第36話
第36話 エルタティア山頂と夢斬貮型 真相編
【エクスアリア大陸・東 エルタティア山頂 16回目の夕夜刻】
暗くなり始めたエルタティア山頂で、私が夢斬貮型を抜いた……までは良かったのだが……
「アンタ、40年もこの山頂に突き刺さっていたの⁈」
『チッ! そうだよ……我貮型と朝陽が最後に通信をしたのは14610日前! いいや違うな……厳密には確か約20日以上ぐらい前、ヴェルハラの森近くのヴェルハラ草原! そこの腑抜け雑魚エルフレベル80が――』
「あわわ、夢斬貮型! やっぱりあの時腑抜け雑魚エルフレベル80と罵ったのですね! ……ですが、もう私は腑抜け雑魚エルフレベル80ではない!」
『チッ! ……確認してやる!』
しばらくすると私のヘッドギアに、夢斬貮型が仲間達の腑抜けレベルを計測した結果が表示された。
「えーと。シャリア・エクス・ア・ロッテは、腑抜けレベルマイナス5000。16日前の夢宮朝陽による夢領域ゲート封鎖とユメキリIV型・穹撃型の武装契約も大きい」
「それは勿論! 私は朝陽様の盾と剣、親なる友ですから! 当然です!」
――シャリアさんはもう私の親なる友でエクスアリアの夢斬士でだからね!
「えーと……夢月弥乃葉は、腑抜けレベルマイナス1。殺意の邪想を腑抜けタケミツに注がれた影響だが、夢羅鬼理? によって浄化済み」
『チッ! どうだー! 復活した我貮型の腑抜けレベルスキャンは! ……あれ? おいおいやめろ! 我貮型を何処へ投げる気だ? 夢月弥乃葉!』
「あ? 今なんか言った? 『腑抜けタケミツに騙されて、異世界に来た我貮型は、朝陽求めて40年、泣き喚きながら待っていた腑抜け刀、その名は腑抜斬貮型!』でしょ?」
『チッ! 確かに我貮型も朝陽の刀の一つであるとはいえ、腑抜けの刀だ! だから真相を語らねばな……だがその前に、朝陽』
「えーと……エイアス・アリディアは、腑抜けレベルマイナス100。2日前での腑抜けレベル200。エイアス・アリディアの夢領域に腑抜けバレディナとやらの侵入痕あり」
「やはりそうか……だから俺は夢喰と化し、メリディ様に牙を向けてしまった……そう言う事だな? 夢斬貮型」
「えーと? エイアスさんは怒らないの?」
「朝陽殿。この世界で生まれたシャリア殿と俺を含めた人間は、善良な魔物も邪な魔物も共生している世界で生を受けたのだ。だから夢に邪な魔物が出たら殺めてしまう場合もある、シャリア殿もそうだろう?」
――エクスアリアはファンタジー現実世界だものね……
「確かにそうですね。シャリアもヴェルハラの森に邪な魔物がいたら場合によっては、殺める場合もありますからね……だから身体を休めて眠る時、魔物を倒す夢も観る時があるのです」
『チッ! 我貮型は、かつての腑抜けタケミツを夢宮分家の夢斬士として成長させる為、この世界を偶々見つけた』
「舌打ちすんな! いくらユメキリとほぼ同じ機能がついてるアンタだからって、別の現実世界に繋いだ時の危険性ぐらい理解してたでしょ!」
『チッ! その時の我貮型は事の重大さを理解できない腑抜け刀だった! その結果が約40年の突き刺さり……、当初の予定ではタケミツが現実を理解したら夢覚市に帰るつもりであった……だが我貮型の想定外の事態が発生したのだ』
「舌打ちすんな! ……全く! でっ? あの通信の後、何が起きたのよ?」
『チッ! それはだな……――』
【約20日前以上前 ヴェルハラ草原 昼刻】
我貮型は朝陽と通信を終えた後、朝陽の甘えるな! という言葉が効いた腑抜けタケミツと口論していた。
「こうなったのも全部、お前のせいだ! だから出来損ないの紛い物の貮型は! だからお前は夢宮分家パシリ用のポンコツシステムなんだ!」
『チッ! 腑抜けタケミツ、我貮型への侮辱はまだ許す! だが我貮型の創主夢鬼理と朝陽が作った明日を救う想いのシステムへの侮辱は、我貮型は許さぬ!』
「あーあ、本当に貮型はうるさいな! だからこんなポンコツはもういらないよ! ふん!」
我貮型は、怒りが治らないタケミツによって、ヴェルハラ草原の上空へと投げられた。
『チッ! 勝手にしろ! 貴様みたいな腑抜けは、この世界で生きていける訳が……おい! なんだあれは? 黒い霧?おい! 腑抜け……夢宮タケミツ!』
《ふふふ、奴の血を受け継ぎし者が創り出した最後の障壁をこの者は自分から手放しおった》
『チッ! 貴様は何者だ! タケミツに何をしている!』
《障壁。我様は遥か昔の夢覚の地で、奴に祓滅された魂なり。
奴による止めの祓滅の直前、輪廻転生の儀を施し、今はこの魂の姿である。
地球の深淵の門たる夢領域に潜み、この機会を遥か長きに渡り待っていたのだ!
