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第28話


 第28話

 エルタティアの地下シェルターとブラックスミス:前編



【エルタティア付近 地下避難壕 15回目の夕刻】


「ふぅ……、朝陽殿、ここが避難壕の入口だ」


「えっ? 何も見えないけど……って、寒っ!」



 ――周囲に何も無いし、只の岩場の壁にしか見えないけど……。



《「おい! 貴様達、何の用だ? もしや……」》


「俺だ、当代巫女直属近衛騎士のエイアス・アリディアだ!」


《「エイアス? ……その様な曲者の名、我がエルタティアにはおらぬ! 立ち去れ!」》



 ――曲者? もしかしてエイアスさんが、巫女の塔からメリディさんを助けた後に刃を向けたから、避難壕の人達の中では裏切り者なのね。



「エイアス君! 君がエルタティアの『正義の救世近衛騎士勇者ならば、正義を示す暗号を言いたまえ!』をした方が良いんじゃないの?」


「弥乃葉(ヤノハ)殿……こんな時によくもその様な呑気なこ………、待て、その手があったな」



 ――ん? エイアスさんは何をするつもりなのかしら……。



「朝陽殿達、もう一度避難壕の入口へ行こう」


「ええ、分かったわ」


《「この曲者め! 立ち去れと言ったはずだぞ!」》

 

「待ってくれ! 俺は『エルタティアの光、メリュチナ様の導きで出会いしこの者達とこの都に潜みし影を斬り裂く者』、エイアス・アリディアだ!」


《「……、どうやら曲者ではないらしい。良かろう、壕壁門を開門する」》



 ――壕壁門? ……これは!



「朝陽さー! これ『聖なる合言葉を唱えた勇者の僕は、当然、聖なる扉に認証されたんだよね! ゴゴゴゴゴォォ!』的な門だよー! すごいね!」


「しっ! 興奮しすぎよ」


「弥乃葉さん! 聖なる合言葉のゆうしゃーとはなんですか?!」


「シャリアさんも静かにね」


「はい、朝陽様」



 ――行き止まりが実は隠された道……、地の聖なる力はこんなこともできるのね……。



「さあ朝陽殿達、中へ入ろう」


「うん、分かったわ」



 ――寒っ! 地下避難壕なら少しだけ寒さも凌そう。



 ◇エルタティア地下避難壕◇



 ――ほー、地下避難壕はレンガ作りのシェルターなのね、シェルターなのに明るくて、かなり暖かいし、どういう仕組みなの!


《ヒソヒソ(あれ見て、巫女様に刃を向けた裏切り者のエイアスよ)ヒソヒソ(よく戻って来れるわよね)》



「エイアスさん……」


「ああ、民達からすれば、俺は裏切り者で、朝陽殿達は裏切り者と一緒に行動する曲者と見られている……でも、俺はメリディ様を今度こそお救いする、だがお救いするにはやはり民の強力が必要、だから戻って来たんだ」


「うん……でもエイアスさん、どこへ向かっているの?」


「今向かっているのはエルタティアの治安維持隊長のエギリス・リーデリアがいる場所だ……」



 ――エルタティアの治安維持隊長エギリスさんか……、話が分かる人ならありがたいけど……、ん? 向こうの方から剣を握ってる人達が来る、兵士?



「止まれ! エイアス・アリディアとヒューマリア二人とエクスアリア族、その場で上に手を挙げろ!」


「はっ? いきなり何も言わずに剣を構え来たく――」


「すまない、朝陽殿……今はこいつらに従ってくれ」


「……分かったわ」


「よし。エイアス・アリディア、エギリス様がお呼びだ。貴様達を連行する」


「ああ、その方がこちらとしても助かる」



 ――仕方がないわね、ここは静かにして……。



「ふふふ〜この展開は、(ぶつぶつぶつぶつぶつぶつ)だ……ねっ、朝陽」


「貴様、言葉を発すな!」


「はいはいー!」



 ――……弥乃葉、ニヤケすぎでしょ!



 ◇地下避難壕 治安維持隊室◇


「エギリス様、裏切り者と曲者達をお疲れいたしました!」


「ご苦労、この者達の拘束を解いたのち、お前達は任務に戻れ」


「承知致しました! エギリス様!」



 ――この人がエギリスさん……、髪が青い……えっ? エイアスさんの前に立ってる。



「……エイアス・アリディア、巫女様に反逆の意志を示した貴様が、生者として自分の前に姿を現すとは……許せん!」


「待ってく――くっ!」


 ――エイアスさん……、あんなに鍛えられた拳で顔を殴られたのに倒れないなんて……。



「貴様、なぜ生きている!」


「話を聞いてれ、エギ――くっ!」



「まだ言うか曲者が! 我らスレイアの民の光たるメリディ様へ刃を向け、裏切り者である貴様が――」



 ――はぁ、こんな時に! もう見てられないわ!



「はぁ……エギリスさんとエイアスさんは、エルタティアの明日の光を奪った奴らから、明日の光を救いたくはないのですか?」


「なんだと! ヒューマアリアの小娘が……ん? そ、それは!」


「はい、これはエクスアルディア王国の冒険者ギルド、エクスアルディアギルド特夢位冒険者証です」


「なるほど、其方達も特夢位冒険者……、あのユメミヤ・カゲロウ殿と同じ能力を持つ剣士か?」


「そうですよ、エギリスさん。このままエイアスさんに拳を振り翳しても、メリディさんを救う事は不可能、だから私の話を聞いていただけますか?」


「……うむ、良いだろう、其方の名を聞いても良いか?」


「私の名前は、ユメミヤ・アサヒ、アサヒと呼んでいただければ大丈夫です」


「カゲロウ殿と同じユメミヤ?! ……分かった、アサヒ殿、其方の話を聞こう」



 ――陰楼さんの名前がエルタティアにも……一体何をしたのかしら……、でも今はそれどころじゃない!



