第35話
第35話 エルタティア山頂の夢斬貮型 再起動編
【エルタティア山 山頂 夕刻】
私とエイアスさんと陰楼さんが、夢斬貮型によって、夢斬貮型夢領域からエルタタティア山の頂に転送転移された先には、私の親友達がいた。
――シャリアさん、弥乃葉! 良かった……無事で……
「ほらよ、主人弥乃葉、もう大丈夫だぜ! ユラキリモード解除するなり」
――主人弥乃葉? ユラキリモード解除するなり? どういうこと?
私は目の前にいる目を合わせようとしない、タケミツに背後から貫かれたであろうぼろぼろになった紅色のバトルスーツを纏う弥乃葉に声をかけた。
「弥乃葉? 弥乃葉? 幻じゃないよね? ねぇ弥乃葉!」
――弥乃葉だよね? 返事をしてよ!
「わたしは朝陽のし……わたしは朝陽のしん……わたしは朝陽のしんゆ……」
「えっ? 弥乃葉?」
「わたしは朝陽の親友だものー! 言ったでしょ! 『正義の夢斬士は不死身だ!』って……イッタァ!」
「夢月! お前に分け与えた鬼理刻のヒトカケラであるその刀が、お前の命の危機から救った事を忘れるな!」
――鬼理刻のヒトカケラ? もしかして夢羅鬼理が弥乃葉を助けてくれた? 私と陰楼さんの2つの想いの力で作られた弥乃葉の刀……
「もうイッタいなぁ! 本当に陰楼様は容赦ないんだから! でもわたしはどうしても腑抜ケミツが許せなかったのよ! なーにが『邪滅ハーレムシティへお行き』よ! ダッサ! ……そんなことより朝陽の左腕、左腕が!」
「痛い! なんでさわるのよ! 全く弥乃葉はやの……ごめん。弥乃葉も命懸けで戦ってくれたんだよね? ありがとう」
「うーん? わたしにはまだまだ正義の夢斬士夢月弥乃葉として可能性があるって分かった! だからこれからも朝陽の親友である! あーはっはっはー!」
あーはっはっはー! あーはっはっはー! あーはっはっはー!
――やまびこ? ……もう全く! 弥乃葉は弥乃葉なんだから! イタタタ……
私は、エルタティア山頂からヴェルハラの森がある方角を眺めているシャリアさんに声をかけた。
「シャリアさんありがとう。一緒に戦ってあげれなくて……ごめんね」
「朝陽様! シャリアは朝陽様の盾と剣であり親なる友なのです! 家族や友が困っていたら手を差し伸べる、それがエクスアリア人なのです……」
シャリアさんの煌びやかな金色の長髪が山頂の風で靡く中、その手にはシャリアさんがいつも剣鞘に納めているはずの白緑光の剣が握られていた。
「私はシャリア・エクス・ア・ロッテ! 女神エクスアリアの緑光の聖なる力の結晶剣エクスヘヴリアに選ばれし、ヴェルハラの森の守護騎士である! 我が親なる友たる朝陽の為に、盾となり剣となろう! そして邪なる者である異物タケミツからエクスアリアを必ずや解放してみせよう!」
必ずや解放してみせよう! 必ずや解放してみせよう! 必ずや解放してみせよう!
――またやまびこ? でもありがとうシャリアさん、あなたが仲間で本当に良かった!
「朝陽様! 私は朝陽の救世の左腕を斬り落とした異物タケミツを許せない! だからあの異物をこの世界から排除します! それ以後も私はあなたの剣として盾として、そして親なる友としてついて行きますから!」
「うん! ありがとう……ありがとうシャリアさん! でも朝陽様じゃなくていいからね」
「あわわ……朝陽様は朝陽様ですから! 朝陽様!」
――やっぱりシャリアさんはシャリアさんだ。
「朝陽殿、すまない。俺は朝陽殿の役にも立てなかった……これをバニングから持っていけと言われていたのにな」
エイアスさんが見せてきたのは、タケミツによって真っ二つにされた一剣と一盾だった。
「スレイアの巫女を護る為の剣と盾、地然剣エルタデュータと地然盾エルタディアンもこの通り……ヤツの剣に通用すらしなかった……それが朝陽殿の左腕を失う原因となってし――」
「エイアスさん! そんな事ない! あの時エイアスさんがその剣と盾で、私をタケミツの剣から護ってくれたから、私は生きてるんだよ!」
エイアスさんは、私の言葉に首を横にふった。
でも私は、エイアスさんがタケミツに腹部を刺されて、夢領域の山頂からふり落とされていくエイアスさんを見た。
それでも、目の前にいる白蒼色の髪を緋色の宝玉が入ったヘアバンドで止める、同じぐらいの歳に見える青年エイアス・アリディアさんはここにいるのだ。
「朝陽殿、俺は決めたよ! 奴の配下であるエルタティアの虚構支配者バレディナからメリディ様とエルタティアを解放し、スレイアアリアの都エルタティアの守護者アリディア家の後継者、エイアス・アリディアとして命尽きるまで護り続ける事……そしてメリディ様と一緒に、朝陽殿の希望である奴等から護り続ける仕組みを護り続けていく事を約束しよう」
「ありがとう……エイアスさん」
「でもその前に朝陽殿、奴に斬られた左腕を何とかせねば……」
「……痛みは大分おさまったよ。斬られた左腕はユメキリが保管してくれてる」
「そうかユメキリ殿が……」
『エイアスよ。朝陽の腕を治す方法があるのか?』
「ああユメキリ殿。バニングなら腕を元に戻せるのでは? と考えていた」
『エイアスよ。朝陽の腕は我の武装管理空間にある。彼奴タケミツに斬られてすぐに転送した。我にはそれしかできなかった』
「そうかユメキリ殿……なら尚のこと早く、バニングに預けた朝陽殿の力も取りに行かないとな」
「分かった、ありがとうエイアスさん」
「礼なら朝陽殿の祖たる陰楼氏に言うことだ、彼が俺を助けてくれなければ、俺はここに立っていないのだから」
私は、寒そうにブルブル震えている私を助けてくれた、ご先祖様であり、エクスアルディアギルド幹部でもある命の恩人に声をかけた。
「陰楼さん、ありがとうございました!」
「朝陽、すまなかったな。もう少し俺が早く来ていれば、あの大腑抜けが、お前の左腕を斬る前に止めれていた」
「ユメキリがすぐに左腕を夢鬼理ガジェット内に保管してくれたから大丈夫です」
「……誰に似たんだろうなお前は……なあ鬼理刻。やはり泪陽か?」
『主君陰楼よ。もちろんあの嬢ちゃんだろ? 主君陰楼が生きる時の夢覚の地で、夢魔と夢喰相手に鬼理刻刀である某を振り回すだけの主君陰楼をいつも止めているのは、泪陽嬢ちゃんだけだぜ』
――えっ? 鬼理刻刀も喋るの?
