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第29話

 第29話

 エルタティアの地下シェルターとブラックスミス:後編


【エルタティア地下避難壕 バニング工房内 15回目の夕夜刻】


「おぉー! ここは『僕は数多の属性を宿す光の宝玉が飾られたブラックスミス! の工房へ来たぜ、でもなんだか更に暑くないか?』って、感じな工房の中だね!」



 ――弥乃葉、まだ興奮してる……。



「茶毛の小娘は何を言っているのかしら」


「気にしないでください、いつもこういう感じなので」


「あら、そう。貴方達も腰掛けに座ったら?」


「はい」



 ――ふぅ、やっと座ることができた……。



「早速だがバニング。エルタティアの霊峰へ登る道具を今から用意できるか?」


「はっ? 四人の氷溶の腕輪を今から作れってー? バカ言うんじゃないわよ! いくらあんたがメリディの近衛だからって無償でやるなんてあり得ないから」


「頼む、バニング……そこをなんとかできないだろうか?」


「なんの説明も無く、いきなり作れは無理ね」


「でも俺はこちらにいる朝陽殿達とメリディ様とエルタティアの明日を取り戻すために、霊峰にいる罵倒神の守護剣が必要なんだ」


「ふうん、罵倒神の守護剣ね……、でもあの剣が放っていた白き聖なる力と同じ白き聖なる力がアサヒから感じるけどー、それじゃダメなわけ?」



 ――えっ? この人、夢鬼理の力が見えるの? 初対面なのに……。



「……私達の力ではメリディさんを拘束し、拐った黒霧の結界を破ることができませんでした」


「まぁ、それはそうでしょうねー」


「えっ? それってどういう意味ですか?」1


「簡単な話よー、あなたと茶毛が住む世界で作られた武具達では、この世界の理とあなたの世界の理を通じた黒霧の結界は破れない、それだけ」


「それだけって……私達にはやるべきことが……」


「なら、こういうのどうかしらねー」


「こういうのとは?」


「うちがアサヒが持つ白き聖なる力の一つ力、あなたの力が宿るエクスアリア族の武具、そこの茶毛の小娘の武具をこの世界の理に通じた邪気……邪なるオーガを斬れる様に打ち直すってのどうかしらー、それが氷溶の腕輪を作る条件」



 ――この世界に適応した夢喰達を斬れる様にしてくれるってこと? でも夢斬貮型を回収して、メリディさんを救う方法はこれしかない。



「朝陽殿、どうするんだ?」


「それがこの世界の明日を救う力になるのであれば、お願いするわ」


「だそうだ、バニング」


「はーい、氷溶の腕輪を四組ね。それとあなた達の武具を出して」


「はい、ドワー……バニングさん、よろしくお願いします」


「ん? この剣……アサヒの白き聖なる力にカゲロウの白き聖なる力の剣片が打ち直されてる、ウチがちょっとだけ整えれば黒霧の結界も破れる様になるわねー」



 ――ん? 陰楼さんの名前をまた出したわ……、陰楼さんはエルタティアで何をしたの……。



「じゃあー次にエクスアリア族の……名前は?」


「えっ? シャリアの名ですか? シャリアはシャリア・エクス・ア・ロッテです!」


「分かったわ。じゃあさーシャリア、腰に据えたその緑光の剣ではなく、アサヒの力が宿る武具を出してちょうだい」


「ユメキリIVさんですね、……はい、お願いします」



 ――あれっ? シャリアさんっていつも緑光の剣を携帯しているけど、シャリアさんが鞘から剣を抜いた事って無かった様な……。



「これはエクスアリア族の緑光の聖なる力を緑光矢として放てる弓型のアサヒの力……、うん、これも少しウチが打ち整えれば、黒霧の結界を破れる様になる」


「はい! ユメキリIVさんをよろしくお願いします、バニングさん」


「はーい、シャリア。じゃあ最後にアサヒ、あなたの白き聖なる力の一つを出してちょうだい」



 ――私の明日を救う力といえば……。



『朝陽よ、我がお前に与えた最初の力、今は休眠中の初代ユメキリイチモンジだったユメキリXIIを出すのはどうだ?』


「なるほど、XIIか……、でも、もう声が聞こえないから……」


「声が聞こえないの? なるほどね……、じゃあその力を喚んでもらうことはできるかしら」


「できますよ。夢鬼理、XIIをお願い」



【夢宮朝陽がユメキリXIIを装備しました】



 ――やっぱり声が聞こえない……。



「はい、どうぞ、バニングさん」


「ほほう、これがアサヒの原初の白き聖なる力……、カゲロウの白き聖なると全く違う……」


『左様だ、バニング。これが幼き朝陽と我が約束した十数年前の原初の力である』


「なるほどねー、ん?」



 ――XIIを額に押し付けてるけど、どうしたんだろう……。



「なーんだ! ならそうやって言ってあげれば良かったじゃないのよ! それであなたはどうするの? うん、うん、うんうん……分かったわ、アサヒにそう伝えるわね」


「えっ? XIIと会話したの?」


「そうよ。この子はね、自分が幼く独りぼっちだったアサヒを支える役目は終わったしむざめしーでも独りぼっちじゃないから、アサヒは昨日を振り返ったらダメって、言っているわねー」


