第4話 エクスアリアの地 後編
【ヴェルハラの森 ヴェルレストの村 夜刻】
ヴェルハラの森の守護騎士シャリアさんの案内で、私は今、ヴェルハラの森の中にあるエルフの村、ヴェルレスト村周辺へ来た。
「へぇーすごいなー! 蛍がいっぱい! すごいよ! ユメキリ」
『朝陽よ、これは蛍ではない……ん?』
「どうしたの? ユメキリ……はっ!」
「あ……私の故郷……ヴェルレストの村が!」
シュウュュ――スパー!
「待って! シャリアさん!」
高速移動してしまったシャリアさんは、私の視界から瞬く間に消えてしまった。
「ちょっ……ちょっと待ってよ! シャリアさん!」
ヴェルレスト村に入った私とユメキリが見たものは、ファンタジー作品に定番登場するネバネバとしたあの魔物、スライムと戦うエルフの人達だった。
戦うエルフの人達の中には当然シャリアさんもいた。
「……まさか、魔物も夢を見るの?!」
『左様、この世界は朝陽の住む世界と理が違うだけで、時を紡ぐ並行の世界の1つだ、だから命あるモノであるスライムも当然夢を見るのだろう。朝陽よ、我がやるか?』
「大丈夫! 私がやるから、ユメキリはサポートをお願い」
『朝陽よ、了解した』
【夢宮朝陽がユメキリを装備しました】
『対象……解析中……分析完了! 朝陽よ、このスライムの夢喰は、ベルゼスライム型だ』
【夢喰の情報を夢宮朝陽に共有完了しました!】
ふぅ……スライムの夢喰なんて、聞いたことないよ。
夢喰の力を取り込んだベルゼスライムは、村の中央で戦うエルフさん達へ大振りの一撃を放つ構えに入った。
「終わりだ……この村も終わりだ……」
終わりの時を迎えると思っているエルフの人達は、嘆きの言葉を一斉に呟き出した。
でもシャリアさんだけは違った。
「みんな、待ってください! 今、この村には救世主様が来ています! 女神エクスアリア様が選びし救世主、夢宮朝陽様が!」
――はぁ……だから救世主じゃない! と言っても理解してくれそうもないし……
シャリアさんの声で、さっきまで弱気になっていたヴェルレスト村のエルフの住人達は、夜空に向かって拝み始めた……
『朝陽よ、来るぞ!』
「よし! じゃあ、やりますか!」
【夢宮朝陽と夢喰ベルゼスライム型が交戦を開始しました!】
ビヤァ! ビヤァ! ビヤァ! ビヤァ!
「……くっ、ネバネバして気持ち悪い……斬っても分裂しちゃうし……困ったな」
斬っても分裂するスライムに私は困っていた。
ゲームなら多分、HPを0にしてまえば終わる戦闘なのに、ベルゼスライムの前では、私の斬撃がすべて無効化されているみたいだ。
『朝陽よ、どうするんだ? あれを使うか?』
「使いたいんだけど……でも私、弓矢は苦手だしさ、村の中心で外したら流石にまずいでしょ……あ、そうだ! シャリアさんがいるじゃん!」
『朝陽よ、我の分身、ユメキリIV型をシャリアに渡すか?』
どんな夢喰でも討滅する為に幼い頃の私とユメキリは、あらゆるパターンの武力を行使できるユメキリの武装分体を夢鬼理ガジェットに格納している。
ユメキリIV型は、遠距離からの武力の行使を得意とするユメキリだけど、分家用の分体、ユメギリ貮型やコンツェルン用の分体、ユメギリ参型と違って想いの契約をしないと力を貸してくれない。
でも一度、夢喰に取り込まれてしまった彼女なら……ゲートを閉じた彼女ならこの想いの力を正しく使ってくれるはずだ。
「朝陽様? あの魔物、私を狂わせた禍々しい邪なる力が見えます!」
「そう! あのスライムの子、邪なるオーガを取り込んでる…………でも私の武器だとあの子を救えない……シャリアさん! 私の力の一つを使って、あの子を救ってくれないかな? もちろん私もサポートするから、ね?」
「はい、私は朝陽様に救っていただきました……朝陽様が救世主ではないと言われても、私の中では救世主様なのです! だから私は……シャリアは、あなたの想いの力となります!」
シャリアさんの想いを聞いていたのか、ユメキリIV型が私の頭へ直接語りかけてきた。
『久しぶり朝陽! このシャリアの力になれって?』
『うん、力を貸してあげて欲しい、ダメ?』
『いいよ! このシャリアと想いの契約をするから、ガジェットからワタシを出してよ』
『了解! よろしくね! ユメキリIV型』
【夢宮朝陽がユメキリIV型を召喚しました】
ユメキリIV型を召喚した私は、ユメキリIV型をシャリアさんへ渡した。
「朝陽様? この力……この力は?」
「シャリアさん! 私と一緒にあの子の明日を救ってあげよう!」
「はい! 朝陽様!」
【シャリアがユメキリIV型を装備しました!】
【シャリアが夢喰ベルゼスライム型との交戦に参加しました!】
数時間前に出会ったあの禍々しい殺意を放つ鎧を纏っていたシャリアさんはもういない!