『朝陽よ。鬼理刻もかつて我と同じ刻想器。ヒトと刻想契約して想いが刻まれ、初めて空の器である刻想器からヒトの想いを叶える力を与えられるのだ。違うか? 鬼理刻』
『おーさすが同じ夢宮の主君を持つ、かつて刻想器だった某と同じ刻想器だったユメキリだな、がっはははは!』
――なんだか、鬼理刻はお侍さんみたいな感じね。
「おい! 鬼理刻、おしゃべりも良いが俺たちはフェルレトに帰るぞ」
『主君陰楼、どうやってこの寒き山頂から帰るのだ?』
「ふっ、この時間、エリディアはフェルレト支部で寝ているはずだ」
『なるほど主君陰楼、エリディア嬢ちゃんの夢領域に入る』
「頼むぞ鬼理刻……じゃあな朝陽、左腕の事はエルタティアの巫女近衛が言っていた様にバニングが解決してくれるはずだ、心配するな」
陰楼さんはそう告げると白の霧カーテンを現出させ、私達の前から消えた。
「朝陽! 陰楼様の今のやつ『俺様は人を辞め、神になった夢宮の一族、伝説の夢斬の武士夢宮陰楼だッ!』っ感じ、さっすが夢宮朝陽のご先祖様だね!」
『はいはい主人弥乃葉、ほどほどにするナリ』
「はぁ? うるさいな! 夢羅鬼理!」
――そうか! 夢羅鬼理がナリを使うのは、ユメキリIII型と鬼理刻のカケラ……私と陰楼さんの想い力で造られたからだ……あとは、夢斬参型がコンツェルンで夢羅鬼理を造っている時に、鬼理刻のカケラに根負けしたか。
「朝陽様、もうすぐ陽が沈みます……早く、私を罵った夢斬貮型の元に行きましょう!」
「そうだねシャリアさん!」
私達は雪積るエルタティア山頂の中央にある夢斬貮型へと向かった。
「夢斬貮型……こんなにぼろぼろになって……」
私の瞳が映す場所は、フェルレトの街に着く前の野営地の草原で眠った際に、夢で見た貮型と話した場所。
雪積もる円頂の中央に突き刺さる刀身が錆びれた刀。
それは、私とユメキリが初めて造った分体である夢斬貮型。
私がユメキリに頼んで、夢斬貮型に搭載させた機能がタケミツに悪用される原因の一つとなった。
その結果、エクスアリアに夢喰が侵蝕を開始し、エクスアリアが殺意のファンタジー現実世界に変わり、タケミツは夢喰の王へと変わり果て、私はタケミツに左腕を斬られた。
「貮型、今から再起動するからね」
私は、夢斬貮型の柄を残る右手で握った。
――夢斬貮型! 夢覚市から迎えに来たよ!
『チッ! 久しいな……朝陽」
その夢斬貮型の声と共に、私の貮型は再起動を始めた。
『我貮型の創造者、夢宮本家の腑抜け令嬢夢宮朝陽の認証確認……夢宮タケミツの誘導による、我貮型と夢宮タケミツとの分家用夢斬貮型貸与管理者緊急刻想契約を強制解約……夢宮朝陽の夢鬼理ネットワークに帰還完了……我貮型、再起動! 現在地を再確認、14610日後の現実世界エクスアリア、エルタティア山頂』
「久しぶり夢斬貮型!」
『チッ! あの腑抜けタケミツに左腕の夢を斬られた士でも腑抜け無かった夢宮朝陽! 我貮型は14610日の刻の間、朝陽を待っていた! 久しぶりだな!』
「うるさい! 舌打ちすんな! いつも言ってるでしょ!」
――えっ? ユメキリ、14610日って何年なの?
『朝陽よ。14610日は、約40年だ』
第35話 エルタティア山頂の夢斬貮型 再起動編 完。
第36話へつづく!
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