第36話
第36話 エルタティア山頂と夢斬貮型 真相編
【夢斬貮型記憶域 ヴェルハラ草原 記憶刻:五百五十時間前】
「チッ! 朝陽、シャリア、夢月 弥乃葉、エイアス・アリディア、起きろ!」
――これは夢斬貮型の声……。
「チッ! 久しぶりだな、朝陽」
――白頭巾を巻いた白き武士姿……、久しぶりに見た……。
「あー! その姿、どこかで見たこと記憶がある! ……そうだ、夢斬士に成り立てのわたしに向かって、腑抜け芝居癖士・極って言ってきた奴!」
「チッ! あの時の腑抜けがこの世界に来るとは予想外だ」
「こら! 二人共、やめなさい! それと夢斬貮型!」
「チッ! なんだよ、朝陽」
「舌打ちすんな! いつも言っているでしょ!」
「チッ! 久しぶりにその言葉を聞いたな」
「ふっ、夢斬貮型、すこしは頭を冷やせたか?」
――頭を冷やせたか? どういう意味?
「チッ! あんな誰も来ない霊峰の大岩に、我貮型を投げ飛ばした張本人め……」
「ふっ、遥か長き刻を経ても、その耳障りな音を止めることができなかったか、残念だ」
――遥か長き刻を経ても? 陰楼さんは一体何をしたの?
「夢斬貮型、陰楼さん、あの日一体何がどうなったのですか?」
「ふっ、直に始まる。ただし、フェルレトの地でお前に見せた刻の域と同様、俺達には何もできぬよ」
「ええ……」
――一体何が始まるというの……。
◇しばらく後◇
「朝陽、あれを見よ」
――えっ? あれは……タケミツと夢斬貮型とシャリアさん? ……戦ってる!
《「言ったわね! なぜ私が腑抜け雑魚エルフなのかしら!」》
《「チッ! 本来の貴様はエクスアリア族と呼ぶのだろう? その知識はこの世界には無い! 故に貴様は紛いモノの借り物の力に溺れる雑魚エルフだ!」》
「あれ? 腑抜けミツが夢斬貮型の白頭巾を被ってる……」
「白頭巾のタケミツ……、はぁ……アンタ、何やってんの! アンタを握った夢斬士に憑依するなっていつも言っていたでしょ!」
「チッ! そこの腑抜けだったシャリアを止める他なかったからな! それにタケミツが赤面していたから早くこの場から立ち去る必要があったんだよ」
――はぁ……まったくもう!
《「腑抜けレベル80の自称エグゼクショナーエルフ! 我貮型の前では、貴様はファンタジー世界の雑魚エルフに過ぎん!」》
《「うわぁ――――」》
「あわわわ! 禍々しかったシャリアが倒されました……、でもシャリアはなぜここに来ているのでしょう……」
「シャリアよ、あれを見よ」
「えっ? 陰楼様、それはどういう……あわわわ! シャリアの口から邪なる黒霧が出てきました!」
――えっ? あの黒霧……タケミツを狙ってる……。
「あれっ? 腑抜ケミツの通信画面に朝陽が映ってる? なんかかなり怒ってない?」
「そうよ、あれは向こうの世界の私よ」
「えっ? でもなんでわたしがいないわけ?」
『弥乃葉よ。この時、我と朝陽がいた向こうの世界は、8月8日の夕方だ』
「そうよ、アンタは分家が行うはずだった夢鬼理ネットワークサービスの討滅リクエストを夢斬隊と代行してたでしょ」
「あー、そうだった! 討滅リクエストを片付けて、A.Yルームに夜中に帰ったら、朝陽がこの世界へ渡ってて、でも直ぐにLOSTして、心裡さん達もパニックになってた!」
――お父様……お母様……心裡、コンツェルンのみんな、心配かけてごめん! でも必ず生きてみんなの所へ帰るからね!
