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第37話

 第37話 

 エルタティア山頂と夢斬貮型 続・真相編



【夢斬貮型記憶域 ヴェルハラ草原 記憶刻:五百四十八時前】



《「どこへ消えやがった! ……ん? なんだこのからくり……刀のように見えるが……」》



 ――陰楼さんが夢斬貮型に気づいたわ。



《「見た事のない、変なからくり刀だな……、ん? なんだ鬼理刻」》


《『主君陰楼。どうやらそこに転がっておるからくり刀じゃが、どうやら遥か明日の夢覚の刻にありし、此度の事象を起こした因果を持つからくり刀のようだぜ』》



 ――あれっ? 鬼理刻の声が聞こえる……。



『子孫朝陽、そりゃこの刻の域に某もおるからな、がっーはっはっはっはー!』


「……なるほど、そういうことね」



 ――なんか豪快な侍みたいな感じね……、ん? 陰楼さんが夢斬貮型を握ろうとしているわ。



《『チッ! 我貮型に気安く触れるな! 腑抜けレ……何故だ? 貴様の腑抜けレベルが計れんぞ!』》


《「このからくり刀は何を言ってやがる……、ぐっ! これは……頭中に何か……」》


《『これはこれは……遥か彼方の夢覚〈ムザメ〉の地は、こうなっておるのか……、月明かりと消えぬ灯が綺麗じゃの……、この明日の刻では、夢魔は夢喰〈ユメグイ〉と呼ばれておるのか……』》


《『チッ! なぜ貴様のような刀が我貮型の保有情報へアクセスできるのだ!』》


《『それはうぬとは違い、某と主君陰楼が、うぬの主人たる夢鬼理と夢宮の名を持つ朝陽と酷似した刻想の契りを交わした、それだけのことよ……ガッハッハー!』》



 ――だから陰楼さんと初めて会った時、私の名前を知っていたのね。



《「そうか……、造主の名を朝陽と呼ぶか……おい、からくり刀!」》


《「我貮型は、からくり刀ではない! 夢斬貮型という名がある!」》


《「黙れ、からくり刀。俺が遥か明日の刀であるお前とタケミネを喰らったガキが、同じ刻のこの地にいる因果を――』》

 

《『チッ! なにが因果だ! 我貮型は、自ら夢斬士の道を選んだタケミツが腑抜け卒業したいと言うから、我貮型は教育するために同じ現実世界のエクスアリアを選ん――』》



「夢斬貮型さー、これ本気で言ってんの?」


「チッ! この時の我貮型は、本気でそう考えていたのだ、夢月弥乃葉」


 ――陰楼さんが白き鬼理刻の力を溜め始めたわ……。



《「言いたいことはそれだけか? お前の明日を救ってやった恩人に対して舌打ちとはな……この腑抜け刀が!」》


《『わ、我貮型が腑抜けとはゆる――」》


《「黙れ、腑抜け刀! あのガキを教育する場にこの地を選びた事、この地の住人はそれを心より希願したのか?」》



 ――この世界で生きている人達は、まさか向こうの世界の者達が勝手に来ているなんて、勿論知らない……。



《『チッ! 我貮型は腑抜けタケミツが夢斬士として成長できるのであれば、それで良いのだ!』》


《「また舌打ちか! いいか、腑抜け刀よ! この地の理を知らぬ者が、己の身勝手な意義だけでこの地へ存在してはならぬのだ! ん? 鬼理刻、なんだ?」》


《『主君陰楼……ここより遥か先の東の都の側に、富士の山と酷似した霊峰があるようでな』》


《「ああ、だからどうしたのだ?」》


《『言葉で分からぬ明日を救う力に溺れたこの腑抜け刀には、己の犯した理への大罪を、己自身に護らせ見届けさせるのはどうじゃ?』》


《「ふっ……そうだな、鬼理刻。ならば俺はあのガキとやらが発した邪滅の力を行使を始めた刻に備え、この世界に護りの外枠を創り、この腑抜け刀の造主たる夢鬼理と夢宮朝陽に此度の責任を取らせる、これでよいか?」》


「ま、まさか……陰楼さんがあの日、私を待っていたと言っていたのは……」


「そうだ。この腑抜けは刀だろう? 故に俺が無醒殺滅の儀を執ることはできぬ、ならばこの腑抜け刀を造った明日を救う力を持つ者である夢宮朝陽のお前が、この地の明日を護りし内枠を作らねばならん」



 ――あり得ない……、でも私の明日を救う力によって起きた事なのは事実……。



「朝陽様、陰楼様がゆめぎりにがたーを!」



 ――えっ? 陰楼さんが投げの構えをしてる……まさか!