我様の名前は、夢魔の妖王なる夢宮タケミネなり!
障壁。この夢宮の腑抜けの教育の場にこの地を選びた事、誠に大義であるぞ!》
『チッ! 何が大義だ! この腑抜け亡霊め! ……タケミツを返せ!』
《ただの障壁に何ができるというのだ? 愚かなり! 我様は夢魔の妖王であるぞ!》
『チッ! 黒い霧が晴れた? おい! タケミツ!』
「あっ貮型? うん! なんか頭がスッキリした気がする! 『夢宮タケミツの魂同化100の内、80迄完了……夢宮タケミツの魂の記憶から夢鬼理ネットワークシステムの知識、情報収集完了……』妖王さん、僕の知識はどうだった? あははははは!」
『チッ! 夢宮タケミツ! 人ならざる者へと堕ちるつもりか!』
「うるさいなー、夢斬貮型! 『夢魔の妖、夢喰用侵蝕概念である邪想ネットワークの構築開始……エクスアリア夢領域の侵入を開始! これより我様は、エクスアリアを我らの餌場とするのだ!』おっイイネェー! あはははは!」
『チッ! タケミツ! お前は夢宮一族の名を持つ自覚は無いのか! 朝陽と逢えなくなっても良いのか!」
「あははははは! 朝陽ちゃんは強制的に通信を切って、僕様を迎えに来なかった。だから僕様は夢宮朝陽ちゃんを必ず殺めるんだ! あははははは! すごい! これぞ、僕様が憧れたチートスキル……でも『なにィ! 我様を取り込もうと小癪な!』妖王さんさー、僕みたいな夢見る少年に、チートスキルなんて付与したらダメだよ、あははははは! 妖王夢宮タケミネ……夢宮タケミツの魂の牢獄へご招待ー! あはははは! 『陰楼様……タケ――』……なぁんだ、妖王も結局腑抜けかー』
この時我貮型の性格故に起きた事態の重大さに気づいたが、時既に遅しだった……
『チッ! タケミツ! お前はそれで良いのか?』
「あはははは! 僕に妖王は、邪滅チートスキルをくれたんだよー! 夢魔の妖王さん、本当にありがとうございました! そして最ッ高だ! あと夢斬貮型ー、君はこれから邪滅ハーレムシティの礎、夢邪滅貮型になるんだよ! あはははは!」
妖王を吸収し、漆黒の滅びの力に染まったタケミツは、その手に黒き邪滅の力を宿し、我貮型の柄を握ろうとしていた。
「まったくよー! あの大腑抜け夢魔の妖王が逃げた先にこんな異国の地が……しかも大腑抜けの魂がこんなガキに取り込まれるなんてな……はぁッ! 祓滅!」
突如現れた刀を持つ夢斬士夢宮陰楼のおかげで、我貮型は邪なる腑抜けタケミツに握られることなく、邪滅の刀になる事を免れたのだ。
「ぐはっ! 血⁈ ていうかアンタだれ? 僕の邪魔すんなよ!」
「おいガキ! お前が喰った魂である夢宮タケミネはな、夢宮の一族の掟破りだよ! そして俺の名前は初代夢斬の武士、夢斬士夢宮陰楼だ! ホラよ祓滅!」
ブシャァァァァー!
「ぐはっ! 夢宮陰楼? なら僕はお前と同じ夢宮一族の人間だぞ! 夢斬士は人間を斬っちゃいけないんだぞ! パパとママと朝陽ちゃんが――」
「ん? だからなんだ? 戯言言ってんじゃねぇよガキが! 祓滅!」
ブシャァァァー!
我貮型は、同じ夢宮の名を持つタケミツを容赦なく斬る夢斬士夢宮陰楼に恐れしかなかった。
「なーにが夢斬士は人を斬ってはいけないだぁ? 明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ……ガキ、お前も夢宮の一族なら当然知っているこの掟。お前が喰った夢魔の妖王の大腑抜け夢宮タケミネと同じか? 祓滅!」
ブシャァァー!
