第39話
第39話 邪滅信仰都エルタティア:前編
【エルタティア地下避難壕 朝陽達の部屋 16.9回目の真深夜刻】
――あれだけの事があったんだもの……、シャリアさんと弥乃葉はもう流石に寝ているわよね……、ん? テーブルの上に何か置いてある……、弥乃葉のメモだ。
[朝陽へ]
あんな激寒な山のてっぺんでいきなり倒れたから、みんなビックリしちゃったよ!
でも、なんとかみんなと一緒に帰ることができて本当に良かった!
とは言うものの! 腹が減っては、正義の明日を救う夢斬士は戦ができぬ!
だから朝陽の分もチャーハンを作っておいた!
ちなみに夢羅鬼理の上に置いてあるから、チャーハンは多分冷めてないからー!
[正義の新・夢斬料理人 夢月 弥乃葉より!]
――なによ、またチャーハンって……。
《「スースー……あわわわ! 弥乃葉さんのちゃはーん、本当に美味しいー、あわわわ! ……スースー」》
――そんなに美味しかったんだシャリアさん。
「それじゃ、戴こうかな……うん、美味しい……」
――美味しい……本当に美味しい。
◇しばらく後◇
「……さてと、もう休もう……」
《「 あさーひ!」》
「うわぁッ! ……はぁ弥乃葉、いきなり後ろから声かけないでよ!」
――まったく弥乃葉は弥乃葉なんだから!
「ごめん……でもお帰り、朝陽」
「うん。ただいま、弥乃葉」
「ほほー、左腕もちゃんとバニングさんに治療してもらえたんだね!」
「うん、でもまだ若干、違和感はあるけどね……」
「それでもその新しい朝陽の左腕は、明日を救う朝陽の力なんだよ」
「私の新しい腕、か......うん! そうだよね、私はまた明日を救う力達を握れる様になったんだ!」
「そうそう! ……あー、今日はもう寝るんでしょ? 邪魔してごめんね」
「ううん、いつもありがとう、弥乃葉」
「いえいえー、こちらこそありがとうだよ! おやすみ、朝陽ー!」
「おやすみ、弥乃葉……」
◇数刻時間後◇
【エルタティア地下避難壕 朝陽達の部屋 17個目の昼夕刻】
『朝陽よ、17回目の夢覚めの時だ、さぁ起きるがよい』
――もう少し……寝たい……でも! 起きなきゃ!
「……おはよう……夢鬼理」
『朝陽よ、よく眠れたか?』
「うん! 昨日よりか、はね」
――昨日と今日で色々なことが重なりすぎた……、でも、このエルタティアの時は止まってくれない、早くタケミツとバレディナから解放しないと……。
《ガチャ! 「おっはよー朝陽!」》
「朝陽様、おはようございます!」
「おはよう。シャリアさん、心配掛けてごめんね」
「朝陽様、謝らないでください。朝陽様が命を落とさなかった、それだけでシャリアは十分なのですから」
「うん、ごめんね、ありがとう」
「はい、朝陽様!」
――本当に私は恵まれてるな……。
「あーそうだ! さっきエイアスさんが朝陽が目覚めたら、治安維持部隊室に来てくれって言ってたよ、どうする?」
――どうするも何も、ここで立ち止まっていても仕方がないから……。
「うん、行くよ。でもその前に支度してくるから……夢鬼理、夢斬士非戦闘服の替えをお願い」
『朝陽よ、了解した』
◇しばらく後……◇
「よし! それじゃ、行きましょうか」
【エルタティア地下避難壕 治安維持隊室 17回目の夕刻】
「お待たせして、すみません」
「大丈夫だ、朝陽殿……ん?」
「エイアスさん? どうしたの?」
「いや……無事、左腕が治癒されて良かったな」
「ええ、エイアスさんもありがとう」
――エイアスさんが居てくれなければ、この左腕も治癒されず、二人共命を落としていたかもしれない……なんて、昨日を振り返ったらダメだ。
「直にエギリスも来る」
「ええ、分かったわ」
《「バニングよ、お前が造った邪気を祓う腕輪のおかげで助かった」》
――邪気を祓う腕輪? そういえばエギリスさん達は、エルタティアの街を偵察に行っていたわね。
《「それは良かったわー」》
《ガチャ! 「今戻ったぞ! エイアス!」》
「無事だったかエギリス、それでエルタティアの民はどうだった?」
「それがな……、異様な黒霧に阻まれてな」
――ん? 異様な黒霧? もしかして夢斬貮型の夢領域で見たタケミツが使っていた黒霧かも……。
「だがな、逃げ遅れてしまったスレイアの民達の言葉は、確かに聞こえていたのだよ、あの黒霧の先から」
「えっ、黒霧の先からですか?」
「そうだ、アサヒ殿。俺達が上層街へ調査に行った結果がこれだけだ」
――エギリスさん達とエルタティアの住人さん達を接触させない理由……、この目で見ないと分からないわ。
「あと、バニングが造ったこの邪気を祓う腕輪を身につけていなければ、自分達は黒霧に呑まれていただろう」
「それはウチの故郷で代々伝わる邪気浄化の腕輪だからねー」
――ん? バニングさんの故郷って、エルタティアじゃないの?
「ん? ウチの顔を見つめてー、アサヒ、どうかしたの?」
「い、いえ……、つまりメリディさんが拐われた巫女の塔がある街の上層街は、黒い霧に覆われているのですね」
「そうだ、あの黒い霧が我が都を巣食う影だ」
――もしかしたらあの黒い霧は、タケミツの配下のむじゃめつなんたらのバレディナからこの街を解放しないと晴れないのかも……。
「どうする? 今から『正義の明日を救う夢斬士達のわたし達が、明日を奪う鬼を退治するのだー!』をする?」
「そうだね。タケミツに斬られたこの左腕は、みんなのおかげで無事に新しい左腕として戻ってきた。今度は私の番……、だからシャリアさん、弥乃葉、エルタティアの明日をアイツらから救うために、もう一度力を貸してほしい」
――明日を救う力を持つ私だけでは無理、でもみんなの協力があればなんとかなる!
「何を言っているのですか、朝陽様は! もちろん一緒に戦います!」
――ありがとう、シャリアさん。
「朝陽に言われなくても、わたしの力ぐらいいつでも貸すよ! それが朝陽から貰った『正義の明日を救う夢斬士、夢月弥乃葉!』なんだからさ!」
――ありがとう、弥乃葉。
「うん、それじゃあ、今から行こう!」
「しばし待て、アサヒ殿」
「えっ? エギリスさん、それはどういう……」
「アサヒ殿達だけに重き責務を課すわけにはいかんのでな、こちらからは守護者エイアス・アリディアを同行させる、エイアスもそれで良いか?」
「ああ、もちろんだ、エギリス、朝陽殿達」
「それじゃウチからは、これをエイアスに渡すわね」
――あれは……、蒼白の大剣……もしかして!
「ありがとう、バニング」
『チッ! エイアス・アリディアいやマスターエイアス、我エルタデュータ貮型、これよりマスターエイアスの剣となり、盾となろう!』
――夢斬貮型の性格は、そう簡単には消えなかったみたいね。
「ああ、よろしく頼むな、罵倒神の……いや、エルタデュータ貮型よ!」
「よし! それではアサヒ殿。数刻後の夜刻、地下避難壕の上層街接続門に集合する、それで良いですかな?」
「はい、分かりました! では後ほど!」
――奪われたエルタティアを必ず解放してみせる! それが『明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ』が、再び導いてくれる道だと信じてるから!
第39話 邪滅信仰都エルタティア:前編 完
第40話へつづく!