《「腑抜けの夢斬貮型よ! 始まりの夢斬の武士として、掟破りの貴様に対して、造主夢宮朝陽に代わり、罰を与える!」》


《『チッ! 我貮型が罰だと?! 我貮型は朝陽の元へ帰るのだ! 邪魔をするな!』》


《「聞くがよい腑抜け刀よ! これより貴様は、東の都に住む住人達の深淵の門番となりて、造主朝陽がこの地へ来るその刻まで、あのガキが差し向ける夢魔の妖たる夢喰共の夢斬をしろ! それが貴様への掟破りの罰である!」》


《『チッ! なぜ我貮が――』》


《「ふっ、心配するな! 東の都以外の地は、俺がお前に代わり夢斬してやるよ! 腑抜け刀よ、覚悟はできたか?」》


《『やめろ! 我貮――』》


《「さらばだ! 大腑抜け刀の夢斬貮型よ!」》



「ん? 朝陽殿、罵倒神の守護剣が向かう空の裂け目の先に、微かに我が地然の都の姿が見えるのだが……」


「えっ? 本当に?」


「ああ、確かにエルタティア山から見える地然の都だ……、しかしここから見えるはずの巫女の塔が無いようだが……」


「チッ! それはそこの黒き鎧を纏う我貮型をこの山へ投げた張本人に聞け!」


「ん? カゲロウ殿、一体どういう事だ?」


「ふっ、近衛騎士よ。あの大腑抜けのガキが、お前達が住む都の住人達へ、明日を奪う力を向け始めた刻辺りと同じ刻を進むこの霊峰の頂へ夢斬貮型を飛ばせ、と鬼理刻へ命じたのみ」


 ――それが……、夢斬貮型がボロボロになっていた理由……。


「はぁ……まったく、とんでもないことをしてくれたわね! ……でもアンタはこれからどうするの?」


「チッ! 我貮型がどうするかはもう決めてある!」


「あわわわわ! また眩い白き光が!」


 ――えっ、また意識が遠のく……。



【エルタティア山 山頂域 16回目の夜刻】



『我貮型、再起動シークエンスが完了……』



 ――大岩から夢斬貮型が抜けた……。



「ふっ、これが夢魔の妖……いいや大腑抜けのタケミツと大腑抜けの夢斬貮型がこの地でしでかした、大罪の全てだ」


「はい、陰楼さん。色々とありがとうございました」


「礼はいらぬ。俺はこれからもこの地と夢覚の地の明日を陰日向から夢斬する事で護るのみ、ただ『明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ』の夢宮の掟を創りし、始まりの夢斬の武士として掟破りの夢斬貮型へ罰を与えた、それだけだ」


「はい。私が明日を奪う夢魔の妖王、いいえ夢喰王へと堕ちた夢宮タケミツを、限られた明日を救う者が持つ裏の掟である無醒殺滅の掟に従い、タケミツからこの世界の明日を救う、それが私への罰……」


「ふっ、そういうことだ、朝陽」


「はい、ありがとうございました」


「うむ。ではさらば朝陽達よ、鬼理刻! フェルレトへ帰るぞ!」


『承知したぜ、主君陰楼!』


 ――はっ? 白い霧で陰楼さんが消えた!



「朝陽殿……、朝陽殿は一体、何者なのだ?」


「私達は向こうの世界から来た、明日を奪う力から明日を救う力を持つ者達だよ、エイアスさん!」


「にしても朝陽殿は重い傷を負い、俺と弥乃葉殿も傷だらけ、罵倒神の守護剣も脆すぎだがな……、罵倒神の守護剣よ」


『チッ! なんだ、我貮型の恩人たるメリディへ刃を向けた腑抜けが!」


「それは罵倒神の守護剣、お前も同じだろ?」


『チッ! エイアス・アリディア、我貮型の言葉にどうしないのか?』


「ああ、俺はこのエルタティアの都を護る守護者の家に生を受けた当代の守護者だからな」


 ――そうだったんだ、だからメリディさんの近衛騎士を務めているのね……。


「だからこそ――――――」


 ――あれ? 目の前が……くら……くら……して。



《「あわわわわ! 朝陽様!」》


《「バニングのもと――」》



 ――えっ? 真っ暗だ……。



 第37話 

 エルタティア山頂と夢斬貮型 続・真相編 完。


 第38話へつづく!

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