「やってくれるねー夢宮陰楼! まあいいさ、夢魔の妖王は時空移動できるみたいだしさ。僕は邪想ネットワーク内でこの傷を癒しながら夢喰キングタケミツ陛下になる為の準備をするよー、あははははは! あはははははは! 夢宮陰楼、夢斬貮型! じゃーね」
タケミツは黒い霧を現出させ、我貮型と夢宮陰楼の前から消えた……
「おい待てガキ! 黒い霧で消えやがった……ん? なんだ鬼理刻? そこの落ちてるからくり刀が原因を知ってる? コイツか……おいからくり刀! お前ら面倒な事をしてくれたな!」
『チッ! 我貮型に気安く触れるな! 腑抜けレ……何故だ? 腑抜けレベルが計れん』
「腑抜けなんたら? 何言ってんだからくり刀? とりあえずお前を……っ!」
我貮型の柄を握った陰楼は、我貮型が持っている現代の夢覚市と夢斬士、夢宮一族の情報を覗いてきたのだ。
「……俺が今生きる遥か先の明日、夢覚市と呼ばれる夢覚の地で、明日を救う力を持つ者、若き女夢斬士夢宮朝陽か……お前、この朝陽に会いたいか?」
『チッ! 当たり前だ! 我貮型は、完全なる邪な想いではない腑抜けミツを夢斬士として教育するために、夢覚市と同じ現実世界であるこのエクスアリアを選んだのだ!』
「お前の明日を救ってやった俺に舌打ちか? この腑抜け刀が! その教育とやら、この世界の住人はそれを望んだのか?」
『チッ! 我貮型は、腑抜けタケミツが夢斬士として成長できるのであれば、それで良いのだ!』
「また舌打ちか? いい度胸してるな腑抜け刀! 本来俺たちはこの世界にいてはいけない異物なのだ! 俺たちが存在するという事……それ即ち、明日を奪う鬼がこの世界に存在してしまったこと意味し、彼奴等に新たな狩りの場を与えてしまったという事だ! しかもあのガキが喰ったのは腐っても夢魔の妖王だぞ!」
『チッ! そんな戯言、我貮型には関係ない!』
「そうか……鬼理刻! この腑抜けからくり刀に事の重さを分からせるには?」
我貮型の柄を握ったまま、夢宮陰楼はしばらく鬼理刻と会話をしていた様だが、我貮型には聞こえなかった。
「夢斬貮型。明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ……お前がこの掟の意味を理解し、この世界の異物であるお前とあのガキがした、この世界への非情な行い……それをあの高き雪積もる高き霊峰の頂きから見届けるがいい! お前が事の重さを受けいれし時、夢宮朝陽と再び逢えるだろう! 少し頭を冷やして来い! さらばだ腑抜け貮型!」
我貮型は、鬼理刻の力を手に纏った夢宮陰楼により、ヴェルハラ草原から時空を超え、14610日前のこのエルタティア山の山頂の中央へと投げられ、我貮型は突き刺さる……
【14610日後 エルタティア山 山頂 夜刻】
『チッ! これが夢宮陰楼と我貮型の14610日前の出来事なのだ!』
――それが夢斬貮型の14610日、でも……
「舌打ちすんな! いつも言ってるでしょ! 今はそんなこと言ってる場合じゃなくて、アンタはこれからどうするの? 夢斬貮型!」
『我貮型か? 我貮型は夢覚市には帰らぬ。今の再起動の際、夢宮コンツェルンの夢斬参型へ、我貮型が管理する夢宮分家用夢鬼理ネットワークシステムの提供システム:夢斬ネットワークの全権限を譲渡した。我貮型は、14610日もの間、この東の都エルタティア全域に夢斬貮型夢領域を展開し、夢喰とタケミツから護り続けていた……しかしこのエルタティア山の頂を訪れる者はエルタティアの代々巫女とその近衛しかいない! だから我貮型の力も尽きかけた時、我貮型に罵倒されはずのメリディが、我貮型に地の聖なる力を分けてくれた! だから我貮型は恩人メリディがいるこの地の明日を見届けると決めた!』
――確かに、こんな日本のシンボルマークと同じ高さの山は、登山設備が無いと簡単には登れないよね……巫女修行の内容がなんとなく分かった気がする。
私と夢斬貮型の話を黙って聞いていたエイアスさんが、夢斬貮型の柄を握りしめた。
『チッ! バレディナに邪想を注入されたとはいえ、メリディに刃を向けた腑抜け雑魚近衛が我貮型を気安く触るな!』
「夢斬貮型、メリディ様を助けたくはないのか?」
『チッ! 巫女修行に来ていたメリディがいなければ我貮型は、フェルレト周辺にいた朝陽と夢領域を通じて連絡もできなかった。だからこそメリディに恩がある』
「だろうな……朝陽殿。夢斬貮型と俺は契約できるのか?」
――えっ? エイアスさんと夢斬貮型が契約?
『チッ! エイアス・アリディア、我貮型はこの世界を壊す仕組みと元凶を持ち込んだ腑抜け刀だぞ!』
「お前の話を聞いて、お前がこの世界を護り続ける意思を感じた。だから契約の話をしただけだ」
『チッ! 分かったよエイアス・アリディア! 朝陽、頼めるか?』
「夢斬貮型が決めたなら私は止めないよ」
『チッ! では朝陽、頼むぞ』
私は、ユメキリと初めて造った分体である夢斬貮型が初めて、自分の非が何をしてしまったのかを理解して、自分の意志でメリディさんとエルタティアを護り続けるを選択した事。
私は夢斬貮型が成長した事を確かめる事ができて嬉しかった。
――だけど……
「舌打ちすんな! いつも言ってるでしょ!」
第36話 エルタティア山頂と夢斬貮型 真相編
第37話へつづく!
最後までお読みいただきありがとうございました!




