領域に潜みし命あるモノの明日を奪う鬼だからな』


 ――だから夢斬貮型が私達の世界とエクスアリアとの世界の壁に穴を開けてしまった結果、夢喰が侵蝕を始めしまった……二つの世界を繋ぐ夢領域ゲート、これを閉じないといけない!



 第5話 ヴェルレストの村にて 前編 完。

 第6話へ続く!

*2026年4月11日 内容の再構成改訂を行いました。

*2026年8月28日(金) 一部内容の改訂を行いました。

*2026年8月30日(日) 一部内容の改訂を行いました。

*2026年9月7日(月) 一部内容の改訂を行いました。

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