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第32話

 第32話 エルタティア山と夢斬貮型 朝陽:後編


【夢斬貮型夢領域《ゆめぎりにがたむりょういき》 エルタティア山:上合頂上接続域通路 16回目の夢刻(ゆめこく)】



 ――タケミツを斬る! それが明日を救う力を持つ者の使命!



「タケミツ、なぜお前は明日を奪う力に溺れた! セイッ!」


「よっと! それは腑抜けじゃない朝陽ちゃんには分からないよ! フッ!」



 ――その構え……、貫き?!



「朝陽殿! はぁー、地聖蒼斬〈アーススレイ〉!!」


「よっと、危ないなー!」


「ありがとう、エイアスさん!」


「エイアス? あーあの巫女ちゃんも護れない雑魚近衛君かー! ならこれならどうかな? ほらよ!」


「ふっ、地聖蒼盾〈アースシールド〉! ぐっ……耐えてくれ地然の盾よ……」


「あははは! 邪滅の力の前では、その力も無力なり、グサァっと貫く!」


「エイアスさん! タケミツ! はぁー」


「邪魔しないでよ、朝陽ちゃん!」


「黙れ! 夢鬼理めいそ――」


「邪魔だな、その明日を救う力を宿す左腕!」



 ――あれっ? 私の左腕と夢斬士刀が目の前にある……なんで……嘘でしょ……。



【夢宮朝陽の左腕が斬断されました!】



「キャアァァァァァァ!」



 ――目の前がくらくらする……。



《「あれー、ちょっと力みすぎちゃったな!》


《「ぐっ、朝陽殿! この下衆が!」》


《「まあ、朝陽ちゃんの左腕も身体の一部でもあるか……、うん! 明日を救う力を宿す左腕をいただ――」》


《『タケミツよ、朝陽の左腕を奪おうなど愚かな! そうはさせぬ!』》


《「管理者夢鬼理、余計な事を! あと少しだったのに! まあいいやー、近衛騎士君、君を夢喰キングタケミツ陛下への反逆の罪により、滅してあげるよー! あはははははは!」》



 ――エイ……アスさんを……滅する? 滅せられるのはエイアスさん……じゃなくて、アンタ……でしょ! 腑抜けミツ!


「ほー、まだそんな力が残っているなんてね! やっぱり朝陽ちゃんはVIPSSRハーレム枠だよ!」


【夢宮朝陽が夢鬼理一文字を右手に装備しました!】


「ごめ……エイア……スさん!」


「……大丈夫だ……俺よりも朝陽殿の……」


「私なら……大丈夫……、この手に明日を救う力を握れる限り、私はまだ戦える!」


『朝陽よ、無理をするな』


「大丈……夫、夢鬼理……力を貸して」


「朝陽ちゃん、何をするつもりだい?」


 ――明日を救う力を持つ……者として……私が最期にやるべ……き、ことは!



【夢宮朝陽の夢鬼理カウンターが想昇中……】



「タケミツ……お前をここで滅する!」


「ふーん、やってみればいいじゃん! あはははは」



【夢鬼理カウンター想昇完了!】



「チッ! 夢醒ノイチモンムサ」



 ――これが……夢宮朝陽の命……をも燃やす無……醒殺滅の技!



「サツメツ! さようならタケミツ! はぁーー!」


「これはこれはあはははははは!」



 ――ごめん……こんな腑抜けでごめん――。



《『朝陽! この大腑抜けが!』》



 ――そう……私は大腑抜け者。



《『お前が命を燃やし尽くし散ったとて、お前に遺された者達によって新たな火種が生まれるのみ!』》



 ――でもこうするしか無かった……。



《「まったく、血は争えぬな……明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ!」》


 ――そう……明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ……って、あれっ? 目の前に黒騎士が立ってる……。



「朝陽よ、呆けている場合か!」


「陰楼さん……どうして?」


「ふっ、話は彼奴を滅してからだ、鬼理刻!」


『主君陰楼よ、この地で造られし鬼理祓滅刻刀でよいか?』


「ああ、彼奴にはこの刀しか通じんからな!」



 ――これは幻? ……黒騎士なのに刀を構えてる……。



「久しぶりだな! 夢魔の妖王へと堕ちた大腑抜け夢宮タケミネの魂を喰らった大腑抜けのガキ!」



 ――えっ? 夢魔の妖王? 夢宮タケミネ……、聞いたことがない名前……、タケミネの魂を喰らった?



《「力に呑まれたお前が、また僕の邪魔をするの――」》


「黙れガキ、鬼理無醒祓滅斬〈キリムサフメツザン〉!」


《「グハッァ! これは……僕の身体に傷が!」》



 ――私達二人でも敵わなかったのに……、なんて力なの?!



「黙れと言ったはすだガキ、鬼理無醒祓滅斬!」


《「グハッァ! これはなんだ?!」》



「お前みたいな掟破りの腑抜けたガキを斬る刀だよ! なあ大腑抜けケミツ! 鬼理無醒祓滅斬!」


《「このままでは……ほん――……とワタシにまでダメージが……、仕方ない、はぁ!」》


 ――また……黒い霧……。


「そうはさせぬ! ……チッ! 待て!」


《『最後に良いことを教えてあげるよー! この世界から夢斬貮型を使って朝陽ちゃんと最後に通信したあの日の僕とこの世界へ来て二週間ばかりの朝陽ちゃんでは、体験した時間が違うだけなんだよー! あはははは、次は絶対に殺してやるから! じゃーね』》


「チッ! またあの帷を使って逃げやがった! ……鬼理刻、追えるか?」


『彼奴の邪想想網の中へ戻ったようだぜ、故に某では追えぬ』


「……まあよい、朝陽と近衛騎士を助けることができただけでも」


 ――えっ? 弥乃葉とシャリアさんは?


「カゲ……ロ――」


「言葉を発すな、朝陽……おい! 夢斬貮型、彼奴は帰ったぞ、夢月とシャリアがいる場へ転移の門を現出させろ!」


《『チッ! 分かったよ、夢宮陰楼!』》


 ――えっ? 二人共生きているの? 良かった……。


《「朝陽! ……近衛騎士、手を貸――」》



 ――意識が遠のく……。



 ◇夢鬼理刻想屋敷◇


 ――あれ? ここは……夢鬼理の刻想屋敷……夢斬士の道を歩み始めた最初の頃は、ここで夢鬼理に稽古をつけてもらったな……。


「朝陽よ、お前の明日を救う力を宿す左腕は、我の武装管理空間に保管してある」


 ――侍の夢鬼理? でも左腕が……。


「ありがとう、ごめんね」


「礼には及ばぬし、詫びもいらぬ」


「うん、でもその姿の夢鬼理も左腕が……」


「心配はいらぬ、朝陽が受けた傷は我も受けた傷なのだ、故に朝陽が明日を生きていく限り、この傷もいずれ癒えよう」


「うん、そうだよね……」


「うむ、夢覚めの刻が来たようだ、朝陽よ」


「うん、ありがとう、夢鬼理」


「礼には及ばぬ、朝陽よ」



《「朝陽様!」》


 ――シャリアさんの声……。


《「朝陽ー!」》


 ――弥乃葉の声……。



「朝陽様! ご無事でなによりです!」



 ――ここは……夕空から雪が降ってる……、私、生きてる!



 第32話 

 エルタティア山と夢斬貮型 朝陽:後編 完


 第33話へつづく!

4月15日(水)、4月20日(月)、4月21日(火)、4月29日(水)一部修正改訂を行いました。


*2026年10月4日(日) 一部内容の改訂を行いました。

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