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第30話

 

 第30話 エルタティア山と夢斬貮型 朝陽:前編



【エルタティア 地下避難壕 16回目の朝刻】



 私達は、エルタティア山頂に突き刺さる夢斬貮型を抜く為に、エルタティアの地下シェルターで最終準備をしている。



「ユメキリバトルスーツ……良好。夢鬼理(ユメキリ)ガジェット……整理良し! 氷溶の腕輪(ひょうとけのうでわ)装着……良し! 準備完了! みんな準備はいい?」

「準備完了です、朝陽様!」

「こっちもユラキリバトルスーツ、夢羅鬼理(ユラキリ)ガジェットもオッケー! 『正義の夢斬士(ゆめぎりし)夢月弥乃葉(ゆめつきやのは)の登山クエスト、準備完了』だよ!」

「分かったわ、えーとエイアスさん?」

「あ、朝陽殿……まあ、準備は大丈夫なんだがな」



 ――エイアスさん……はぁ、どうしたんだろうな……



「どうしたの? 何か不安?」

「朝陽殿。俺は、メリディ様を救えるのだろうか?」

「えっ? エイアスさんらしくないじゃない」

「どうも胸騒ぎがするんだ……なぜバレディナは、メリディ様を生かしておくのだろうか? エルタティアの征配者になりたいのであれば、メリディ様が邪魔なはずだ」



 確かにエイアスさんの言う通りだ。

 バレディナが、エルタティアの真の支配者になりたいのであれば、メリディ様を殺めて支配者になれば早い。

 ならなぜバレディナはメリディさんを生かしているのか? それは私は、バレディナではないから分からない、だから……



「だからエイアスさん。それを確かめるべく、私達はエルタティア山の山頂に突き刺さった夢斬貮型(ゆめぎりにがた)を抜くの、メリディさんを見てきた貮型なら何か知っているはずだから」

「確かに夢斬貮型を抜き、バレディナの思惑を知り、メリディ様を今度こそお救いできれば、エルタティアは解放されるはず」



「エイアス・アリディア! それでこそメリディ様の許婚(いいなづけ)であり近衛隊長(このえたいちょう)だ!」

「エギリス……まだ俺は、メリディ様の隣に立てる男ではない」

「なにを言っている! 今もこうしてエルタティアの巫女様として、メリディ様がこの地を治める光で在り続ける事ができたのは、幼き頃から共にいたエイアス、お前のおかげだ」

「そうだ! 俺は、メリディ様を殺めようと俺に取り憑いてきた夢喰(ユメグイ)に、メリディ様を護りたい一心で(あらが)っていたんだ! この命の灯火が消えようとメリディ様を護るための盾であるために……だからこそあの時、朝陽殿と剣を交えてしまった記憶が残っていた……よし! ありがとうエギリス、お前の言葉で覚悟ができたよ」

「エイアス、生きて帰ってこい、待ってるからな!」

「ああ勿論だ、エギリス」



 ――なんとかなったみたいね、エイアスさん。



「夢宮朝陽殿。エイアス・アリディアをよろしく頼む」

「分かりました、エギリスさん」



 頭を上げたエギリスさんは、エルタティアの兵士達と共に地下避難壕の奥に向かって行った。



「じゃあ、行きますか! エルタティア山へ!」



 地下避難壕を出た私達は、エルタティア山の(ふもと)へ向かった。



【エルタティア山 麓 雪昼刻(ゆきひるこく)



 ビュー! ビュー! ビュー! ビュー!



「ここがエルタティア山の麓か……風と雪がすごいね」

「朝陽殿、エルタティア山の様子がどこかおかしい……こんな禍々(まがまが)しい気配がするエルタティア山は初めてだ」




【エルタティア山 夢斬貮型の夢領域(むりょういき)に強制接続されました】




「ユメキリ? どういうこと?」

『朝陽と我が来たからだろうな……あとシャリアも』

「えっ? ユメキリ様、私もですか?」

『左様だ、シャリアよ。貮型にとって、朝陽と我とシャリアは一番記憶にある存在だからな』

「つまり、今このエルタティア山は?」

『朝陽よ。これは我の推測だが、この夢領域の主である貮型自体が、山頂でナニカと戦っているのだろう?」



 《ピンポーン! さすが朝陽ちゃんが持つホンモノの想いを叶える力のユメキリだね……僕が本当に欲しかった物だ!》



 ――この声は夢宮タケミツ!



「タケミツ! どこにいる! 姿を見せろ!」



 《全く朝陽ちゃんは変わらないなー、僕はもうこの世界に来た時の記憶すら残ってないけどね》



「ウッセーな、腑抜ケミツ。さっきから黙って聞いていれば『僕の名前は夢宮タケミツ、異世界に拉致された被害者だ。全ての元凶は朝陽ちゃんですー』みたいな事言ってるけど、わたしからすれば、お前こそ『全ての始まりにして腑抜けなる者だ!』聞いてる? 腑抜ケミツ!」



 《ああー、夢月弥乃葉。そう言えばお前も来ていたっけ。お前の夢領域に入って、大いなる夢喰の力を注入して、僕のハーレム傀儡(くぐつ)要因にしてやろうつもりだったけど、お前の中には朝陽ちゃんばかりだった》



「当たり前でしょ? わたしはお前みたいな腑抜けじゃない! 『正義の夢斬士、夢月弥乃葉!』かかってきな!』



 《あー、ならじゃあコイツと戦ってみればー》



【夢宮タケミツが夢邪滅喰(ユメジャメツグイ)ジ・エンドキマイラ型を5体召喚してきました!】




「朝陽! ここはワタシに任せて! 大丈夫、後で必ず追いつくから!」

「弥乃葉! 私も戦うよ!」

「ダメ! 『明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ』の夢斬士である夢月弥乃葉は、こんなやつらには負けないから!」



 《はははは! 明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ、はははは! 笑わせてくれる! 大いなる邪滅の力を思い知るが良い、あははははは!》



 弥乃葉は一人、巨大な異形な獣達と交戦を開始してしまった。



 ――ごめん! でも私は正義の夢斬士であるあなたを信じてるからね!


 《あははは! なんだあの夢月弥乃葉の武装は? 高周波ブレード? あははは!》



 夢宮朝陽である私が、今の夢宮タケミツに声を聞いて、タケミツに対して抱いた感情は一つだ!


 夢宮分家の親戚であり夢斬士見習いだったタケミツではなく、力に溺れた者として、夢宮の掟に従い滅殺する事だけ。



 明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ……



 私の先祖であり、エクスアルディアギルド幹部である夢宮陰楼(かげろう)が創った夢宮の言葉には、本人すら恐らく知らない続きがある。

 私のもう一人のご先祖様であり、夢覚市の(いしずえ)を作った月都泪陽(つきみやこるいひ)様が、後世の夢宮一族に遺した言葉。

 陰楼さんの死後、夢覚市と夢宮一族が人の明日を護り続ける為に、泪陽様が遺したのだろうと予想している。




『明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ。

 力に溺れ、夢覚ない夢宮一族の者は、明日を救う力を持つ夢宮の者による無醒殺滅(むささつめつ)(とき)が、必ずや訪れるであろう……』




 ――夢宮タケミツを私が斬る、それが夢宮の理だ!



 第30話 エルタティア山と夢斬貮型 朝陽:前編 完。

 第31話へつづく!

最後までお読みいただきありがとうございました!


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