「朝陽、ここからだ。ここから全てが始まる、少しばかり離れたあの森の入口を見よ!」
――ヴェルハラの森の入口? あれは……甲冑だけ纏った陰楼さんだ。
「あれがこの地へ流れ着いたばかりの俺だ」
――なんか色んなところを見渡して……ゆっくりタケミツがいる場所に向かってる……。
「あれっ? 腑抜ケミツがなんか怒ってるよ!」
《「こうなったのも全部、お前のせいだ!」》
――ここから通信を切った後のタケミツと夢斬貮型のやりとりね……。
《「だから出来損ないの紛い物の貮型は! だからお前は夢宮分家パシリ用のポンコツシステムなんだ!」》
――やっぱりアンタは、そんな風に夢斬貮型を見ていたのね……腑抜けが!
《『チッ! 我貮型への侮辱はまだ許す、管理者夢鬼理と管理者朝陽が造った明日を救うシステムへの侮辱は、絶対に許さん!』》
《「あーあ、本当にうるさいな! こんなポンコツはもういらないよ、ふん!」》
――夢斬貮型を空へ投げたわ、ん? さっきの黒霧がタケミツの周りを彷徨いてる……。
「チッ! 我貮型も腑抜けだか、紛れもない管理者夢鬼理とお前の明日を救う力から生まれた一刀……、だからこの言葉だけは許せなかったのだ!」
――夢斬貮型……。
《『チッ! 勝手にしろ! 貴様みたいな腑抜けは、この世界で生きていける訳が……おい! なんだ、あれは?』》
――黒い霧がタケミツを覆った! なんだかとても嫌な予感がするわ……。
《『ふふふ、忌々しい明日を救う力を宿す奴の血を受け継ぎし者が、最後の障壁を自分から手放しおったわ!』》
「あれは、もしかして……」
《『障壁。我様は遥か昔の夢覚で、明日を救う力を宿した奴に祓滅された魂の一部なり!』》
「そうだ、あれが夢宮一族の始まりの大腑抜け、夢魔の妖王へと堕ちた夢宮タケミネの祓滅を免れた思念の欠片だ」
――タケミツをあの黒い霧の中身も夢宮の血を引いていた者……。
《『我様の名は、夢魔の妖王たる夢宮タケミネなり!』》
《『夢魔の妖王? この腑抜け亡霊め、タケミツに何をするつもりだ!』》
《『障壁であるうぬは何もできぬ! その場で鎮座していろ!』》
――黒い霧が晴れた! でもタケミツは……。
《『おい! タケミツ、早く夢覚市へ帰るぞ! 朝陽に――』》
《「うん! そうだね、早く夢覚市に帰って、朝陽ちゃんを殺めないとね!《『夢宮タケミツの魂侵蝕80迄了!』》そうするべきじゃない?」》
《『なにを言っている? 夢覚市に帰って、早く朝陽達に見てもらわねば!』》
《「そうだね、僕を腑抜け扱いする朝陽ちゃんと陰光兄様を《『夢宮タケミツの記憶から夢鬼理ネットワークシステムの知識、情報収集完了……』》まず殺めないといけないよねー! どうだい妖王さん、僕の知識は? あはははははははは!」》
――まさかこんなことが起きていたなんて……。
《『チッ! 夢宮タケミツ! 人ならざる者へと堕ちるつもりか!』』
《「あっ? うるさいなー夢斬貮型!《『夢魔の妖侵蝕概念構築開始……、エクスアリア夢領域の侵入を開始! これより我様は、エクスアリアを我らの餌場とするのだ!』》イイネェー、この世界の侵略者になれるのかー、あははは!」》
『『チッ! お前は明日を救う力を持つ夢宮一族である自覚が無いのか! 朝陽ともう逢えなくなっても良いのか!』》
《「あははははは! この明日を奪える力、すごいなー! これぞ僕が憧れたチートスキルモノの始まりじゃん! でもー《『我様を取り込もうと小癪な!』》君はもういらないからさー! 僕の魂の中にゆっくりと溶けるがいいよー、じゃあね《『陰楼様……タケ――』》、なぁんだー妖王も所詮この程度か……」》
――何が……何が起きたというの……。
「俺を滅する為だけに明日を奪う夢魔の力に魅入られ、妖王へと堕ちた大腑抜けは、無醒殺滅の儀を俺に執行されてもなお、妖王の力の残滓により、向こうの地にある住人達の深淵の門奥の底に潜んでいたのだろうな」
――だから私達の時代でも明日を奪う夢喰が滅ばなかった……。
「なんてこと……」
《『チッ! タケミツ、お前はそれで良いのか?』》
《「あはははは! いいんだよ、これがチートスキルモノの定番展開だしさー、それでー、今から邪滅チートスキルの力で、邪滅タケミツハーレムシティを建国するんだー!」》
「うわっー……黙って見てたけど、流石に引くわー……」
「ああ、弥乃葉殿。あまりにも奴は狂い過ぎているな……」
――ん? タケミツが夢斬貮型に向かってる!