 ◇しばらく後……◇



「……これが、私達がエルタティアへ来た目的と私達がエルタティアですべきことです」


「俄かに信じられない話ではある」


「それは逆の場合であっても同じですよ」


「そうだな……、しかしアサヒ殿の世界から来たヒューマアリアのタケミツとやら邪なるオーガの玉座に就き、バレディナを配下に置いた……そして巫女様を拐い、何かを企てている……それだけは確かな様だ」


「はい。タケミツが何を企ているのか、それは本人しか分からないのです」


「うむ、確かにな」


「はい。私達は明日を救う力を持つ者でありながら、目の前にいたメリディさんの明日を護れず、奪われてしまった……、でも罵倒神の守護剣が私の手元に戻りさえすれば、この状況が必ず変わるはずです」


「……分かった、アサヒ殿。だが一つ聞いてもいいか?」


「はい、どうぞ」


「アサヒ殿達とエイアスは、拐われたメリディ様をお救いするため、罵倒神の守護剣があるエルタティアの霊峰へ向かい罵倒神の守護剣を手元に納める……ここまでは分かるが、その後はどうするつもりなのだ?」



 ――私が夢斬貮型を抜いた後にすることは一つ!



「はい。私の刀を抜いた穴へ、私の明日を救う力の結界を代わりに置き、ヴェルハラの森の中にある女神エクスアリアの泉に沈めた明日を救う力の主たる結界と繋ぎます」


「うむ…………、アサヒ殿の近衛には、確かにエクスアリア族いる……、メリディ様の友であるあの方……」


 ――ん? メリディさんの友? アイリアさんの事かな。



「いやそんなことよりも今は、スレイアの民の光であるメリディ様をお救いせねばなるまい」



「はい、エギリスさん。私達は明日を救う力を持つ者として、必ずメリディさんとエルタティアの明日を救います!」


「うむ、アサヒ殿の想いは分かった。エイアス! お前が本当に曲者では無いのであれば、言葉ではなく己の行動と背中で見せろ! ただし次は無いからな!」


「ああ、分かった! ありがとう、エギリス隊長」


「ふん、隊長はよせ。あとこの地下避難壕特別利用許可証を渡しておく……」


「ありがとう、エギリス」


「うむ、それと朝陽殿達が滞在する部屋も用意しておこう」


「ありがとうございます、エギリスさん」


「いえいえ、先程は拘束してすまなかったな」


「大丈夫ですよ。行こう、エイアスさん」



 ◇エルタティア地下避難壕 居住域◇



「ありがとう、朝陽殿。もし俺一人だったら、今頃エギリスに――」


「エイアスさん、それは言わない。とりあえずどうするの?」


「ああ、エルタティア山へ登る道具を造ることができる鍛冶職人組合長バニングの工房へ行こう」


 ――鍛冶職人組合長……ん? 


「エイアス君、今なんて言った?」


「ん? どうした弥乃葉殿、何かおかしい事を言ったか?」


「ふふッ、なんでもーないよ!」



 ――またニヤけて、まったく弥乃葉は弥乃葉なんだから!



「ならいいのだがな、バニングの工房はこの地下壕の中心部にあるから俺について来てくれ」


「うん、分かった」



 ◇エルタティア地下避難壕 中核部 バニング工房前◇



 ――さっきよりもまた暖かくなったし、何か金属音がするわね。



「ここがバニングの工房だ、入口横に通路が見えるだろ?」


「うん、見えるけど、バニングさんは?」


「いつもの様に、た――」


「あわわわ! 弥乃葉さん、どうされたのですか?」


「やぁーぱり! スレイアアリアの民さん達は『がははははぁ! 酒だ酒! オラオラ酒を持って来いやー! 俺様達はドワーフだ!』じゃん!」



《「ドワーフ、なにそれ? この茶毛の小娘はー、何を言っているのかしら」》



「でさー! さっきからカンカン『俺様、バニング様に打てねー金属はねぇーよ!』ガハハハハ」



《「うちは女よ、茶毛の小娘!」》



 ――あれ? はぁ、扉に背を向けてるから近づいて来る女の人に気づいていないのか……まったく、弥乃葉は弥乃葉なんだから!



「ガハハハハハハ! ッてイッタァ! いきなり何すんのよ!」


「さっきからぜーんぶ聞こえてるっつーの! 茶毛の小娘!」


「ふっ、相変わらずだな、バニング」


「んー? あー裏切り者いや邪気に呑まれていたエイアスじゃない」


 ――えっ? この人がバニングさん? 顔も全身も煤だらけなのに、なんか心裡に雰囲気が似てる様な……、でも心裡は緋色髪じゃないし、エイアスさんが邪気に呑まれていた事をなぜ知っているのかしら……。



「ここで話すのもなんだからさー、工房の中へどうぞー」



 ――まあ、心裡がこの世界にいるわけがないし、他人の空似ってことにしておくかな……。



 第28話

 エルタティアの地下シェルターとブラックスミス:前編 完。


 第29話へつづく!

*2026年10月2日(金) 一部内容の改訂を行いました。

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