第27話
第27話 エルタティアに巣食う虚構支配者の魔術嬢
【東エクスアリア草原 野営ポイント 15回目の朝刻】
『朝陽、シャリアよ。おはよう夢覚の時だ。さあ起きるがいい』
――エクスアリアに来てから15日目の朝……起きなきゃ。
「おはよう、ユメキリ」
『朝陽よ。おはよう』
「ふわあわゎ、おはようございます! 朝陽様、ユメキリ様!」
『シャリアよ。おはよう』
「おはよう、シャリアさん。さあテントを片付けるよ」
これが私達の朝のいつものやりとりだ。
「あれ? メリディさんとエイアスさんは?」
『朝陽よ。メリディとその護衛兵エイアスならあそこだ』
「あそこ? ほほう……流石巫女様だ、あんな寝方するんだ」
地の聖なる魔法を操るスレイアアリア人のメリディさんとエイアスさんは、緋色の膜結界が張られた人型の穴の中で眠っていた。
「おはよう。メリディさん、エイアスさん」
私の声でメリディさんとエイアスさんは、目を覚ました。
「おはようございますですわ、朝陽、シャリア、そしてユメキリ」
「おはようございます、朝陽殿、シャリア殿、えーと? 剣のユメキリ殿」
『エイアスよ、我はユメキリだ。剣の、は不要だ』
「まだ慣れなくなれて、ユメキリ殿……朝陽殿、あの騒がしいヒューマアリア人の弥乃葉殿はどこへ?」
「え? 弥乃葉? あー、あの子ならあそこだよ」
「朝陽様、あれは弥乃葉殿の疲れは取れないのではないか?」
エイアスさんが心配するのも無理はない。
野営ポイントの暖火から少し離れた場所で、木に吊るされた寝袋の中で弥乃葉は寝ていたからだ。
「えへへ、朝陽〜会いたかったよー!」
――全く、夢は見られないのに寝言だけは言うんだから! しかもなんでニヤケてんのよ!
「弥乃葉、朝だぞ! 起きろ!」
「えへへ、炒飯美味しかった? 嬉しいなー、えっ? 弥乃葉シェフのつぎ――」
パチィィーン!
【夢宮朝陽の夢覚ノ一文平手打ちが夢月 弥乃葉へヒットしました!】
「イッタァ! 朝陽? 『目覚めたら知らない草原だった……』っじゃなくて、いきなりビンタするなんて!」
「アンタがいつまでも寝てるからでしょ!」
「本当に朝陽ったら容赦ないんだからさ!」
「はいはい、もうそろそろ出発するよ」
「……普通に起こしてくればいい――」
「ん? 弥乃葉さ、今何か言った?」
「いい言ってないよ。『正義の夢斬士は了解しました!』……テント、片付けましょー!」
――全く! 朝から騒がしい弥乃葉なんだから!
弥乃葉を起こした後、野営設備の撤収等を行い、エルタティアへ向かうことにした。
【エクスアリア大陸 エルタティア周辺 昼刻】
私達はメリディさんの案内の元、エルタティア周辺まで来た。
「朝陽、本当にエルタティアに行くのですか?」
「私達の目的地はエルタティアですよ、メリディさん」
「朝陽、私とエイアスが案内できるのはここまでですわ。朝陽、貴方は本当に夢斬貮型を救わなくて良いのですか?」
「夢斬貮型を救うことは、私の旅の目的の一つです。ですが今は、エルタティア山に登る為の拠点が必要なのです」
「そうですか……なら私は止めませんわ。気をつけて、今のエルタティアは――」
『みぃ〜つけた! 逃亡者の巫女! 邪滅魔術師嬢のバレディナ様から逃げれるなーんて、できるわけないでしょ! 邪滅捕想縛膜』
――今の声どこから? 邪滅魔術師嬢? バレディナ? 邪滅捕想縛膜?
