第35話
第35話 エルタティア山頂の夢斬貮型 再起動編
【エルタティア山 山頂 16回目の夕夜刻】
――……私、生きてる。
「……シャリアさん、弥乃葉……良かった、生きててくれて」
「はい! シャリアはあんな汚らわしいヒューマアリアに負けませんから!」
「まぁ、まぁわたしのバトルスーツはボロボロになっちゃったけど、なんとかまた朝陽と会えてよかったよ!」
「うん! ありがとう、二人共……、起きなきゃね、あれっ?」
――あれっ? うまく起き上がれない……、今は片腕しかないからか……。
「朝陽殿、手を貸そう」
「ありがとう、エイアスさん」
「もう少し俺が早く辿り着つけば、お前が明日を救う左腕を失わず……すまぬな、朝陽」
「いいえ、陰楼さんが助けてくれなかったら、今頃、私とエイアスさんは……」
「そうだ! カゲロウ殿が俺と朝陽殿を助けてくれなければ、いま――」
「なにを言う、巫女の近衛騎士よ。お前が朝陽と一緒に彼奴と剣を交え支えたことで、俺があの場で着く刻が遅くならずに済んだのだ」
――そう。エイアスさんがあの時、一緒にタケミツと戦ってくれたから、私は今、生きてる。
「……朝陽、お前達の目的は巫女の近衛騎士から聞いた、夢斬貮型を抜くのだろう?」
「はい、メリディさんとエルタティアの明日を救うためには、夢斬貮型が必要ですから!」
「そうか、……ならばその目でしかと見るがよい!」
――あれは……大きな三つの丸岩がある……ん? 丸岩の上の方に何かが見える……まさか!
「あれがこの世界の約五百五十刻時前、遥か西の草原から初代夢斬の武士により投げられた、『明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ』の掟に背いた大腑抜け刀である!」
――あれが今の光を失った夢斬貮型……。
「朝陽、これより先の真なる事実を夢斬貮型から得る覚悟はあるのか?」
「はい! 私の手元に明日を救う力の一刀である夢斬貮型が戻るのであれば、私は抜きます!」
「うむ、そこまで言うのであれば、止めはせぬよ」
「はい、それでは……」
――夢斬貮型を回収するのに、こんなに時間がかかってしまった……。
「朝陽様、お手伝いしましょうか?」
「うん、お願い」
「朝陽、わたしも手伝うよ」
「うん、ありがとう」
――こんな大きな岩の中央に突き刺さるなんて、普通に考えたらありえないでしょ!
「でもこれが現実なんだ……」
《「近衛騎士、俺と同じ様にあの岩へ触れろ」》
《「カゲロウ殿……いきなり何を言うんだ?」》
《「お前も明日を奪うモノ共から巫女とこの地然の地の明日を救い護りたいのだろう? ならば覚悟を決めろ!」》
《「……ああ、分かったよ、カゲロウ殿」》
――陰楼さん、一体何をするつもりなの……。
《「朝陽、大腑抜け刀を抜く覚悟はできたか?」》
「はい! それでは夢斬貮型を抜きます!」
――夢斬貮型……お待たせ、夢覚市から迎えに来たよ!
「夢斬貮型……こんなにぼろぼろになって……、今、再起動するから」
【夢斬貮型のセーフティーモードを起動! 巫女メリディより供給された地の聖なる力:枯渇間近!】
――メリディさんから供給された地の聖なる力?
【YKネットワーク管理者A.Yのログイン認証が完了】
『チッ! やっと来たか、朝陽』
【夢斬貮型……再起動シークエンス開始!】
『我貮型の管理者たる夢宮本家の腑抜け令嬢、夢宮朝陽の指紋及び明日を救う力、完全一致!』
――誰が夢宮本家の腑抜け令嬢よ! いつまで私を子供扱いするのよ!
『腑抜け夢宮タケミツの偽装所有権無効化が完了!』
――やっぱりタケミツが夢斬貮型を誘導したのね……。
『夢宮一族の初代夢斬士による我貮型の再起動最終条件を確認……』
――えっ、陰楼さんが夢斬貮型に再起動の最終条件を追加したの? 普通にあり得ない……。
『条件照合中……管理者夢鬼理、管理者夢宮朝陽、交戦相手シャリア・エクス・ア・ロッテ、初代夢斬士夢宮陰楼の存在、照合確認完了!』
――A.Yルームのモニターで見た女の子は、やっぱりシャリアさんだったのね。
『これより、約五百五十刻時前の我貮型保有の記憶域へ転送!』
――私がこの世界へ渡る一週間前……、あの時、タケミツと夢斬貮型の間に何が起きたのか……、この目で見る必要があるわ!
【夢斬貮型記憶域 約五百五十時間前のヴェルハラ草原に精神転送が完了しました!】
第35話
エルタティア山頂の夢斬貮型 再起動編 完。
第36話へつづく!
*2026年10月7日(水) 一部内容の改訂を行いました。