《「あーなんて気持ちが良いんだろー、そうだー! 夢斬貮型もこっちの世界においでよ……、邪滅貮型とし――ぐはっ! 誰だ!」》
――陰楼さんがタケミツの背後を取ったわ。
《「ふっ、いきなり深淵の門に穴が開いたから来てみれば、異国の地に流れつくとはな……おい、同郷のガキ! ここがどこかし――」》
《「はあっ! いきなり不意打ちとか卑怯じゃね? ……ていうか貴様は、にほ――グハァッ!」》
《「滅したはずの大腑抜けの声が聞こえた理由も気になるが……、大腑抜けがガキに喰われるなど哀れなモノよな……、祓滅斬!」》
《「ぐはっ! いきなりなにをするんだ! 僕の邪魔をする――ぐはっ!」」
《「ガキ、お前が喰ったその魂は明日を奪い滅ぼす力! お前がその魂を喰らったのであれば、お前は明日を救う力を持つ夢斬の武士たる夢宮陰楼の手により、貴様の明日を滅せねばなるまい!!」》
《「ぐはっ! ……夢宮? だったら僕は同じ明日を奪う夢宮一族の人間だ! 人間を夢斬士は斬っちゃいけないんだぞ、パパとママと朝陽ちゃんにい――グハァッ!」》
《「だからなんだ? この期に及んで戯言とはな! 祓滅斬、祓滅斬、祓滅斬、祓滅斬、祓滅斬、祓滅斬!」》
「カゲロウ殿、容赦無いな……」
「当たり前だ、巫女の近衛。ここで彼奴を斬られねば、俺が斬られていたのだ」
――でも……あれだけ斬られているのに……、傷が直ぐに塞がってる……やっぱり向こうの世界の力だけではダメ……。
《「ガキ!『明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ……』だ、貴様も夢斬の武士である夢宮の名を持つ者ならば、当然この掟を知っているはずだぞ、祓滅斬!」》
《「グハァッ! ……まだ邪滅チートスキルに慣れてないから今の僕はこの程度か……、なら邪想ネットワークの中でチートスキルを使いこなし、夢魔の妖王いいや夢喰キングタケミツ陛下となり、いずれ朝陽ちゃんと夢宮陰楼を殺めることにするよー、あははははは! じゃーね」》
――えっ、邪想ネットワークって一体何?
「腑抜ケミツがさっきと同じボス部屋の黒霧を使って消えた……」
――ん? ボス部屋? ……でもこれが……。
「チッ! これが五百五十時間前、明日を奪う力へ堕ちた夢宮タケミツ、我貮型と夢宮陰楼との記憶だ! それではもど
――」
「待て、夢斬貮型。お前がこの霊峰に突き刺さるまでの刻を朝陽達へ見せろ!」
.
「チッ! ……分かったよ!」
――この記憶を見ても……夢斬貮型が大岩に刺さっていた理由になってない!
第36話 エルタティア山頂と夢斬貮型 真相編 完。
第37話へつづく!
*2026年10月8日(木) 一部内容の改訂を行いました。