バレディナと名乗る存在から聞こえてきた言葉と同時に黒い霧がメリディさんの全体を覆った。
「くっ! バレディナとやらめ! 朝陽、今のエルタティアは、エルタティアは……キャァァァァァァ!」
「メリディ様! クソ! なんだよこの霧の結界は!」
『あー、メリディ護衛兵エイアスの夢喰が消えてるねー。ていうことは夢宮本家の夢斬士がいるのかー……これはタケミツ様に報告しなきゃ、でもその前に……ハイッ!』
バレディナの合図と同時にメリディさんは、私達の視界から消えた……
「メリディさん! ……アンタ、バレディナだっけ? なんたら嬢か何か知らないけど、アンタに話がある! 姿を見せな!」
『夢覚市の夢宮本家所属令嬢の夢宮朝陽か! バレディナは貴様と話をすることはない、夢邪滅四重鬼卿の一柱、バレディナであるワタシと貴様は、狩るか狩られるかの関係なのだから! あははははははは! じゃーね、夢宮朝陽』
――夢邪滅四重鬼卿バレディナが、タケミツを様付けで呼んでいた……という事はつまり
『朝陽よ。おそらく、その通りだ。朝陽よ、彼奴等夢喰の王と成り果てたタケミツを斬る覚悟が今のお前にあるか?』
――ユメキリ、私は夢斬士だよ……明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ。だから私はタケミツを斬る覚悟はある、でも今はメリディさんを救い出す事が先! メリディさんは無事なの?
『朝陽よ、少し待て。…………無事だ、メリディの反応はエルタティアの最深部から反応がある』
――よし! じゃあ今からエルタティアへ!
『早まるな、朝陽よ。まずはエルタティア山の夢斬貮型を回収すべきだ。どうやらバレディナとやらには別の思惑があるようだ』
――別の思惑? 何か分かる?
『いいや、邪な念の隔りによってそこまでは読めん、バレディナとやらから直接聞くしかないな』
――分かった! メリディさんを救って、エルタティアを救う、バレディナ……バレディナは夢喰なの?
『朝陽よ、解析ができない以上、我には分からぬ。しかしメリディを救うには今の我達では不可能だ』
――なぜ? 早くメリディさんを助けないと!
『朝陽よ。急ぎ敵地に踏み込めば、いくら朝陽とシャリア、弥乃葉が夢斬士とて、命の灯火を消し急ぐだけだ。違うか?』
私がこの前見た夢斬貮型の夢と昨夜のメリディさんからの話、それとバレディナのタケミツに対しての様呼び等から今の明日救う力を持つ夢斬士である私がするべきことは、夢斬貮型の回収だ。
「シャリアさん、弥乃葉。私は今からメリディさんをバレディナから救い出す為に、エルタティア山の山頂に突き刺さった夢斬貮型を回収に行く。だからここでエイアスさんの護衛、お願いできる?」
この何が起きるか分からない状況下で、下手に全員で動くより、私が無事に夢斬貮型を回収して戻れば良い、私はそう考えた。
「朝陽様! 何を言っているのですか? シャリア・エクア・ロッテは、エクスアリアのユメギリ士であり、朝陽様の盾と剣です! 一緒に行きます!」
「シャリアさん……」
「シャリアさんの言う通りだよ、朝陽。『正義の夢斬士、夢月弥乃葉は、明日を護る者の親友であり、幾つもの戦場を乗り越えて来た戦友』だから一緒に行くよ!」
「弥乃葉……」
仲間からの返事は、予想していた答えではなかった。
私の想いに協力してくれる仲間がいる。
それだけで夢宮朝陽である私は、本当に恵まれ者だ。
「朝陽殿、俺はメリディ様の護衛する者として、一度過ちを犯した。だからメリディ様を救う力があるのであれば、俺も連れて行ってくれ! それと朝陽殿」
「何? エイアスさん」
「朝陽殿。あれがエルタティアの聖域であるエルタティア山だが、その様な格好で本当にエルタティア山の頂を目指すつもりか? 頂に辿り着く前に凍えるぞ」
私達は、エイアスさんが指で示した先のエルタティア山を見た。
エルタティア山は、私と弥乃葉が住む日本のシンボルマークである山と同じぐらいの高さの山だったのだ……。
――あれを登るの? ……でも私に今出来る事はそれしか無い!
第27話 エルタティアに巣食う虚構支配者の魔術嬢 完。
第28話へつづく!
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