第3話
第3話 エクスアリアの地 前編
【エクスアリア ヴェルハラの森 夜刻】
「はぁ、すっかり夜になったなー……寒っ! でも野営設備をガジェットに入れておいて良かったよ」
『朝陽よ。今日はこの森で野営をするとして、これからどうするのだ?』
「どうしようねー、この子が起きてから考えるよ」
――シャリア・エクス・ア・ロッテさん……、この森を守護するエルフの女の子らしいけど……、でもそのままこの子を放置して森を抜けたら、それはそれで人としてダメな気もする……。
◇約数時間後……◇
――うーん、流石にまだ起きれないよね。
「ユメキリ。暖火はこのままにしておくから、何かあったらすぐに呼んでね」
『朝陽よ、了解した、……ん?』
「どうしたの? ユメキリ」
『朝陽よ。シャリアが夢覚るようだ』
「う……う……ん……ふあわわぁ……、大変長く眠れました……あれ? ここは……ヴェルハラの森みたいですが……ここは一体どこなのでしょう?」
――目が覚めたみたいね。
「えーと……シャリアさん?」
「……あれ? 私を悩ませていた禍々しい邪な力が消えてる……」
――禍々しい邪な力? 夢喰の力かな?
「シャリアさんを悩ませていた、禍々しい邪な力なら、この刀で消滅させたよ。もしかして覚えてない?」
「白き聖なる力! ………でもシャリアが最後に覚えているのは……眠りの際の内なる意識の中で、邪なるオーガの化物を見て……その後、邪なるオーガを倒して……、それからの記憶が曖昧で……」
「やっぱりね」
「やっぱり? それはどういう……」
「私はその邪なるオーガ?を知ってる、それと私の相棒だった刀と私の家族を迎えに来たの……、もしかして何か知ってる?」
「えっ? まだ目覚めたばかりで、記憶が曖昧なのです……、ごめんなさい……」
――邪なるオーガ……夢を喰う鬼 夢喰……やはりタケミツが夢鬼理ネットワークシステムの脆弱性を突いて空けた穴を通じて、エクスアリアに来ていたか。
「あーー! 一回、夢覚市に戻って! シャワーを浴びて! コンツェルンに報告して! 家に帰って寝たい! ……でも夢鬼理ネットワークシステムを再起動できない事には……」
――夢斬貮型……あの子が戻ってきたら、あの子とユメキリの力で、ゲートが再起動できるはずなんだけど……。
「むざめしー? しやわー? あの……貴方様はエクスアリアに住んでいるヒューマアリア人ですか?」
「えっ、私? 私は夢宮朝陽だよ。エクスアリアの世界とは違う世界から来た日本人!」
「ニ……ホン?」
「えーと……ユメキリ、代わりにお願いしてもいい?」
『朝陽よ、了解した。シャリアよ、我はユメ――』
「あわわ! 喋る剣、あわわ! 喋る剣、来ないで! シャリアは腑抜けレベル80の雑魚エルフじゃない……あわわ、来ないでー!」
「えっ? どういうこと? シャリアさん」
「あわ……朝陽様……、シャリアは、その喋る剣と戦った記憶だけはあります……」
『シャリアよ。それは我ではない、我の分体――』
「あわわ……腑抜け雑魚エルフと罵った喋る剣……あわわ!」
――チッ! また夢斬貮型の悪い癖か! 腑抜けはお前だよ、夢斬貮型!
『朝陽よ。また更に厄介な状況になったな』
――『そうだね……、でも待ってユメキリ! 朝陽ルームで夢斬貮型と通信した時、タケミツの背後で倒れていたあの時の女の子がシャリアさんなら、なんでまた夢喰に侵蝕されたの?』
『朝陽よ。お前が夢斬士ならば分かるだろ?』
――ああ、なるほどね……夢領域ゲートか。
「はぁ、タケミツめ! ……全く! 腑抜けが!」
「あわわ、シャリアは腑抜けじゃない……あわわ」
「ごめんね、シャリアさん……、私の相棒の一つの夢斬貮型は気に入らない人に対して、勝手に腑抜けという言葉を使い、その人の価値を決めつける癖があるの」
「あわわ……えっ? そうなのですか?」
「うん! そうだよ、私も腑抜け雑魚夢に斬られた士レベル100って、昔言われたからね」
「そうなのですね、朝陽様……」
「うん、そうなんだ……、もしかしてその喋る剣を操っていたのは男の子じゃなかった?」
「そうです! ヒューマアリアの男の子でした」
「ヒューマア……アリア?」
『朝陽よ。ヒューマアリアとは、エクスアリアでいうところの人間のことだろう……、おそらくタケミツのことだろう』
「……たく、困ったな。じゃあシャリアさんから見て、私は――」
「そうです! 朝陽様はヒューマアリアの女性です!」
「ヒューマアリア……私は日本人だよ!」
「ふふふっ、朝陽様は面白い方ですね」
「おもしろくないよ! ……でも少しは落ち着いた? シャリアさん」
「はい! シャリアの中にある緑光の聖なる力も戻ってきたみたいです」
――シャリアさんの中にある本来の魔法の色は、煌びやかな緑の光だったのね。
「シャリアさんの聖なる力が戻って良かったね!」
「はい! これも朝陽様……救世主様のおかげです!」
「私は救世主じゃないの!」
――私の明日を救う力とエクアリア世界の魔法の力である聖なる力は同じみたいね……、それだけが不幸中の幸い。
「……シャリアさんも疲れたでしょ? 私達は朝が来たらこの森を出るからさー、シャリアさんもはやく家に帰った方がいいよ」
「あの朝陽様……朝陽様さえ良ければなのですが、ヴェルハラの森の中にある私達の村へ来ませんか?」
「森の中にあるシャリアさん達の村?」
「はい! 私達の村であれば暖火をする必要もないですし、ヴェルハラの森の護り神である女神エクスアリア様の御加護もあるので、魔物も現れません」
――えーとこの展開は……、あのタケミツが夢斬士の訓練をサボって読んでいた、異世界ファンタジー小説と同じ流れになっている気がする……。
『朝陽よ。確かにシャリアの言う通りだ。コンツェルンの心裡と通信ができない以上、安全な場所を確保する……タケミツと夢斬貮型を追うのは、それからでも良いのではないか?』
――『確かにね、こんなところで命を落として、夢覚市に帰れなくなるとか嫌だからね……』
「じゃあシャリアさん! よろしくお願いします!」
「はい! 朝陽様!」
――森の中にあるシャリアさんの村か……あれ? 光の粒が沢山……見える? これは蛍?
第3話 エクスアリアの地 前編 完。
第4話へつづく!
*2026年4月8日(水) 構成変更改訂を行いました。
*2026年8月24日(月) 一部内容の改訂を行いました。
*2026年9月7日(月) 一部内容の改訂を行いました。