だから私の目の前にいるシャリアさんは、緑光の光を纏うユメキリIV型の鎧を纏っているのだ!
「よし! シャリアさん、私はあの子を村の外まで連れて行く囮になるから、私とあの子が村から出たらお願い!」
「分かりました! 朝陽様!」
ビャァァァ! ビャァァァ!
私を敵だと認識したベルゼスライムさんは、耳障りな声の様なモノをあげながら私に向かってきた。
「はいはい! こっち! こっち! ベルゼスライムさん!」
ビャァァァ! ビャァァァ!
――よし、ヴェルレスト村の外に出れた!
ヴェルレスト村の外から、私はシャリアさんへ合図を送った!
【夢宮朝陽がヴェルレスト村の外に出ました!】
エクスアリア人であるシャリアさんには読めない合図かもしれないけど、ユメキリIV型が導いてくれるはず!
ビャァァァ! ビャァァァ! ビャァァァ!
『朝陽よ、シャリアの夢鬼理カウンター、上昇中だ……朝陽、来るぞ!』
【シャリアが夢殺ノ滅想穹を発動しました!】
シュー! ズバババババァ!
【夢喰ベルゼスライム型の討滅を完了しました!】
ビャァァァ…………?
シャリアさんの明日を迎える為の想いの力は、ベルゼスライムさんの中で、煌びやかな緑の光を放ち、巨大化したベルゼスライムさんは、可愛らしいスライムの姿に変わり、迎えに来た仲間のスライムと帰っていった。
こんな短時間でユメキリIV型を使いこなしてしまうなんて! 流石、エルフの守護騎士さんだ!
シャリアさんの想いの力の凄さに驚きながらも私は、異世界への干渉を防ぐため、野営ポイントに戻る事にした。
野営ポイントへ向かって歩いているとユメキリが話しかけてきた。
『朝陽よ、これで良かったのか?』
「うん! 私はね、異世界へ来た実感が無かった……でもエクスアリアの人達を見ていたら、彼ら達もまた私達と同じ生きている人なんだと、そう実感せざるを得ない状況だった。でも私がユメギリ貮型を探して、夢鬼理ネットワークを再起動する為には、エクスアリアの人達に協力をお願いしないといけない。それとシャリアさんのあの光は……」
『朝陽よ、シャリアの緑の光、あれは彼女の想いの力、朝陽と同じ明日を迎える為の想いの力だ。長くなるぞ、この旅は……それでも良いのか?』
「なに言ってんの! 一度、夢喰が入って来た以上、この世界にも夢鬼理ネットワークを作る必要がある! それが私が、私がいるべき世界に帰る方法! もちろんユメギリ貮型とタケミツを連れてね」
『朝陽よ、朝陽の剣である我はいつでも側にいる』
「ありがとう、ユメキリ!」
この世界へ夢喰が放たれてしまった原因は、確かに異物である私達が原因で、すぐに帰れると判断してしまった、あの時の私は腑抜けだった。
だけど私は決めた、夢鬼理ネットワーク、明日を迎える為の想いのネットワーク。
救世主としてではなく、ただの1人の日本人で、1人の夢斬士である夢宮朝陽として……
この世界の人達と一緒に明日を迎える!
【シャリアから夢宮朝陽へ通信が入りました!】
エクスアリアの地 後編 完。
5話に続く!
最後までお読みいただきありがとうございました!




