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夢鬼理(ユメキリ)ネットワーク  作者: 魔与音・庵
第1章 夢鬼理ネットワークと異世界
7/14

第6話 ヴェルレストの村にて 後編

第1章 終章回です。

 

 【ヴェルレスト村 朝陽の部屋 夜刻】



「すごい!いい香りがする!」

「朝陽様、お気に召した様で良かったです!」


 ヴェルレスト村の長、アイリアさんが用意してくれた部屋は、私が知るファンタジー世界で登場する様な立派な家だった。

 シャワーは無いけど、お風呂があるなんて、疲れた身体を休めるには快適な空間だ。



「シャリアさん!ありがとう!」

「いえいえ、朝陽様、お礼なんてとんでもない! エクスアリアの地を巡ろうとされる朝陽様の休息できる場所を提供する、それが私共ができることですから」

「うん、ありがとう」

「朝陽様、また何かありましたらお声がけください」



 私にそう告げたシャリアさんは、村の守護騎士隊の元へ向かって行った。

 やっぱりこの流れは……でも私は夢斬士(ゆめぎりし)

 この地でやるべきことをやるだけ、そして夢覚(むざめ)市へ帰るだけだ。



「……まさか異世界で過ごす事になるなんて、思ってもいなかった…………ユメキリもそう思わない?」

『朝陽よ、普通は来れんぞ』

「だよね、あははは…………よし!とりあえず、ユメキリ!」

『どうした? 朝陽よ』

「お風呂に入ってくる! 着替え、お願い!」

『朝陽よ、了解した』



夢鬼理(ユメキリ)ガジェットから部屋着セットを召喚しました!】



 私は今、お風呂に入っている。


「まさかエクスアリアの地に来て、たった数時間で、こんなクタクタになるなんて……しかも長い旅になりそう……ユメギリ貮型を見つけて一度、夢覚市へ戻ったら、一体どれぐらいの月日が流れちゃってんだろう………………ふぅ……」



 夢を見ているのではないか? と正直に考えてしまう私がいる。

 私にとって、異世界という世界は、絶対に来る事ができない作り話の箱庭の世界だと思っていた。

 でもシャリアさんやアイリアさん、あとあのスライムさんを見ていたら、ユメキリの『我々が本来いるべき世界から我々がいない世界へと渡ったのだ……』という言葉の意味もなんとなく分かってきたような気がするな…………



 そんな事を思いながら、お風呂に浸かっていたら、不思議な泡が現れて、私の全身を包み込み、さっきあった身体の疲れが和らいでいく不思議な感覚を覚えた……



 ――えっ? 何、この泡、身体が綺麗になってる!どういう事?



 私の世界には無い、異世界での初めてお風呂は、感動というよりも不思議な体験をした、それが私の感想である。



【ヴェルレスト村 朝陽の部屋 夜刻】



 ユメキリと今後について話す為、私はお風呂から出て、部屋着に着替えた。



「お待たせ、ユメキリ!」

『朝陽よ、長かったな……シャリアとアイリアが朝陽に話があるそうだ』



 部屋に戻った私が目にしたのは、部屋の中央で正座しながら私を待っていた、シャリアさんとアイリアさんだった。


「朝陽様! お待ちしておりました!」

「朝陽殿、お話がありまして、お伺いしました」

「えっ! なになに話って?」

「朝陽殿、朝陽殿の護衛としてシャリアをつかせることは可能ですか? 朝陽殿はエクスアリアの地に来られて間もない、ユメキリ殿と朝陽殿の武力だけでは、解決できない事も今後、あるかもしれません……」

「確かにね……でもこの村がまた夢喰(ゆめぐい)に襲われたり、村の民が夢喰の力に呑み込まれたら、アイリアさんと村の民はどうするの?」

『朝陽よ、夢鬼理ネットワークをエクスアリアの地に作るのだろう。アイリアよ、これをどこか、誰の目もつかぬところに納めるといい』

「まさかユメキリ、それって?」

『ああ、そうだ朝陽よ。ユメキリII型、我に近い我の分身、夢覚市にある夢宮コンツェルンのユメギリ参型の原型で、この村に再び危機が訪れようとした時、朝陽とシャリアを呼び戻す為の我の分体だ。ユメキリII型とこの森から溢れ出る想いの力がある限り、ヴェルレスト村の住人の夢に夢喰は入る事はできん』

「そこまでやってくださるとは……ユメキリ殿、ありがとう」

『礼には及ばん――アイリア、其方から邪なる想いは感じぬ、女神エクスアリアに感謝することだ、朝陽の力になる者は、我と同じ協力者だ』

「ユメキリ殿……かたじけない」



 それからシャリアさんとアイリアさんと私は、ユメキリII型をヴェルレスト村の奥にあるエクスアリアの泉の底へ納めた。

 女神エクスアリアの御加護の元で、ユメキリII型を納めた方が、ヴェルハラの森の夢喰の現出を抑える効率が上がるだろうという私たちの意見の一致により、泉の底に納めると決めたのだ。

 その後、泉から帰って来た私は、シャリアさんたちと食事をした。

 異世界のエルフの料理を食べる事になるなんてと思いながら……口に入れた料理の味は、予想していた以上に美味で、夢覚市で絶対に食べる事ができないと私の記憶に深く刻まれた経験となった。



 食事の後、自分の部屋へと戻ってきた私は、明日からの旅に備えて、爽やかなミントの香りがするベッドの中で、私は眠りについた…………



 ――疲れた!




『俺様は……異……いて……やっ……る!』


 

 私は今、多分夢を見ている……

 場所は多分、ヴェルハラの森……

 武器を持った少年が森の中を歩きながらぶつぶつ言っている……あまり聞き取れない……



 『俺様は……日本……来た……神レベル……勇……様だぞ!』



 『不……の……バリ……嘘だろ!』


 あっ、夢喰化してた時のシャリアさんだ……


 『あなた……殺……て……?」



 

 『ここは……殺……のファン……世界だ!』



 喋る武器を使い散々暴れておきながら、喚き始めたそいつに向かい、私は夢の中で呟いた。



「腑抜けが!」



 第3話 ヴェルレストの村にて 後編 完

 第1章 夢鬼理ネットワークと異世界 終

 第2章と第7話につづく。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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