 ――XIIにそんな風に考えていてくれていたなんて……、でもXIIも大事な友達だった、だからずっと側に……。



「でもこの子は、明日を救う力を持つ者として、アサヒが壁にぶつかっているのあれば、一緒に壁を乗り越えるために新しい明日を救う力になる、どうするのかはアサヒが決めてくれってー、どうするの?」



 ――夢鬼理とXIIがいなければ、私は明日を救う力を持つ者としてこの場にはいない、だからXIIがそう言ってくれているなら……。



「はい! バニングさん、XIIをよろしくお願いします! ……というよりも、バニングさんは陰楼さんとどういう関係ですか?」



「あー、それはね……話すと長くなるしー、とりあえずカゲロウが携えている剣の一つは、ウチがカゲロウに頼まれて、カゲロウの白き聖なる力……キリコクの剣片とこの世界の聖結晶石で打ち造った聖なる剣ってことだけ言っておくわねー」



 ――ん? もしかして陰楼さんと初めて会った日に夢鬼理が言っていた鬼理刻以上の力を感じるのって……。



「それとウチが作ったあの聖なる剣は、この世界の理を学んだ邪なるオーガが遺す邪気にカゲロウが呑まれる事なく、斬ることができるみたいねー」



 ――この世界で生まれた夢喰殺意の邪想に感化されず斬ることができる斬れる刀、か。



「まぁ、この世界で生き残る為に必要な明日を救う力だ、なんてカゲロウは言っていた気もするわねー」


「そうですか……、カゲロウさんが……」



 ――陰楼さん……、あなたは明日を救う力で遥か昔の夢覚市で夢魔と夢喰と戦い、この世界でも夢喰と戦っているなんて……、あり得なさすぎる。

 でも私も明日を救う力を受け継ぐ夢宮朝陽、私のやり方でこの世界の明日を救うだけだ。



「それじゃあー、あなた達の武具を預かるわね、また明日の朝昼刻ぐらいに来てちょうだい」


「はい、よろしくお願いします!」


「ではバニング、頼んだぞ」


「はーい、エイアス、あなたと少しだけ話がある」


「ん? 話ってなんだ? ……朝陽殿達、先に帰っていてくれ」


「分かったわ。じゃあ行きましょうか、シャ……あれっ? シャリアさんと弥乃葉がいない」


「その二人ならウチに武具を渡して、すぐに外に出て行ったみたいよー」



 ――すぐに出て行った? いつの間に……、まったく二人共どこへ行ったのよ!



「分かりました、探してみます。エイアスさん、またあとでね」


「ああ、朝陽殿」



 ◇エルタティア地下避難壕 鍛冶場集域◇



 ――この地下シェルターもフェルレトと同じで広すぎでしょ! あれは……、さっきの治安維持隊の兵士さん達ね、もしかしたら二人を見かけたかも。



「あの、すみません」


「ん? あー、ヒューマアリアの冒険者殿、先程は大変失礼いたしました!」


「いえいえ、エクスアリア族とヒューマアリアの私の仲間を見かけませんでしたか?」


「冒険者殿のお仲間さんですか……、お疲れのようでしたので、エギリス隊長が用意したお部屋へご案内しましたよ」


「ありがとうございます、その部屋はどこですか?」


「その部屋なら居住域の……ご案内いたしましょうか?」


「はい、よろしくお願いします!」



 ――まったく二人共勝手な行動ばかりするんだから!



 ◇エルタティア地下避難壕 朝陽達の部屋前◇



「こちらです、冒険者殿」


「ありがとうございました」


「いえいえ、また何かありましたらお声がけくださいね」



 ――顔は見えなかったけど女の人っぽい感じだった……じゃなくて、二人共もう寝てるのかな……、なんだか嫌な予感がするのは気のせいかしら……。




 第29話

 エルタティアの地下シェルターとブラックスミス:後編

 完。


 第29.5話へ続く!

*2026年10月2日(金) 一部内容の改訂を行いました。


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