第28話
エルタティア山編
第28話 エルタティアの鍛治職人 前編
【エクスアリア大陸 エルタティア付近 地下避難壕 昼刻】
私達は、エルタティア山の頂に突き刺さった夢斬貮型の回収準備のために、エイアスさんの案内で、エルタティアから避難した住民がいる地下シェルターへ来た。
「ここが地下避難壕への入口だ、ふぅー……我はエイアス・アリディア! 全てはエルタティアの巫女様の為に!」
「朝陽朝陽、これさ『聖なる合言葉を唱えた勇者の僕は、当然聖なる扉に認証された! ゴゴゴゴゴォォ!』みたいな入口だよね? すごいね!」
「しっ! 弥乃葉。興奮しすぎ」
「弥乃葉さん、聖なる合言葉とはなんでしょうか?」
「はいはい、シャリアさんも静かにね」
「はい! 朝陽様!」
――まあ確かに扉に紋章が浮かび上がって、開かない扉が開くのはファンタジーによくあるよね……それよりも赤煉瓦の様な物で作られたシェルターか……流石は地の聖なる力を操る種族ね。
「さあ、朝陽殿。地下避難壕の扉が開いた。行く――」
「おい、エイアス・アリディア! 貴様、メリディ様はどうした?」
「申し訳ない……メリディ様は――」
「この大バカ者が! メリディ様を護れなかったと? それでお前は一人でノコノコ帰ってきたのか? この大バカ者が!」
――脳筋が持つ強腕の拳による一撃が、エイアスさんの顔に見事にヒット、かなり痛そう……
「ぐっ……俺は確かに大バカ者だ。いくら殴ってもらっても構わない、それだけの事を俺はしでかしたのだから……だが今はここにいるお三方に協力して、あの偽りの支配者バレディナからメリディ様をお救いすると決めたんだ、エギリス隊長」
「お前はなぜメリディ様の救出作戦の時に、自らの手でメリディ様を救出しておきながら、殺の刃と意志をメリディ様へ向けたのだ? 答えろ、エイアス・アリディア!」
――まずいな……ここでこの人に足止めされたら夢斬貮型を回収できなくなるし、メリディさんを救えない。
「それは私が説明しましょう、エギリスさん」
「朝陽殿……」
「ふん、ヒューマアリアの小娘の話など……ん? それはエクスアルディアギルドの冒険者証か」
「そうですよ、エギリスさん。私はエクスアルディアギルド所属の夢斬士、夢宮朝陽です」
「なるほどな。夢宮陰楼氏と同じ能力を持つ夢の中でも戦える戦士か、良いだろう話を聞こうか」
「はい、では――」
私はエギリスさんに、夢覚市からエクスアリアへ渡った経緯からこの場所に来るまでの話をした。
「なるほどな、話は大体分かった。つまりあのバレディナとやらは、お前達の世界から来た邪なるオーガの王座に就いたヒューマアリアの小僧タケミツの配下である認識、で間違いないな?」
「そうです。エギリスさん」
「だからメリディ様を救うために、エルタティア山の山頂にいつの間にか突き刺さっていた剣、夢斬貮型を抜く為の準備をする為にここに来た、で間違いないな?」
「はい。間違いありませんエギリスさん」
「なるほどな。その剣を抜いた後、朝陽とやらはどうするつもりだ?」
――どうするつもりか………それはもちろん決まってる!
「エクスアリアの人々が、明日を奪いし邪なるオーガである夢喰から自分達の手で護る仕組みの一体をエルタティア山の頂へ鎮座させます」
「なるほどな。だが今のお前達のその様な格好では、エルタティア山の頂を目指したとて、頂へ届く前に凍え、命の光が消えるだろう。ならばその解決策として、このシェルターにいる鍛治職人バニングを訪ねるといい」
「鍛治職人のバニングさんですね」
「ああ、そいつならエルタティア山に登る為の道具ぐらい持ち合わせているはずだ」
「メリディ様は、エルタティアの民である我々の光なのだ。朝陽とやら、お前は必ずメリディ様を助けると誓えるか?」
「もちろん! それが明日を護りし夢斬士ですから!」
「良かろう! お前達の地下避難壕の利用を認めよう」
「ありがとうございます。エギリスさん」
エギリスさんから地下避難壕の利用を許可された私達は、鍛治職人であるバニングさんがいる工房を訪れることにした。
【エルタティア 地下避難壕 バニング工房前 昼刻】
カン! カン! カン! カンカン!
「朝陽様、なんだかこの辺りは暖かいですね」
「そうだねー。あっ、シャリアさんはその鎧を纏っているから寒そうだよね」
「あわわ、朝陽様ったら! ……確かにエルタティアがこんなにも寒いとは考えてもいませんでした!」
――ユメキリIV型を装備していないシャリアさんは、露出度が高い鎧を纏っているからな……
私達は、エルタティアの鍛治職人であるバニングさんの工房前に来た。
「ねえ、朝陽朝陽」
「なに? 弥乃葉」
「やっぱりさ、スレイアアリアの人って『がははははぁ! 酒だ酒! 酒を持って来いやー! 俺様達はドワーフだ!』だよね?」
「まあ確かに、ドワ……スレイアアリア人の人にそんなイメージはありそうだよね……じゃなくて酒持って来いや? アンタ何言ってんのよ、アニメ見過ぎ!」
――全く、弥乃葉は弥乃葉なんだから!
「弥乃葉殿は何を根拠に鍛治職人と酒を結びつけているのかは知らないが、鍛治職人バニングは酒を飲まない」
「えっ? エイアスさ。もう一回、わたしに聞こえる声で言ってくれない?」
「……いいか弥乃葉殿、もう一度だけ言ってやる。エルタティアの鍛冶職人バニングは酒を! 飲まない!」
「えー! 『正義の夢斬士、夢月弥乃葉が持ってるスレイアアリア人のイメージは、がはははははっ! トントン! カンカン! おらぁ! 酒を持ってきな酒だよ、酒だ!』……だったのにさ……」
「弥乃葉殿。我々スレイアアリアの人間は、年一度しか酒を飲まない仕来りなんだ……分かってくれ」
「はいはい、弥乃葉。そう落ち込まないのー、アンタはまだお酒を飲めないでしょ」
「あっ! わたしまだ、お酒飲めなかった」
――ふぅ、全く弥乃葉は弥乃葉なんだから!
「あらー、まーたなんだか騒がしい連中が来たわねー」
工房の入口の奥と思われる穴から一人の女性が顔を出した。
――えっ? この女性がバニングさん? 心裡に似てる……ありえないけど。
「よいっしょ! あーそこの茶毛の小娘、ヤノハだっけ? ウチはエイアスの言う通り、酒を呑めないわよー、残念だったわね」
エルタティアの鍛治職人バニングさんは、緋色の長髪に黒煤が全身に染み付いていて、いかにも鍛治職人らしい格好をした女性だった。
「そこの黒長髪のあなた、アサヒだっけ?」
「えっ? 私ですか?」
「あなたの剣、見せてくれる?」
【夢宮朝陽が夢鬼理一文字、夢鬼理滅想刀を装備しました!】
「はいバニングさん、これが私の刀です」
「ほほう、これが邪なるオーガから民を護れる白き光を放つ聖なる長剣……カゲロウが言っていた通りね」
「陰楼さん? バニングさん、それはどういう意味ですか?」
「そのままの意味よアサヒ。それよりもこのバニングにあなたの力の一つを預けてみない?」
第28話 エルタティアの鍛治職人 前編
第29話へつづく!




